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お酒文化を広めて、広島が「美味しい街」になるように

広島市中心部の流川・薬研堀エリアに店を構え、お酒の販売や飲食店への卸しを行っている大和屋酒舗。自ら県内の蔵元へ何度も足を運び、造り手の想いや技術、お酒の楽しみ方を広島の街と人に届けてきたのが、代表取締役の大山晴彦さんです。これまでに見てきたお酒文化の変遷や、日本酒やワインの魅力、お酒が街づくりに果たす役割など、大山さんのお酒への想いに触れました。

広島市中区胡町にある大和屋酒舗 胡町本店。

お酒を風土で伝えていく

大山さんが働き始めた頃から現在まで、広島の酒文化にはどんな動きや変化がありましたか?
大山:東京でサラリーマンをしていて、家業を継ぐために広島へ帰ってきたのが2000年です。その頃は、広島の飲食店では東北や信越の日本酒が隆盛で、地酒はあまり置いていなかったですね。
今では広島のお酒をウリにしているお店が多いですけど、以前はそういう状況だったんですね。
大山:実際僕も、帰ってきて5年くらいは県外のお酒を見ていたんです。でも広島にもいろんな酒蔵があって良いお酒をつくっていることに気づいて、それから広島中の蔵を飲食店の人を連れて回りました。
大和屋酒舗の原点は明治2年スタートの清酒酒造業。戦後、酒小売業に業態変更し現在へと至る。
お店で地酒が多く取り扱われるようになったのはそれがきっかけなんですかね。
大山:呉の宝剣酒造の土井杜氏や、いとこが三次の美和桜酒造で酒づくりをしていたり、自分と近い世代の造り手がいたんですよ。彼らも一緒に、広島でもっと地酒が飲める環境をつくろう、小さくても良いものをつくる蔵の酒を飲食店という場所を借りて認知度を高めようと、ずっと活動していました。
他県とは違う、広島ならではの日本酒の特徴とかはありますか?
大山:海沿いのエリア、西条を含めた県中心部のエリア、岡山や島根との県境付近の山エリアといった感じで、広島っていくつかのエリアに分かれてそれぞれの環境に合ったお酒が造られているんですね。
山と海とじゃだいぶん環境が変わってきますね。
大山:そうなんですよ。だから僕たちは、風土という言葉で日本酒を伝えていこうと考えました。ワインでいうテロワールと同じですよね。海側の蔵でつくられたこの酒は、こういう味でこういう食事が合うよ、というのを考えてリリースしたりとか。
大山さんから日本酒をおすすめしてもらう編集部スタッフ。
確かに広島は、観光とか外遊びとかもそうですけど、いろんな面で海と山の両方を楽しめる土地で、日本酒も同じなんですね。
大山:ちょうど僕が広島に帰って来た頃は、焼酎が流行っていた時代です。でもその焼酎が、風土というものを鮮明に訴えかけてきたというか。
焼酎というと、鹿児島とか。
大山:そうそう、ほぼ南九州だけでつくられていたお酒が、ブームで日本全国に知られるようになりました。僕も実際に焼酎蔵をめぐって、その地域だからできる酒づくりというものを実感したんです。それで風土をキーワードに、地域性が反映されたお酒の魅力を伝えていくことを大切にするようになりました。
大和屋酒舗では、焼酎も多彩にラインアップ。

美味しいお酒との出会いをつくる

酒文化を広げていく活動の中で、印象的だったのはどんなことですか?
大山:アリスガーデンで「日本酒燦々」というイベントを主催したことですね。蔵元の人と話したり実際に日本酒を飲んだりできる場をつくりました。会社が掲げるミッションの中に「美味しいお酒との出会いをつくる」というのがあるんですけど、その出会いの場をつくるためにまずやったのが日本酒燦々で。
私もそのイベントで日本酒と出会った一人なんですよ(笑)。そこから日本酒がすごく身近になりました。
過去に開催した日本酒燦々の様子。会場が多くの人で埋め尽くされるほどの賑わいに。
大山:ありがとうございます(笑)。それ以外にもホテルでのクラブイベントだったり、いろんなイベントに日本酒を持っていきました。
クラブと日本酒ってちょっと意外な組み合わせですね。
大山:とにかく出会うきっかけをたくさんつくろうと。あと特に、日本酒燦々では購入できるようにしたのもポイントなんです。それまでに行われていたイベントは、日本酒を知っても買うことができなくて、近所の酒屋さんに行っても売ってない、ということもよくあったんですよね。
地道な部分だけど、文化を広めるっていう点では重要なことですね。
大山:自社でイベントを主催するのはリスクもありますけど意味があると思って始めたし、その想いで今も続けています。広島のお酒が少しずつ認知されてお店でも飲めるようになってきて、そうした環境をつくってきたという自負は持っていますね。
地酒の試飲会なども積極的に行っている。

原石のような蔵を輝かせたい

最近、若い世代の方が継がれていたりする蔵も多い印象があります。
大山:そうですね、世代が変わられたりして頑張っている蔵が多いです。僕も帰って来たときは26歳くらいで若手だったのに、いまやもう中堅以上になってますからね…(笑)。
20年以上のときが流れて(笑)。
大山:ただ、全国的にも広島でも酒蔵は減ってきているんですよ。1軒でも多くの蔵に残ってもらえるようお手伝いするのが、僕らのような酒販店の大切な仕事だと思っています。
売る部分で大切にしていることはありますか?
大山:うちでよく話しているのは、蔵元からお酒が入ってくるときは製品で、僕たちからお客さまにお届けするときは商品だということ。製品から商品へとどのように価値を生み出すかが大事だと考えています。これはお酒だけに限らず、販売会社であればどのジャンルでも同じだと思うんですけどね。
ほぼ毎日飲食店へと足を運び食事しているという大山さん。料理人とのコミュニケーションや自身の目で確かめる街の動きを通して、お酒文化のあるべき姿を見つめている。
先ほど言われていた美味しいお酒との出会いという部分も、その価値づくりのところにつながりますね。
大山:そうですね。広島でも製品が製品のままお客さんに届いてるなと感じた日本酒があって。でも蔵に行ったら、すごく良い環境で醸しているんですよ。ここならもっといい酒ができるはずだと思って何度も通って、一緒に企画したりする蔵も増えました。
大和屋酒舗さんはオリジナルで日本酒を販売されている印象もあるんですが、そういう背景からですか?
大山:はい。これもまたうちの考え方なんですけど、ものづくりのできる販売会社でありたいとずっとやってきていて、それがオリジナル商品につながります。特に業務用の酒屋だと運び届ける物流業みたいな感じになりがちなんですけど、そうならないようにって心掛けています。
「酒を醸すことが僕たちのすることではなく、蔵と一緒に考えて新しいものを生み出していく気持ちで」と大山さん。何度も蔵へ行き、打合せを重ね、商品企画を行っている。
まさしく、蔵元と大和屋酒舗さんだからできる価値づくりですね。
大山:2020年は特にコロナ禍の影響をたくさん受けているので、次の時代に向けての希望になればいいなと思っていくつか商品をつくりました。「雨上がりの夜空に」という日本酒は、雨が降るような日が続いても、いつか必ず雨は上がるし、上がった空には星がきれいに輝いているよっていう想いを込めていて。
そんな話を聞くと、よりお酒の楽しみ方も魅力も増しますね。飲みたくなってきました(笑)。
大山:店でもそうした想いを伝えるようにしています。想いはあるのに伝えきれていなかったり、技術力はあるのに昔の酒づくりのイメージが残ったままだったり、磨けば光る原石のような蔵がまだまだあるんですよね。3年5年10年と時間はかかるけど、僕自身も蔵元と一緒に良い酒を伝えていきたいです。
「一つひとつストーリーのあるお酒をつくっている」という大和屋酒舗オリジナルの日本酒。左から「賀茂金秀 雨上がりの夜空に」「おにぎり」「神雷 Rising Sun」。

広島を活気ある美味しい街に

商品企画やイベント以外に、以前と比べて変えたこと、お客さんの反応で変わってきたこととかはありますか?
大山:今は量り売りを積極的にしています。ワインショップの方でもできるのでやってみます?
あ! やってみたいです! お願いします!
大和屋酒舗から徒歩数秒のワイン専門店『yamatoya Wines』。所狭しとボトルが並んでいます。
お~あった! 量り売りのサーバー! 常時8種類くらいがそろいます。
大山:初めてだったり飲み慣れていない人がワインを1本買うのは勇気がいるじゃないですか。それを45ml単位で販売できるようにしているんですよ。
さっそく編集部・中尾がおすすめを聞きながら購入してみました。産地やアルコール度数なども分かりやすくラベルに書かれてます。
中尾(編集部):これだとグラス1杯分くらいですかね。飲み慣れていない人向けにもいいし、少しずついろんな銘柄を飲んでみたい人にもいい気がします!
大山:そうですね、ワインの他にはウイスキーも量り売りしているので、いろいろチャレンジしてみてほしいですね。
コロナ禍で家飲み需要が増えたこともあるし、お酒に対する価値観みたいなものにも変化があったかもしれないですね。
大山:家でも楽しんでほしくてお店で販売しているのはもちろんだけど、僕個人としてはやっぱり街の中で育って勉強させてもらって、いろんなことを教えてもらってきたんですよ。
街の中というと、流川とか薬研堀とか…?
大山:はい、でもこの街は今けっこう大変で。街の魅力をどう取り戻すか、そこをお酒という文化を通じてもう一度活気ある、価値ある街にしたいと思ってて。
流川を歩いていると以前と比べると人は多くはなってきたけど、100%は戻っていないですもんね。
大山:広島の皆さんにとっても、県外から来た皆さんにとっても、行きたい飲食店がたくさんある場所にしたいんです。実は、僕は博多をベンチマークしているんですけど。
博多ですか!
大山:博多は、広島で言う宮島や原爆ドームみたいな強力な観光コンテンツはないんだけど、同じ九州内からも広島からも東京からも美味しいものを食べに行くっていう人が多いんですよ。美味しいものがある街が博多だと思っていて、広島もそういう街になっていくことがより魅力ある街づくりにつながるんじゃないかと考えているんですよね。
美味しいものがある街って、いいですね。広島は牡蠣やお好み焼きが有名だけど、それ以外にももっとありますもんね。
大山:会社が掲げるもう一つのミッションに「美味しい街づくりに貢献する」っていうのがあって、まさにこれです。わざわざ人が行きたくなるような美味しい街づくりができるように、お酒を通して多くの人やメーカーとつながりながら一緒に取り組んでいきたいと思います。

高校生の頃にはお酒の道に進むと決め、それから長らくお酒に捧げる人生を歩んでいる大山さん。お酒のことなら大山さんと言えるほど人望も厚く、家や飲食店で楽しむ広島の蔵やメーカーのお酒が、実は大山さん企画のものだった!ということもきっと多いはず。広島でつくられたお酒がどんなものなのか、その背景を知れば、一杯がもっと身近に、美味しくなりそうです。

株式会社大和屋酒舗 代表取締役

大山 晴彦さん

酒販店『大和屋酒舗』での販売に加えて、広島に酒文化を広めるため、酒蔵や飲食店ともつながりながらイベントの企画実施、商品開発などを行う。唎酒師(SSI認定)、(社)日本ソムリエ協会公認ソムリエ。

大和屋酒舗 胡町本店

広島市中区胡町4-3

TEL.082-241-5660

OPEN.10:00~21:00

定休.日曜日、祝日

アクセス
広島CLiP新聞編集部(CLiP HIROSHIMA)から車で約10分