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Malino(マリノ)|人もペットも、防災には助け合える関係性づくりが大切

もしものときの備え、どれだけできているでしょうか。防災意識の高まりとともに、人だけではなく大切な家族であるペットの防災について考える機会を持つ人も多いと思います。

防災士、そしてペット災害危機管理士®の資格を持つ『株式会社Malino』の湊比侶未(みなと ひろみ)さんに、人とペットの防災の心構えや考え方について教えてもらいました。

猫との暮らしをきっかけに防災について学ぶ

防災士の資格を取得したきっかけを教えてください。
湊:2020年に引っ越しをする機会があり、そこで子どもの頃から大好きな猫と一緒の生活を始めました。その頃はコロナ禍ということもあり、感染症のことや防災のことも頻繁にテレビで観ていて、「もし何かがあったときに、この仔とどこに避難したらよいのだろう」とふと思ったんです。まったく無知の状態から自分でいろいろと調べ始めて、防災士の存在を知り、自分も資格を取ろうと行動しました。
ペット災害危機管理士®の資格取得もその頃ですか?
湊:そうですね。調べる中でペット災害危機管理士®のことを知りました。それで4級から始めて1級まで取っていきました。4級は人とペットの身を守ることを重点に、防災準備や飼い主の心構えを学ぶところからスタートするので、自分にとっても知りたいと思っていた内容でハードルは高くありませんでした。
資格を生かしてどんな活動をしていますか?
湊:資格の取得をきっかけに、まず人とペットの防災に特化した会社を設立して、防災用品の企画や販売などを行う会社『Malino』を立ち上げました。イベントへ出店して防災グッズを多くの方に知ってもらうのはもちろん、イベントに来られた飼い主さんがペットとの暮らしの中で普段気になっていることを聞いたりしながら、防災の普及活動をしています。セミナーで多くの方に向けて人やペットの防災に関するお話しをする機会もありますね。
『CLiP HIROSHIMA』で開催された防災イベントへも出店。
「家で飼っている猫ちゃんが活動の原動力です」と話す湊さんの愛猫。

正しく知り正しく恐れる、その先にある行動と安心感。

取材場所となった、ドッグラン・ドッグカフェ・保護犬保護猫シェルターの『マリコさんち』。看板犬のバジも取材に同席。
ペット防災の観点から、飼い主さんに伝えたいのはどんなことでしょうか?
湊:実際飼い主さんとお話ししてみると「やらなきゃいけないけど、できていない」という声が一番多く、ペット防災の認識がなかなか広まっていないなと感じます。ただ飼い主さんにとって、ペットは家族同然。私自身は防災について知ることができて良かったと実感しているので、実際に自分が感じた気持ちを正直に話して「まずは知ることから始めませんか」と伝えています。
人の防災については少しずつ意識が高まってきていると思いますが、ペットについてもまずはやっぱり知ることが大切ですね。
湊:「防災」と聞くとリスクをまず考えてしまうこともあるかもしれませんが、正しく知って正しく恐れることができればちゃんと対策はできます。「その先には安心感があるから、決して怖がることではなくて知ったらプラスになるよ」って私は明るく話すように心がけていますね。
湊さんが企画したペット用持ち出し避難セットの一部。
明るく伝えるって、すごく重要ですね。
湊:ペットの避難グッズを実際に見て頂きながら「旅行に行く準備のセットだと考えてみてね」と伝えると、飼い主さんは「本当だ、準備できるものばかりだね」と笑顔で言ってくださるんです。「避難所に行く準備」より「旅行に行く準備」の方が、やっぱり皆さんリアルに感じられるみたいです。
伝え方一つで、自分事として受け取りやすくなりますね!
湊:私自身もこれまで試行錯誤して、今はその伝え方で実践しています。防災についてどうしたら“気づき”につながるか、そして“行動”してもらえるか、私なりにかみ砕きながらお伝えするようにしていますね。
『マリコさんち』ではペット用防災グッズの販売も行っている。愛犬や愛猫の写真を入れられる「ウチの子オーダーバッグ」は、災害時にはぐれてしまっても写真で対応できるよう考えられた防災グッズの一つ。

人と人、人と地域が助け合える関係づくり

今回は『マリコさんち』で取材をさせてもらっていますが、ここはドッグランやドッグカフェ、あと保護犬や保護猫のシェルターでもありますね。
湊:そうですね。私は防災士やペット災害危機管理士®の資格を取る前から、保護猫活動をしていました。猫と一緒に暮らすようになった家と、ここ『マリコさんち』のマネージャーであるオノマリコさんが当時営んでいたドッグカフェが近かったんです。たまたま私はInstagramでマリコさんをフォローしていたという縁があり、会って話を聞きたいと思ってカフェに通うようになりました。
マリコさんはドッグランやドッグカフェの運営のほか、保護犬や保護猫の受け入れ、譲渡などの活動の中心を担う。
湊:やっぱり好きなものや大切なものが同じ人が集まるので、そのカフェは楽しくて温かい空間でした。近所に小・中・高と学校があり子どもたちが帰りに立ち寄ってくれたりもしていたので、子ども食堂をするようにもなりました。犬猫を愛する人たちの輪が広がって、人もペットも一緒に命を大切にする場所を作りたいという話になり、マリコさんと、私をはじめお客として通っていた人の計4名が主体となって、廿日市市峠に『マリコさんち』を作りました。私自身はここで防災に関する普及活動のほか、ドッグカフェ・ドッグラン・保護犬保護猫シェルターの活動にも携わっています。
能登からやってきた保護猫のまーちゃんと湊さん。
これからはどんな活動をしていきたいと思っていますか?
湊:まずは防災について正しく知っている飼い主さんをもっと増やしていけるよう、さまざまな場所や機会で伝える活動を続けていきたいです。また、飼い主さんの中には「避難所には行きにくい」と感じている方もいると思います。災害の種類や状況にもよりますが在宅避難という考え方もあるので、家をペットとの避難所として機能させるためのリフォームの相談やサポートもできたらいいなと考えています。例えば手つかずの古民家を犬や猫と住める家にすれば在宅避難も可能になり、地域に人がいればそれ自体が防災対策にもつながります。“暮らし”の部分をより広く捉えた活動ができればいいなと思います。
人の防災とペットの防災は、切り離すものではなくつながっているものですね。
湊:はい、一番大事なことは、もしもの際はみんなで助け合うこと。これが防災士としてもペット災害危機管理士®としても大事だと思っていることです。日頃から防災グッズを準備したりペットの適正飼育を行うことはもちろん大切ですが、最後は人と人や、人と地域が助け合える関係づくりが大切になると考えていて、それは人生においても災害時においても変わらないと思っています。そういう視点では『マリコさんち』のようにペットを飼っている人も飼っていない人も集える場所やコミュニティがあることは重要なので、仲間とともにかけがえのない場所づくりに努めていき、また次の世代にも引き継いでいきたいと思っています。
8月11日に『マリコさんち』で開催した夏まつりの様子。近隣に暮らす人々も参加した。

ますます防災意識が高まる今、その本質についても明るく話してくれた湊さん。まずは知ること。そして理解し合い、支え合うこと。当たり前のことこそ、もしものときには肝になるということを改めて感じました。

株式会社Malino

広島市中区本通7-29

TEL.082-298-0130

アクセス
広島電鉄・本通駅から徒歩2分

ドッグラン・ドッグカフェ・保護犬保護猫シェルター マリコさんち

廿日市市峠111-7

TEL.090-2861-6905

OPEN.10:00~16:00 ※変更の場合あり

定休.不定 ※Instagramで要確認

アクセス
広島岩国道路・廿日市ICから車で約15分