広島中の+(プラス)体験を集めるWebマガジン 広島CLiP新聞 広島CLiP新聞

公式SNS 広島の耳寄り情報配信中!

しまのぱん souda!|江田島で自然の力に委ねたパンづくり

江田島でパン屋を営む『しまのぱん souda!』の店主・西村京子さん。島の食材、地下水、薪木を使い、乳酸菌などの微生物や薪窯の火といった自然の力を生かして、日々パンを焼いています。

江田島で地域おこし協力隊に

パン屋をオープンしたのはどんなきっかけからですか?
西村:昔からパンが好きで、30歳を過ぎた頃からパン屋をしたいと考え始めました。それからパンづくりを学んで、お店を持つことに向けて動き始めました。
古民家を改装した『しまのぱん souda!』。
江田島には何かご縁があったんですか?
西村:実は、島暮らしもずっとしたかったことなんです。でもいきなり仕事を辞めて移住するのもどうかと思い、まずは働きながら島暮らしをしようと。江田島なら広島へ通勤できますしね。
店名の『souda』は、「空」「海」「大地」の頭文字から。自然の恵みを生かしたパンづくりへの思いが表現されています。
パン屋より移住が先だったんですね。
西村:はい。でもなかなか良い物件が見つからず、本腰入れて島暮らしの準備をしようと仕事を辞める決断をしたら、江田島市の地域おこし協力隊の募集がちょうど始まって。オリーブの普及に関わる仕事で、パンとオリーブは結びつきがあるし、テレビの番組制作をしていた前職での経験も生かせると思いました。それからオリーブ普及員として、江田島に深く関わるようになりました。

人が及ばない、自然の力を大切に焼くパン

オリーブ普及員はどれくらいの期間されていたんですか?
西村:3年間です。その間にお店の物件探しもしていて、任期を終える前にこの古民家を紹介してもらいました。
鳥の鳴き声が聞こえてくるほど周りが静かで、素敵な環境ですね。
西村:古民家で、薪窯を置くスペースがあり、地下水がひける。物件を見てお店の風景が浮かんだので、地域おこし協力隊の任期を終えた後、2020年6月に店をオープンしました。
カンパーニュやブロンなどの定番をはじめ、多くて8種類ほどが並ぶ。
カンパーニュのようなシンプルで味わい深いパンがメインですよね。
西村:フランスの伝統的な製法でつくっていて、オリーブの実で発酵させた自家製酵母をもとに、小麦と塩と水を繰り返し継ぎ足したルヴァン種を使っています。種には乳酸菌や酵母菌が生きているので、温度などの条件をそろえても焼き上がるパンは日々風味が少しずつ違うんですよ。
その日だからこそ焼けるパンが並ぶんですね。
西村:はい、菌の力に委ねるようにしています。あと薪の石窯も木の種類などによって燃え方が変わるので、窯の力も欠かせません。
薪には江田島の伐採木から仕入れる広葉樹を使用。じっくり焼くと、皮が焼きこまれて中の水分が閉じ込められ、より味わい深く。
薪窯で焼いたパン、本当においしいですよね。
西村:木の命をもらって焼くので、それがおいしさにつながるんだと思います。菌の力や薪の力といった、人の力が及ばない部分を大切に焼いています。
左からオリーブパン、カンパーニュ、オリーブオイルブリオッシュ。

おいしく食べて、笑顔がつながるパンを

パンって、つくり手さんの思いがすごく表れるなと思います。
西村:そうですね。私は島の食材や人、魅力がつながる、日々に寄り添うパンを焼きたいと思っています。
西村:乳酸菌も働くので、冷蔵庫保管だと2~3週間は日持ちするんです。日持ちするから廃棄しなくて済むし、フードロスを防ぐことにもつながります。美味しく食べて笑顔がつながるパンを、これからも届けていきたいです。
購入したパンの一部をスライスして、店内で味わうことができます。

取材中、地元・江田島在住のお客さんから聞いた「この店ができて、江田島が元気になったんよね」という言葉。西村さんと近況報告しながらパンを選んだり、お客さん同士が会話を弾ませたり。そうした店の日常を見ると、この店がパンのおいしさ、人と人の交流、島の資源や魅力、楽しく食べる喜び…、そうしたさまざまなことをつなげて循環させていく場になっているということが改めて伝わってきました。

しまのぱん souda! 店主

西村 京子さん

広島市から江田島市へと移住し、地域おこし協力隊でオリーブ普及員としてオリーブの振興に携わった後、2020年『しまのぱん souda!』をオープン。国産小麦や自然発酵の種などシンプルな素材と薪窯を使ったパンづくりを行う。

しまのぱん souda!

江田島市大柿町大原1637-1

TEL.なし

OPEN.11:00~17:00

定休.月~木曜日

アクセス
広島CLiP新聞編集部(CLiP HIROSHIMA)から車で約1時間10分