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THE TERROIR(ザ・テロワール)|藍染め体験!土地が育む、唯一無二の藍色。

広島県福山市山野町。豊かな自然に囲まれたこの町に、藍の栽培から染料づくり、藍染めまでを一貫して手掛ける工房『THE TERROIR(ザ・テロワール)』があります。2019年にスタートしたTHE TERROIRでは、日本に古くから伝わる伝統技法「天然灰汁(あく)発酵建て」による藍染めを実践。自社で育てた藍を使い、時間と手間を惜しまず、一つひとつ丁寧に藍色を生み出しています。

近年では国内だけでなく海外での展示やワークショップなど活動の幅を広げ、藍を通して日本の文化や地域の魅力を発信し続けています。今回は、代表の藤井さんに藍染めの魅力やものづくりへの思いを伺うとともに、実際に藍染め体験にも挑戦。藍ができるまでの背景や、天然藍ならではの奥深い世界を体感してきました。

藍で紡ぐ、その土地らしさ

工房を立ち上げたのは2019年。代表の藤井さんが藍染めと出会ったきっかけは、知人が開催していた藍染め体験でした。何度か体験を重ねるうちに、その奥深さに魅了され、藍の産地である徳島県で技術を学び、『THE TERROIR』を立ち上げます。

「テロワール」とは、本来ワインづくりで使われる言葉で、土壌や気候など、その土地の自然環境の特徴を表しますが、『THE TERROIR』では、その土地に根付く歴史や文化、人々の暮らしまでも含めた概念としてとらえて活動をしています。その名前には、藍を通して、その土地ならではの魅力や文化を未来へつないでいきたいという思いが込められています。

収穫時期を迎えた藍。一見、葉は緑色ですが、少し枯れた部分は藍色の片鱗が感じられます。

その思いを形にするため、THE TERROIRでは藍の栽培から染料づくり、藍染めまでを一貫して行っています。

鮮やかな藍色の製品が生まれるまでには、およそ1年もの歳月がかかります。春に藍の種をまき、夏に収穫した葉を細かく裁断し乾燥、約4か月かけて発酵していきます。こうして染料となる「蒅(すくも)」が完成します。その後、「天然灰汁発酵建て」と呼ばれる伝統技法で染液を育てていきます。

木灰から採れる灰汁(あく)、貝灰、ふすま(※小麦の粒の皮の部分)など自然由来の素材だけを使い、微生物の力を借りながら発酵させていきます。
藤井:藍は本当に生き物なんです。毎日状態が違うので、その日の様子を見ながら手をかけています。気温によって微生物の働きも変わるため、冬には甕(かめ)に電気毛布を巻いて温めることもあります。

こうして丁寧に育てられた藍液で、一点一点手作業による藍染めが行われています。今回、広島CLiP新聞編集部員も実際に藍染めに挑戦しました。自分だけの一枚を染めながら、藍染めならではの楽しさを体験していきます。

色の変化を楽しむ、藍染め体験!

『THE TERROIR』では、手ぬぐいやストール、Tシャツなど、好きなアイテムを選んで藍染めを体験できます。持ち込んだ洋服を染めることも可能で、所要時間は説明を含めて約1時間半。子どもから大人まで気軽に楽しめる体験として人気を集めています。

体験前にまず驚いたのは、「藍色は一色ではない」ということでした。

藤井:藍色といっても、薄い色から濃い色まで本当にたくさんの表情があります。昔から『藍四十八色』と言われていて、それぞれの色には名前も付いているんですよ。
ひとえに藍色といっても、その濃淡は実にさまざま。最も薄い「藍白(あいじろ)」から、最も濃い「止紺(とめこん)」まで、染める回数や時間によって無数の表情が生まれます。

今回挑戦したのは、基本の「藍色」の無地のTシャツ。柄を付ける絞り染めも魅力的でしたが、「せっかくなら藍そのものの色を楽しみたい」と、シンプルなデザインを選びました。

もちろん、模様を楽しみたい人向けの方法も豊富です。輪ゴムで布を縛って白いラインを作ったり、くしゃくしゃに丸めたり、蛇腹折りや板で挟んで模様を付ける「板締め絞り」など、その組み合わせは自由自在。同じ方法でも、折り方や縛り方を少し変えるだけで、世界に一つだけの模様が生まれます。

輪ゴムで縛った部分には染料が入らず、布本来の色が残ります。その特徴を生かし、縛り方や折り方を工夫することで、さまざまな模様を生み出すことができます。

準備ができたら、いよいよ染色です。Tシャツをゆっくりと甕の中へ沈め、1〜2分ほど浸したあと、しっかり絞って空気に触れさせます。その工程を繰り返すと、白色だった布が、少しずつ深い青へと変化していきます。

藤井:藍はずっと浸けていても濃くなるわけではありません。空気に触れて酸化することで色が出るので、『浸ける・絞る・広げる』を何度も繰り返して濃くしていくんです。
広げるタイミングが遅いと布の内側まで空気が届かず、きれいに発色しないこともあるため、手早く広げるのがポイント。

染め重ねるたびに少しずつ色が深まり、藍色が少しずつ表情を変えていきます。最後に水洗いを終えて広げると、やわらかく澄んだ藍色のTシャツが完成しました。

一つひとつ色の出方が異なるのも、天然藍ならではの魅力。実際に体験してみることで、藍染めの奥深さや、ものづくりの楽しさをより身近に感じることができました。

藍から広がる、新たなものづくり

『THE TERROIR』の活動は、工房の中だけにとどまりません。現在は海外での展示やワークショップ、異業種とのコラボレーションなど、藍を軸に新たな挑戦を続けています。昨年はドイツや韓国でワークショップを開催し、台湾ではイベントにも出店。今年はカナダでのイベント参加も予定しているそうです。

藤井:海外に向けて発信しようと思って始めたわけではないんです。でも、思ってもいなかったところから声を掛けていただく機会が増えてきました。それだけ藍には、人を引きつける力があるんだと思います。
ドイツ・ベルリンでのワークショップの様子。

また、学生のインターンシップも受け入れており、藍染めだけでなく、藍の栽培や発酵まで一貫して学べる場として注目を集めています。

さらに、木工ブランド「DENTO(デント)」とのコースターやインテリア雑貨の制作、企業制服の藍染めプロジェクトなど、さまざまな分野とのコラボレーションも展開。藍色の可能性は、暮らしのさまざまな場面へと広がっています。

木工ブランド「DENTO」とのコラボレーションで生まれた藍染めのコースター。木目と藍色が美しく調和し、藍の表情が一点ごとに異なります。

藤井:僕らは服をつくりたいというより、『藍色』をつくる仕事なんです。藍を通して、もっといろんな人や地域と一緒にものづくりができたらと思っています。

藍が育まれる過程を知り、自分の手で染める体験をすると、藍色がぐっと身近で特別なものに感じられます。工房には、ストールや靴下、コースターなど暮らしに取り入れたくなる商品も並んでいます。「藍染めを体験してみたい」「藍色の魅力に触れてみたい」と思った方は、ぜひ『THE TERROIR』へ足を運んでみてください。きっと、ものづくりの奥深さと、藍色が持つ豊かな表情に出会えるはずです。

THE TERROIR

福山市山野町山野3410

TEL.080-2905-8845

OPEN.10:00〜17:00

定休.日曜日

アクセス
JR道上駅から車で約20分