桃の花が咲き始める3月3日は「桃の節句」。「ひな祭り」とも呼ばれ、お雛様を飾り、女の子の健やかな成長と健康を願う行事です。しかし現代では住宅環境の変化などにより、やむをえず手放したり、タンスの肥やしとなっていることもあるお雛様。そんなお雛様たちにもう一度宮島で日の目を浴びてもらおうと始まったのが「宮島福よせ雛プロジェクト」。お雛様たちの第二の人生とは一体どんなものなのでしょうか。
ひな人形の第二の人生
早速ですが、「宮島福よせ雛プロジェクト」について教えてください。
山村:お雛様たちが「ひな壇を引退した」というコンセプトのもと活動しています。現代を生きるお雛様たちの姿をetto宮島交流館や大聖院など宮島島内58か所にでご覧いただけます。宮島でお茶会を開いたり、集まって麻雀をする翁、確定申告を頑張っているお雛様…色々な第二の人生を歩まれています。
まさに私たち現代人と変わらぬ人生を送っているのですね。
山村:ご家庭の事情でやむなく手放さないといけなくなったお雛様たちが七段飾りを降りて引退生活を楽しむ姿を持ち主の方々にぜひご覧いただきたいと思っています。現代生活を楽しむ姿に思わずくすっと笑っていただけるとうれしいです。
ひな人形で宮島をめぐるきっかけに
山村:2001年に始まった宮島の旧家に古くから伝わるお雛様をご覧いただく「みやじま雛巡り」というイベントがありまして、20年という節目にもっと盛り上げたいと考えていたところ、SNSで名古屋の「福よせ雛プロジェクト」のお雛様の姿に衝撃をうけ、すぐにコンタクトをとり仲間入りさせて頂きました。宮島町商工会の女性部が中心となって、2021 年より「宮島福よせ雛 プロジェクト」をスタートさせました。
山村:そうなんです。大鳥居の工事、それと重なったコロナ禍の影響で宮島を訪れる観光客は激減しました。自分たちで人を呼び込めたらという思いもあって始めたプロジェクトでしたが、コロナ禍で集まって打ち合わせや作業することも難しくなってしまいました。なので、各家庭に小物作りをお願いして回ったのですが、みな作っている小物がどんな使われ方をされるかよくわからないまま黙々と作業をしてくれました。
大変な中で完成したお雛様たちを見たお客様の反応はいかがでしたか。
山村:皆さんくすっと笑顔になってくださいました。宮島島内の店舗にも飾っていただいているので、この事をきっかけに気になっていたお店に入れた、というお声をいただいたこともあります。宮島全域を歩くきっかけにもなってほしいと思っていたので、成果が出てうれしく思いました。
宮島福よせ雛ではスタンプラリーも人気とお聞きしました。
山村:手のひらサイズの御朱印帳「福印帳」というものを作っています。全部で28ページあります。お寺では御朱印と同じようにミニ御朱印を授けていただけるよう宮島内の5つのお寺にご協力いただいています。それに宮島内の約50か所の協力店舗で「福印帳」を提示すると無料でシールをもらうことができます。
山村:福印帳は福よせ雛プロジェクト全体(2023年現在は8県で開催)で行われている企画なんですが、宮島オリジナルデザインを宮島在住のプロのイラストレーターにお願いして「宮島でしか買えない限定デザイン」の福印帳を作りました。デザインは6種類あります。福印帳は廿日市障害福祉サービス作業所「そらまめ」さんや「あおぞら」さんが制作してくださっています。28 ページ、すべて満願達成(コンプリート)された方にはクリアファイルをお渡ししています。福印帳のデザイン原画がとてもかわいかったので景品のクリアファイルにしちゃいました。ぜひ満願達成していただきたいです。福印帳が宮島のさまざまなお店や寺院をめぐるきっかけとなったらうれしいです。
お雛様はひな壇で静かに飾られているものという概念を覆す「宮島福よせ雛」。現代の宮島で第二の人生を歩みだしたおひなさまたちは、自由にくつろぎ、みな楽しく過ごしています。そんなお雛様の姿にこちらも思わず笑みがこぼれます。普段とは一味違うお雛様たちの姿を見に宮島をめぐってみませんか。
※お雛様のお預かりは保管場所の都合で現在は全てお断りしています。