CLiP HIROSHIMAが位置する広島市中区の千田地域。広島電鉄・鷹野橋駅からほど近いこの場所にかとう歯科医院はあります。ここでは電動モビリティを活用して、通院が難しい患者様に向けた訪問診療に力を入れている他、「歯医者さんは怖い」というネガティブなイメージをなくすべく様々な取り組みを行っています。
歯科でも訪問診療という選択肢を
歯医者さんでも訪問診療ができることを初めて知りました。どうして訪問診療を始めようと思ったのですか。
加藤:元々おばあちゃんっ子だったので、お年寄りの生活の支えとなるような訪問診療に昔から興味がありました。2011年私がまだ研修医だった時、東日本大震災が発生し被災地で歯科検診のボランティアを行う機会があったんです。一軒一軒訪問をする中で、通院が難しく歯の不具合を無理に我慢されているお年寄りがたくさんいるのを目の当たりにして、そこで訪問診療の必要性と素晴らしさを痛感したことが決め手となりました。
加藤:認知症で意思表示が難しく、急にご飯を食べなくなり、お医者さんからももう厳しいだろうと診断された方がいらっしゃったんです。でも実は伝えられなかっただけで、歯が原因でした。その方が自分の治療をきっかけにご飯を食べるようになったことは嬉しかったですね。また入れ歯を入れてあげたことで笑顔が戻り人相が変わった患者様もいて、そういった方の姿を見ると喜ばしい気持ちになりますね。
訪問診療によって寿命が伸びたといっても過言ではない気がします。今後の高齢化社会では欠かせないものになりそうです。
加藤:そうですね。実際地域の包括支援センターやケアマネジャーの方からご相談いただくケースも多いです。食べることは健康に直結しますから、まず歯科にも訪問診療という選択肢があることを多くの人に知っていただけたらと思います。
患者様とのコミュニケーションが第一
かとう歯科医院では医院に訪れる患者様に対しても、歯医者さんのイメージをポジティブに変えるべく様々な工夫を行っています。
かとう歯科医院では、治療の前にまず丁寧な説明があると伺いました。治療内容の説明だけではなくて、大きい音が鳴る前など作業ごとに一声かけてくれるそうですね。
加藤:私自身も初めて自分の父以外の歯医者さんで治療をしてもらった時、何をされているのか分からないのが怖いと感じたんです。まず患者様にきちんと納得していただいた治療をすることが、歯医者=怖いというイメージの軽減に繋がると思っています。
やっぱり説明を聞くと安心できます。患者様との信頼感にも繋がりますね。
加藤:他にも治療とは関係がないような患者様とのコミュニケーションも大切にしています。たわいない普段の会話が治療のヒントになったり、今後のアドバイスに繋がったりすることもあるからです。コミュニケーションシートをスタッフ間で活用していて、引き継ぎがスムーズにできるような工夫も行っています。
「食べるを支える」かかりつけ医を目指して
加藤:歯は直接的な生死に関わることがないと思われがちですが、楽しく健康的な食事を続けていくためには重要な器官です。食事ができなくなると、それこそ命にも関わります。訪問診療と院内でできる診療、それぞれの良さを生かして地域の方々の「食べるを支える」かかりつけ医として、これからも頑張っていきたいです。
訪問診療と院内診療、そのどちらにも「困っている人を助けたい」「地域の方の健康を守りたい」という加藤先生の熱意が込められていました。歯は一生ものとも言われています。頼りになる歯医者さんのもと、皆さんも今一度ご自身の歯と向き合ってみませんか。