
広島市中心部から、車を北へ走らせること約1時間。安佐町飯室に、ランチドライブにおすすめのピザ店があります。『ハレルヤピザ』の店主・霜下 信二(しもした しんじ)さんが作るのは、自家製玉ねぎ水を練り込んだもちもち生地を、自作の薪窯で焼き上げる唯一無二のピザ。
さらに、休耕田を活用した小麦づくりや、地域の中学生との学びの場づくりなど、ピザづくりに留まらない“地域との連携”も魅力です。
「ここでしか味わえないピザ」を目指す霜下さんに、そのこだわりを伺いました。

玉ねぎ水を使った独創的な生地づくり
ハレルヤピザの最大の特徴は、玉ねぎ水で仕込む生地。玉ねぎを水と一緒にミキサーにかけ、2日間置いて濾した玉ねぎ水を練り込んで作られています。


店内の薪窯は、霜下さん自身が手作りしたもの。内装も自分たちでDIYしたそう。

郊外だからこそ「わざわざ来る価値がある」ピザを

霜下さんのおすすめは「スペイン生ハムとベビーリーフのピザ」。実際にいただいてみると、生地はもっちりとしながらも驚くほど軽やか。一口頬張ると、玉ねぎの旨味がふんわり香り、イタリア産モッツァレラ、ドイツ産ゴーダ、北海道産マスカルポーネ、イタリア産グラナ・パダーノの4種のチーズが層になって絡み合います。薪窯で焼き上げた香ばしい耳の部分と、もちもちの生地の対比も絶妙なバランスです。

北広島町の農園「やまのまんなかだ」さんから仕入れたベビーリーフは、農薬や化学肥料に頼らず育てられた新鮮なもの。その上からスペイン産生ハム「ハモンセラーノ」を惜しみなくたっぷりと乗せています。生き生きとしたベビーリーフの食感と生ハムの相性は抜群です。

東京のイタリアンレストランで12年間働いた後、地元広島での独立を決意したという霜下さん。中小企業支援センターに起業の相談をしたところ、「ピザ屋がない郊外に開いた方がいい」とアドバイスを受けたそうです。そこでピザのデリバリーが届かないエリアを探し、この場所に辿り着きました。
小麦づくりへの挑戦と、地域での助け合い

できる限り「この土地で完結するピザ」を目指したいと考えている霜下さん。その思いから、約2,500㎡の休耕田を借りて小麦の栽培も始めました。

麦踏みとは、生育中の麦を足で踏みつけることで、耐寒性・耐乾性を高めたり、分げつを促すための工程です。
この中学生の麦踏み体験は、単なる農作業体験にとどまらず、その後の学びにも広がっているのだそう。生徒たちが収穫した小麦でお菓子やクレープを作り販売するなど、小麦の栽培から加工・販売までを体験できる“総合学習”として定着しつつあります。


毎朝6時から仕込みを始め、生地の発酵には約5時間。湿度や気温に合わせて微調整しながら丁寧に育てた生地は、多い日で1日60枚ほど焼き上げるのだそう。
独創的なピザ生地、手作りの薪窯、地元で育てた小麦、そして地域の人々との支え合い。霜下さんのピザは、この土地の恵みと人のつながりが凝縮された特別な一枚です。こだわりの詰まった味を体感しに、ちょっとドライブしてみませんか?