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寺西 隆幸さん | 心からのおもてなしを提供するてらにし珈琲店

どんなに忙しくても、お客様が来られたら目と目を合わせ笑顔で迎えてくれる『てらにし珈琲店』のマスター、寺西隆幸さん。「生きているうちにどれだけ人を喜ばせられるか」、この思いを大切にこれまで歩んできました。広島県のみならず県外のお客様からも愛され続けているてらにし珈琲店の人気の秘密や、マスターが働く上で大切にしていることについて聞いてきました。

てらにし珈琲店のトレードマーク、ミルが描かれた看板。

とある珈琲屋との出合いが「てらにし珈琲店」誕生のきっかけに

てらにし珈琲店は1978年に開業されて43年が経ちますが、まず最初にコーヒーの道を選んだきっかけは何だったのでしょうか。

寺西:僕が18歳のとき父親が亡くなって、これからどう生きていくかって考えたときに、進学ではなく就職することを決めました。父は食品関係の仕事をしていたのですが、当時ある企業の社長が僕の父と一緒にいろんな事業を計画しているなかで、ボウリングの新事業をしようという話になっていたみたいで。父の兄弟が仕事を引き継ぎ、ボウリングの事業は僕が入ることになったんです。当時すごくはやっていたけど、すぐ下火になってしまって、その事業からは手を引くことになりました。

そうだったんですね。

寺西:その事業から離れた後に「レストランを開業するんだけど、本店の店長をやらないか?」って20歳のときにいきなり言われて。そこから自分なりに頑張ったけど、飲食の経験がなかったから未熟さに気付いて悩んでいたんです。そしたら「飲食のことを学びたいなら、神戸に有名な飲食店があるからそこで勉強したらどう?」って教えてもらって、そのお店で一から飲食の修業をすることに決めました。

ではそこで学んだことが「てらにし珈琲店」をオープンするきっかけに?

寺西:それが、そこのお店で修業するって決めてたんですけど、ある日、「神戸に来たならぜひ『神戸にしむら珈琲店』に行ってみて」って別の方に言われて、実際に行ってみると僕が今まで思っていた飲食のイメージとは違って、すごくお客様が活気に溢れていたんです。ここで働きたいと思って、急遽「神戸にしむら珈琲店」で働くことにしたんですよ。

「神戸にしむら珈琲店」が寺西さんの心を大きく動かしたんですね。

寺西:そうですね。そこに入っていなかったら今はないです。神戸にしむら珈琲店は、コーヒーなどに使うミルクの乳まで指定していたり、カップも全て手づくりだったりとすごくこだわりを持っていて、感動したことを覚えています。

てらにし珈琲店で人気のモーニングメニューのパンは、砂糖は使用せず、塩を中心につくられています。このパンに合うジャムを何種類か試した結果、いちご、ブルーベリー、あんずで提供することになったのだそう。

神戸にしむら珈琲店では何年勤められたのですか?

寺西:2年くらい本店に勤務していました。なかなか厨房へ入ることは難しいんですが、1年ちょっとで入ることができたんです。その後に別店舗へ異動することもあって。実は異動を伝えられたとき、あまり納得できてなかったんですが、そこのお店ではじめてコーヒーの淹れ方を学べたんです。異動は自分のためだったんだと後から気付くことができて、感謝しています。

その経験が今に生かされているんですね。

てらにし珈琲店ではネルを使用し、コーヒーを淹れています。神戸にしむら珈琲店もネルドリップ式だったことから同じ淹れ方にしたのだそう。
「おいしい味を出すにはこれが一番」と寺西さん。

そこでは2年勤務されたということですが、広島に戻ってこられたのは何か理由があったんですか。

寺西:母親の体調が悪くなったんです。母の面倒を見ながら広島で自分のお店を出したかったけど、当時は脱サラした人たちの珈琲専門店が多かったんですよ。すぐに出すとみんなと同じようにみられるから、ホテルに入って料理の勉強をすることにしたんです。

広島に戻られてからも飲食での経験をさらに積まれたんですね。

寺西:はい。広島のホテルへ入ってからも、ときどき神戸にしむら珈琲店へ行っていました。そしたら当時お世話になっていた神戸にしむら珈琲店の専務が、「寺西、もうお店をやったら?」って言ってくれたんですよ。これが「てらにし珈琲店」を開業する大きなきっかけなんです。言われたときは、すごい自信になったし、後押しになりました。他の人に言われていたらピンと来てなかったと思います。

尊敬している人に言われると自信につながりますし、ここまでやってきてよかったと思えますね。

寺西:そうですね。この場所でやるためには専門的なことをしないとお客様に来ていただけないと思い、コーヒーに関しては自信があったのでコーヒーのお店をすることにしました。

広島市中区宝町にあるてらにし珈琲本店。

生まれてきた理由はお客様に喜んでいただくため

てらにし珈琲店はいつ来てもお客様でにぎわっていますが、オープン当初からお客様は多かったんですか。

寺西:それが最初から20年間は増え続けたんです。

そうなんですね。何かお客様が来るように宣伝活動などをされたんですか。

寺西:宣伝は全くしてなくて、口コミだけで来ていただけたんです。喫茶店が多い時代だったけど、競争の枠には入らなくて、自分のペースで仕事をすると決めていました。でも口コミって本当に大切なんですよ。一時期1日で300人来られたときがあって、そのときはもうぐしゃぐしゃですよ(笑)。

このお店でゆったり過ごしたい方が多いから滞在時間も長いでしょうし、300人ってすごい数ですね。

寺西:そうそう。今ではあり得ないですが、最初の頃は満席のときに1つ席が空いていたりすると「相席いいですか?」を平気でやっていたんですよ(笑)。でも20年くらい経った頃に、どれだけお客様を多く入れるかではなくて、お客様に喜んでもらうにはどうすべきかっていう考え方に変えたんです。

カウンター席に座ると、マスターと目線が合うようになっています。コーヒーを淹れたり料理をつくる姿を見られることはもちろん、マスターとゆっくりお話しができる特等席です。

そうなんですね。変えてから何かそれまでと変化はありましたか。

寺西:「ここに来たらほんとに幸せになれる」とか「この店に来てよかった」って言われることが増えて、それはすごくうれしかったしやりがいを感じますね。

その言葉はうれしいですね。そういう風に言ってもらえるということは接客にもかなり力を入れているのだと思いますが、マスターが働く上で大切にしていることはありますか。

寺西:「こなす」のではなくて「もてなす」という気持ちでやっています。来られたお客様が一番大切で、来られた方との縁っていうのは偶然ではなく必然だと思うんです。そういう意味では、お客様に対して真剣勝負で接客することが一番大切なんですよ。

たしかに「こなす」と「もてなす」では意味が全然違いますね。

寺西:そのためにはお客様が何に喜ばれるのかを常に考えています。お店に入られたら必ず目を見てあいさつして、今日はそっとしておこうとか話しかけようとか、心を読むんです。あとは常連さんがいかに大事かっていうことも感じないといけないです。毎日来られるお客様が当たり前だと思ったら大きな間違いで、新鮮な気持ちで人と接するっていうことも大事にしていますね。

その考えはすごく大切ですよね。

寺西:だから今生きていてどれだけのことができるか、何のために生まれてきて、何のために仕事をするか。この仕事はお客様に喜んでいただけることが多いから、いい仕事だなって感じています。

マスターの考えを聞いているとすごく勉強になります。どんなに忙しくてもいつもお客様に心配りをされていますが、何か秘訣があるんですか。

寺西:僕の場合、家に帰って1時間くらい反省するんです。反省するとそこで成長してますから。

毎日反省していらっしゃるんですか。具体的にどういったことを反省されるんですか。

寺西:やっぱり対応が上手くいかなかったときってお客様の表情が変わるじゃないですか。だから今度来られたとき挽回しないといけないって思っていて。これはスタッフみんなができないといけないし、そのサービスがお店としてあるべき姿なんですよ。

みんなができるということは何かマニュアル化されているんですか。

寺西:マニュアルは難しいから、全て自分で伝えています。マニュアルがあるお店は結局仕事を辞めると笑顔がなくなるんですよ。そのときだけできても意味ないよねっていう話で。お客様は、10年経ってもお客様なんですよ。店を離れたら関係ないっていう考えは少し違うんじゃない?と思います。

いつ来てもてらにし珈琲店のスタッフさんは笑顔で心配りができているから、マスターの思いがきちんと伝わっているんですね。先程反省をされているというお話もありましたが、これまでお店を続けてこられて、大変だと思ったことはありましたか。

寺西:大変なことか…。4人でお店をしていたとき、たまたま辞める人が続いて、年中無休で仕込み、オーダー、掃除などを2人でしたときはしんどかったですね。相手もよくやってくれたなって思います。気を使って食事に誘うと、食べるより寝たいんですよって言われたことももありましたね(笑)。

もともと4人だったのに2人ってかなりきつかったのではないでしょうか…。

寺西:でも2人でやったときが1番売り上げがあったんですよね。そのスタッフは最後まですごく店を愛してくれた人でした。

家族との思い出を刻む場所でもありたい

これからどんなお店にしていきたいですか。

寺西:より多くの人に私が淹れるコーヒーを飲んでもらいたいですね。

すてきですね。マスターがおすすめするコーヒーの飲み方はありますか?

寺西:お客様の好みで飲んでいただけるよう、ブラックでも楽しめるし、砂糖も溶けやすいものを使って、甘いだけでなくコーヒーの角を取ってくれるものにしています。ミルクもコーヒーに合うよう1㏄ずつスポイトで調整して飲み比べて今のミルクにしたんですよ。どんな飲み方でも感動してもらえるように、常に安定した味をお客様に提供しています。

お店の隣には焙煎室があり、毎日自家焙煎をして、オリジナルのコーヒーを提供しています。
2階の倉庫には、焙煎する前の豆のストックがあります。こちらのコーヒー豆が保管されている袋は広島CLiP新聞ブースに展示しておりますので、ぜひ見に来てくださいね。
豆にも種類がたくさんあり、焙煎しては飲んでを繰り返し、日々おいしい味を追求してます。
カップも自家製。ブレンドコーヒーは厚めのカップにすることで口当たりを優しく感じることができるようにつくられているのだとか。カップは湯煎しているため、冷めにくく温かいコーヒーが長く楽しめます。

寺西:あとは、家族で来て楽しんでもらえるお店にしたいですね。子どもさんが来られた場合はまたサービスが全然違って、ポッキーを出したりとか相手が子どもさんでもおもてなしをします。先日「お母さんも小さいときにポッキーもらったんだよ」って会話をしている親子のお客様がいらっしゃって、そういう思い出がよみがえる場だとさらにいいなと思いますね。

小さいときの家族との楽しい思い出って記憶としてしっかりと残っていますよね。

寺西:だから自分は子どもさんにも来てもらえるように、こういうサービスもやってるんですよ。家とはまた違った思い出があるじゃないですか。家族と思い出を持つことがすごい大事だし、ここが思い出の場所であってもらいたいですね。

私も家族で小さいときいろんな場所に行ったことを思い出しました。てらにし珈琲店にも今度家族で遊びに来たいと思います。

マスターと話をしていると、優しい空間ととっておきのコーヒーが心穏やかな気持ちにさせてくれます。こんなに落ち着けて、居心地がいいと感じる理由はマスターのおもてなしがあってこそだと実感しました。ここに来ればすてきな時間を過ごせることは間違いありません。味はもちろん、マスターの人柄にきっとあなたも惹かれるはずです。

有限会社てらにし珈琲 代表取締役

寺西 隆幸さん

自家焙煎のコーヒーと自家製のパンを使い、常に安定した味とサービスを提供する「てらにし珈琲店」のオーナー。日々カウンターに立ち、幅広い世代のお客を迎えている。

てらにし珈琲店 本店

広島市中区宝町6-15

TEL.082-242-3850

OPEN.8:00~18:30

定休.日曜・祝日

アクセス
広島CLiP新聞編集部(CLiP HIROSHIMA)より車で3分