広島市安佐南区の川内地区。太田川の近くで水はけが良く豊かなこの土地は、古くから農業が盛んな地域です。中でも広島菜は130年以上の歴史をもつ伝統野菜の一つ。そんな川内の地で若農家たちが集まり、「かわうちのち」という名前で新たに「ミニ広島菜」を広める活動を行なっていると聞き、お話を伺いました。
漬物以外でも食卓に。「ミニ広島菜」とは?
上村:元となっているのは、広島菜を育てる過程で間引きした「間引き菜」です。もともとこれがおいしいと、我々農家をはじめ一部の人たちの間で密かに好まれていました。これまではあまり市場に出回ることはなかったのですが、「このおいしさをもっと多くの人に知ってもらい、広島菜を広めたい!」という思いから、2022年より「ミニ広島菜」として本格的にハウス栽培を始めました。
みなさんの広島菜愛から生まれたのがミニ広島菜だったのですね。
上村:はい。通常の広島菜はそのほとんどが漬物用で、およそ2〜3ヶ月かけて重さ約2〜3キロにまで成長させるため、なかなか家庭用には使われません。その点、ミニ広島菜は種まきして約1カ月〜1カ月半程度で収穫するため、大きさも20センチ程度と小さく、調理するにはとても使いやすいんです。
上村:炒めたり煮たりなどさまざまな調理法で楽しめますが、特におすすめはお浸しや鍋です。食感はとても柔らかく、苦味やえぐみも抑えられているので、サラダとして生で食べることもできますよ。味はさっぱりしていますが、その一方で広島菜特有の風味もしっかりと残っています。
こんなにも苦味やクセがなく食べやすいなんて驚きました。広島菜=お漬物というイメージがいい意味で変わったような気がします!
上村:そうですね。いろんなアレンジ方法で食べられます!ミニ広島菜を身近なものとして、日々の食卓で味わってみてほしいです。
(※上村さんのInstagramではミニ広島菜の調理例を公開中。 )
受け継がれてきた農業を守る「かわうちのち」
今では住宅も多く立ち並ぶようになった川内地区ですが、住宅の合間にはあちこちに畑が見られます。こちらでミニ広島菜を広めるべく川内の若農家が集まり結成された、農業チーム「かわうちのち」。川内での農業をこれからも守っていきたいと、熱い思いを持つ若い農家たちも多く、「かわうちのち」代表の上村さんも、7代に渡って農業を継承している一人です。
「農業チーム」というのは新しい形かと思いますが、具体的にチームでどのようなことに取り組んでいるのでしょうか?
上村:過去には広島菜を守る活動としてクラウドファンディングを実施しました。他にもSNSで広島菜レシピを定期的に公開したり、「かわうちのち」を知ってもらうためにロゴやホームページを新設したりと、僕たちの世代だからこそできる取り組みにチャレンジしています。
今後「かわうちのち」としてさらに取り組んでいきたいことはありますか?
上村:やっぱり川内の農業を絶やしたくない、というのが根底にあるので、ぜひ若い世代に農業を伝えていきたいです。一から畑を作り農業を始めるのはとても大変なので、僕たち「かわうちのち」が中心となって、すぐに農業を始められる環境やノウハウ、販路などをしっかり整備していけたらと思っています。
上村:そしてゆくゆくは、かわうちのちがつくる野菜はおいしくて安心だと言ってもらいたいですね。広島の食文化を、この川内の地から盛り上げていきたいです!
調理もしやすく、さっぱりとした味わいで食べやすい「ミニ広島菜」は、新しい形の伝統野菜として広島の食卓に彩を加えてくれるに違いありません。そして、そんなミニ広島菜の魅力を伝え続ける「かわうちのち」の今後の取り組みにも、ぜひご注目ください!