広島市中区千田町にお店を構え、『miji華bana(みじかばな) 』という名前で花の魅力を伝えてきた大西美穂さん。学生のときに好きな人に花をあげたことをきっかけに、花がツールとなって、さまざまな人たちとの出会いが広がったといいます。「身近に花を届けたい」そんな想いを大切にしている大西さんに、花への想いや魅力についてお尋ねしてきました。
花の道のスタート
16歳のときに花の道を選んだきっかけは何だったんでしょうか?
大西:もともと大好きな人に花をあげたことがあって、そのことが印象に残っていたんです。お花屋さんに入るときのドキドキ感とか、買うときのワクワク感とか、それがすごく楽しかったことを覚えています。
好きな人に花をあげるなんて素敵ですね。学生の頃から花に興味があったんですか?
大西:実は花屋になる夢なんか持ってなくて。でも花をあげたときの印象が強くて、それが大きなきっかけになっているのかもしれないです。あと、親と将来の話をしたときに花屋になるって言い切ってしまって。負けず嫌いなので、そこから毎日あらゆる花屋にバイト募集してないか電話しました。
大西:でもやっぱりバイトはなかなか雇ってもらえなくて。だけど一番最初に勤めたお花屋さんの社長が「お父さんとおいで」って言ってくれたんです。そこのお店に採用されて、何度か辞めたり戻ったりっていうのがあったけれど、10年近く勤めましたね。
でも戻ろうと思えたのは、やっぱりそのお店が好きだったり、花が好きだったりっていう想いがあったからですよね。
大西:そうですね。そこのお花屋さんって、15~16歳の早い段階で花を触らせてくれたんです。昔の時代は3~4年触らせてもらえないのが当たり前で。すぐ触らせてもらえたのが、他のお店とは違うんだなって少しずつ気付けて、いつの間にか10年近くいました。
本場フランスでのチャレンジ
初めてお勤めされたお花屋さんで10年近く続けられていたということは、花の道をもっと極めたいという思いがあったんですか。
大西:そんなことはなくって。長年勤務するとお花屋さんのことは分かってくるけど、次の夢が見つからないんです。花屋をずっとやってきているけど、何か大きなことや新しいことへのチャレンジが出来ていなかったから、達成感がなくなってきたんです。
大西:そうなんですよ、自分自身の中でジレンマが出来てしまって。その辺りから自分の性格上チャレンジしたことがないのはなんか悔しくて、このままでいいのかなって思ってたときに、たまたま同業者の仲間がフランスで取れる資格を教えてくれて勉強し始めました。
フランスで資格を…!フランスと日本の文化は違いますが、資格内容も違うんですか?
大西:全然違いますね。試験内容もだし指導の仕方、花との向き合い方も全然違いました。そんなときにいい先生に出会って、仲間たちとフランスでレッスンを受けたり、レッスンをしたりっていう生活を繰り返していました。
その先生からかなり影響を受けられたのですね。フランスでのレッスンの印象はどうでしたか?
大西:そうですね。広島でレッスンを少しづつしていたときは、お客さんの方が花のことを知っていたりとかいろいろありました。フランスに行って自分がいざレッスンを受けたり、生活をしてみると、「あれ?」って疑問に思ったんですよね。
大西:「あれ、自分のスタイルって何なんだろう?」って。フランスって花を持って歩いてる人もたくさんいたり、花屋さんもすごくいろんな種類のものが置いてあってそれが向こうでは普通の生活で。フランスに来て自分自身ももっと自由な発想でいいんじゃない?って思ったんです。ほんとスーパーマーケットでもディスプレイが全部かわいいんですよ。
確かに、日本ではあまり見かけないかもしれないですね。その時から「miji華bana」というお名前で活動されていたんですか?
世界観のある花屋「miji華bana」になったワケ
私ずっと気になっていたんですけど、miji華banaさんの名前の由来って・・・?
大西:お勤め時代の花屋さんのときに、お客さまから独立しないんですか?って聞かれることがあって。そうやって聞かれたときに、花を身近に届けたいんですよねって話をしていたんです。お花もそうなんだけど、華やかなものをお届けしたいねっていう会話から「華」の字を使ってmiji華banaにしたんです。
そうだったんですね~。「世界観のある花屋」っていうのは?
大西:世界観っていうのは、より人の強い感情を入れたものをつくりますよっていう想いでつけました。なんで花をあげたいのか、相手の情報をお話しして聞くようにするスタイルをとっています。でも結構お店を見て、「店内がmiji華banaさんの世界観で溢れていますね」ってよく言われるんだけど、本当はこっちの意味なんです。でももうどっちも素敵だからどっちに取ってもらってもいいんですけどね(笑)。
確かにそれがmiji華banaさんのオリジナリティになればどちらの意味でも素敵ですもんね。まさにこれがミジカバナスタイル!ですね。
お花と器を扱うオリジナリティあふれるお店
miji華banaっていうのは活動名で、お店の名前は『戸NONAKA』ですよね…?
大西:そうそう。扉の中に花も器も色んなものがありますよっていうので、『戸NONAKA(とのなか)』なんです。私がお店を始めたのは、器を売る友人がお店やりたいけど、一人でするのは大変だから半分ずつで一緒にやることになったんです。
だから器が置いてあるんですね!広島の作家さんですか?
大西:そうです。でも一緒にやっていた友人は事情があって辞めてしまったので、花屋さんが扱う器として私が提案してるんです。
でもそれって戸NONAKAさんならではの提案ですし、中々器と花屋さんが一緒ってないですよね。
大西:そう。お花にとって器は大切な存在ですし、だからこの場所にいる限りずっと続けたいなって思っています。
花と人とのつながり
「miji華bana」として活動されてきて、自分のプラスになったことはありますか?
大西:花をきっかけにいろんな人に出会えて繋がりが出来たことは自分にとって一番の財産ですね。どんなときも花がツールとなってくれて、人から人に自分の想いが伝わっているからここまで続けてこれたんだと思います。
いろんな人と出会えて、大切なツールとなっている花ですが、どんな想いで花といつも関わっているんですか?
大西:自分が花束をつくる前に、この花を育てた人たちがいるわけね。その責任としてこの花だったら持って帰りたいな~とかこれは飾りたいなって思ってもらえるようにいつも仕上げています。間に入った私たちは1日でも長くそばに置いておきたいものにするんだっていう想いはすごく大事にしています。
作り手さんからお客様に、お客様からも誰かに渡すから、花っていうツールで何人にもつながってて、本当にすごい存在だと気付かされます。もしよかったら花束つくってみてもいいですか…?
「苦しい時こそ一歩前へ」
若い時に決断してからここまで花のお仕事に携わってきて、逆に大変だったことはありましたか?
大西:つらいことはたくさんあるんですよ。どんなに頑張って自分でつくり出しても名の大きい人たちのまねたみたいに言われたりしたこともありました。そういう面では、自分を知ってもらうこと、発表の場を探すっていうことが大変でしたね。
大西:とにかくマルシェとかに出歩いてイベントに参加させてもらったりとか、遠くても足を運んでとにかくいろんなところに名前を売りに行ったことが一番大変でした。だけど、その中についてきてくれるお客様が少しずつ増えていく繋がりを着実に感じてました。それが楽しさを与えてくれました。
たしかに、知ってもらうためにはいろんな場所に出向くことが大切ですよね。
大西:苦しい時こそ一歩前へ!という言葉を胸に大変なことは乗り越えてきました。
広島での活動「みんなで繋ぐ花輪TSUNAGU HANAプロジェクト」
今までに花屋さん以外にも空間プロデュースなど、いろいろな活動をされてきていますが、その中でも参加型の献花活動が印象に残っています。この活動はどういう想いでやっていらっしゃるのですか?
大西:いろんなチャリティのイベントに参加したときに、最初はフラワーアクセサリーを売ってその一部を寄付してたんだけど、でもなんか違うなって思って。物を売る努力は日々してるから、自分の中でチャリティと結びつかなかったんですよ。広島に生まれ育って、花屋として、人と人、思いと思いを繋ぐことを広島から発信できるように、これは形を変えなきゃと思ったんです。
大西:そうそう。花を繋げることは単純な行為だけど、一瞬でもみんなで平和を願えるきっかけづくりになればいいなと思って毎年やってます。そうすれば、意識改革にもなるし、1つのことをみんなでやるってことが大切だと思うんです。
広島にいても自ら平和活動に参加する人って中々いないし、どんどん継承できる人たちが少なくなってきていますもんね。平和活動がお花からだと子どもたちも参加しやすいかも。
大西:継承しないといけないこともあるんだけど、つらい、怖いだけではなくて。戦争を知らない子たちもきれいな花を手向けて、平和公園で花を繋ぐことが平和活動の1つになればいいと思ってるんです。各々の平和活動のきっかけが花だったら優しく出来るのかなって思ってこの活動を続けています。
贈り物にはこだわりを
最後に、花を通してこの場所から伝えたいことはありますか?
大西:ここにきて実際にお店の空間を感じてもらいたいです。自分たちの生活に花や植物を取り入れたりとか、誰かにお花を贈るときには花選びの時間を大切にしてもらいたいですね。一人ひとりに、心に残るお花をお届けします。それが私がここでできる1番のことなのかなと思います。
お花愛に満ち溢れている大西さん。16歳で決断し選んだ道を突き進んだからこそ、お花に対する想いは誰よりも濃いものだと感じました。ここに来れば、ゆったりお話ししながら、自分らしい花と出合える。そんな素敵なお店にぜひ足を運んでみてくださいね。