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素材としての魅力を伝え続けたい 。杉足場板のアップサイクルでハッピーな未来をつくる

元々は建設現場の仮設の作業床にすぎなかった素材、杉足場板。その魅力にいち早く気づき、エクステリアやインテリアにリユースして普及させたのが『WOODPRO』の中本敬章社長です。ネット通販のほかショールームを兼ねたショップでの販売、蚤の市等のイベント参加など、杉足場板の可能性を信じて幅広く活動しています。中本さんに、杉足場板の魅力や同社が取り組むアップサイクル事業についてお聞きしました。

杉足場板でつくられたテーブル。傷や釘穴こそが魅力になる。

“嵐を呼ぶ男”、マイナスからの出発

大学卒業後すぐに、ご親族が経営されている住建産業(現ウッドワン)に就職されたのですね。そちらではどんなお仕事を?
中本:ずっと営業をやらせてもらいました。30歳まで北関東地区の営業所にいて、それから廿日市市の本社に戻って営業本部で営業支援を担うかたわら、商品企画やシステム開発にも関わらせてもらいました。
その後、現在のWOODPROに移られたのですね。
中本:WOODPROは、昭和62年に親父がつくった会社なんです。ちょうどいろんなタイミングが重なったんだけども、その会社がいろいろと大変なことになっていて、放っておけなくなってしまったんですよ。そのうえ、僕が行って3週間後に台風で被災して、会社所有の工場が水没しちゃって、そりゃあもう、大変なことに。
えっ!?
中本:宮崎県の河川敷みたいなところに7,000坪の土地と工場を持っていて、そこを中心に事業を展開していたんですけど、その工場が水に浸かっちゃったんです。それが入社直後のことでね。「お前は嵐を呼ぶ男だ」って、冗談じゃなく言われちゃいましたけど(笑)。
行っていきなりだったんですね。その後はどんな状況だったんですか?
中本:それから1年間はずっと事業整理です。債務超過になって、信用不安がおこって…。まあ、いわゆるマイナスからのスタートです。4、50人いた従業員も8人まで減らして。時が経つにつれてこれは腹据えてやるしかないな、と。もう失うものは何もないという状態でしたから。
事業整理はどのように進めたのですか?
中本:当時、焼杉板をつくったり、輸入フローリングを販売したり、いわゆる建材メーカーとしていろんな事業展開をしていたんですが、将来性とかを考えつつ整理して、残ったのが杉足場板だけでした。
杉足場板だけが残るって、なんだか運命を感じますね。
中本:それで、ウッドワン時代のつてなどを利用して、関東地区で杉足場板の販売網を拡げたり、地元の取引先と競合するリース事業からは撤退して、逆に競合先とパートナーを結ぶなど、180度転換するくらいの勢いで事業内容も徹底的に変えていきました。
かなり思い切った改革ですね。
中本:「この延長線上に絶対ハッピーはないだろう」というところからのスタートでしたから、変えざるを得なかったんです。やりたいようにやらせてもらいました。
広島市西区商工センターにあるショールームでは、杉足場板をアップサイクルした商品が並ぶ。

杉足場板でエクステリアを、販路にネット通販を

その時点はまだ杉足場板は、建設現場で使われる通常の杉足場板としての用途で事業を展開されていたんですよね。
中本:そうですね。ただ僕はウッドワン時代からデッキとかフェンスとかプランターとか、木材のエクステリアをやりたいというアイデアはずっと持っていて。
その素材に杉足場板は使えないかと?
中本:杉足場板ってたくさん不良材が出るんですよ。そうした不良材は燃やして処分するしかなかったんですが、それを見た親父がいつも「もったいない! なんとか使えんのか!」と口ぐせのように言っていたのがヒントになって、その不良材を原材料にしてエクステリアをつくれないかと考えたんです。
なるほど。
「このOLD ASHIBAのラックは用途が多くて、今、ショップで定番の人気商品なんです」と中本さん。
中本:ちょうど事業整理がほぼ終わったタイミングで、ウッドワン時代に共に本部で働いていた栗栖という男が、会社を辞めて、ふらっとうちの会社を訪ねてきたんですよ。杉足場板を使って本棚をつくろうと思ったようで、僕も暇だったんで一緒にサンダー掛けをしながらいろいろ話しているうちに…。
さりげなく誘ったわけですね(笑)。今、御社で常務取締役を務める栗栖一治さんのことですよね。
中本:そう。一緒に板を磨きながら「これからどうするんだ」と。「俺と一緒にやるか?」って誘って。で、ウッドプロダクツ事業部を立ち上げたんです。
それはいつぐらいのことですか?
中本:1998年ですね。二人でウッドフェンスやプランターなどを色々試作してね。市場を見てみると、僕らがつくったようなレベルの物が、結構いい値段で売られてたんですよ。それでちょっと勇気をもらって(笑)。
これならいけるんじゃないかと?
中本:いろんなものをつくって、それをローラー作戦だって言って、地元のエクステリア会社や園芸ショップ、ホームセンターとかに営業をかけたんですけど、なかなか思うような販路は開拓できなくて。それで消去法的に残ったのがネット通販だったんです。
ウッドワン時代に栗栖さん(写真左)とシリコンバレーを視察したときの思い出の一枚。
ちょうどショッピングモールサイトが出始めた頃ですね。
中本:そう。実はウッドワン時代にシリコンバレーやラスベガスのIT系の見本市にも行かせてもらってて、日本にもそろそろインターネットの時代が来るなって予感がしてたんですよ。そのタイミングで、1999年の暮れだったかな、あの楽天の三木谷さんが広島に来たんです。
え!? ふらっと来られたんですか?
中本:いやいや(笑)。講演みたいな形で営業に来られたんですよ。要は出展者を募るみたいなね。まだ楽天市場が1,000社もいってなかった時代ですよ。12月に講演を聞いて、「これだ!」ってすぐ申し込んで、翌年の4月3日に楽天市場にショップサイトをオープンしました。
で、どうだったですか?
中本:まったく売れない(笑)。まあ、そりゃそうなんですよ。ただ自分たちの想いだけ書き綴ったテキストだらけのページでね。「誰がそんなとこで買うか!」みたいなサイトでした。
そのサイト、見てみたいです(笑)。
ネット通販している杉足場板の家具は、2階のショールームで体感できます。
中本:いやいや、お恥ずかしい。でも当時、ネット通販の世界にはチャレンジャーがいっぱいいてね。ネット通販を学ぶ楽天大学ができて、全国に一緒に学ぶ仲間がたくさんできたんです。ネット通販でどうやって自社製品の良さを伝えるのかとかジャンルに関係なくみんなで議論して、それを持ち帰って対策する。そうやって切磋琢磨してましたね。
いいですね、そういうのって。
中本:今でも彼らとは付き合いがありますよ。まあ2003年くらいからネット通販も、「上りのエスカレーターだ」っていわれるほど売れるようになって。そしたら途端に大手がどんどん入ってきて、一気に淘汰されて。結局ネットもリアルも一緒だねって話ですよね。
それはどういうところが?
中本:一本立てられるものがないと、事業の継続は難しいっていう結論。だからネットもリアルも、どれだけとんがれるか、そのお店で買わなければいけない理由は何なのか、というところを追求していくことが大事だなと思うんです。
「素材としての杉足場板の魅力を引き出す工夫を重ねています」と中本さん。

古材としての杉足場板の価値に気づく

三木谷さんとの出会いも、ネット通販への入り口だったという意味で一つの転機だったと思うんですけど。もう一つ、広島で『Hand-Me-Down(ハンドミーダウン)』というアパレル販売や店舗デザインなどをされている、木下敬文さんとの出会いも大きかったんじゃないでしょうか。
中本:そうですね。彼は当時、自分のお店で使う什器やオリジナル家具の素材として杉足場板を使ってくれてたんだけど、それがすごい素敵で。衝撃だったんですよ、ボロクタの杉足場板がああいう空間で使えるんだって。
使い古しの杉足場板の魅力に気づいた瞬間!
中本:使い古した感がデザインなんだ、っていうことに彼が気付かせてくれたんですね。で、使い勝手のいい素材として工場で再生させ、古材としてネット通販でも売るようになったんです。やっぱり感度のいい人は検索でうちに辿り着いて、結構買ってくれましたね。
古材とかが好きな方って、いろんな手を使って探してますもんね。
中本:個人だけでなく、例えば大手のインテリアメーカーからもOEMや下請けの提案とか来るようになって。要は「うちのデザインで杉足場板の家具をつくってみないか」という話ですけど。
それは中本さんとしてはどうだったんですか?
中本:僕の師匠でもあるウッドワンの故会長に、下請けは絶対やるなって言われてたんです。自分で市場をつくれって。大変だけどメーカーの醍醐味はそれだよって。
なるほど。
中本:だからやりませんでした。会長に価格のプライシングの仕方だったり、市場の一歩先を見てどう動く、とか叩きこまれてましたから。今思うと、それを実践する場としてWOODPROの規模感は最適でしたね。
これまでのお話を聞いていると、マイナスからの出発だったにも関わらず、中本さんはずっとポジティブに攻めてきた印象があります。そのエネルギーというかパッションはどこから?
中本:なんとかなってきた人生だからなんとかなると思う、そういう性格なんですよ。僕、運がいいんです。
すごいことやってきた人って、みんな自分のことを運がいいって言うんです(笑)。
中本:そうですか(笑)。あと鈍感ですよ。鈍いから、いいとこしか見てない。そういう意味では脇を固めてくれるスタッフがいないと僕は無理です。
それでいうと、栗栖さんとか? 栗栖さんと中本さんの性格って似てらっしゃるんですか?
中本:全然違う。プライベートでは全く付き合わないです(笑)。でもビジネスパートナーとしては最高。僕に思いっきり言いたいこと言ってくれる。NG出してくれるスタッフって、なかなかいないですからね。
役目を終えた杉足場板が集まる「廃材の森」。

杉足場板の寿命に立ち会う

最近になってSDGsとかサスティナブルとかいう言葉が日常的に使われるようになりましたけど、WOODPROさんは20年以上も前からアップサイクル事業(元の製品よりも価値の高いモノを生み出す)に取り組んでいらっしゃるんですよね。クチコミで聞いたんですが、最近はさらに面白い試みをされているとか?
中本:3年前から「廃材をおもしろく利用する会」っていうのを秘密裏にやってるんですよ。これはWOODPROがリユースすることを放棄した使い古した杉足場板の使い方をみんなで一緒に考えようというコミュニティで、併せて「廃材の森」という場を資材置場の片隅で展開しています。
会員制ですが、現在5,000人以上の人が登録してくれています。
5,000人以上! すごいですね。アップサイクルをしたいという企業は多いと思いますけど、実際はなかなか難しいと聞きます。それをWOODPROさんはうまく機能させているのがすごいなと。
中本:本来なら使い古した杉足場板は産業廃棄物になって、処分するとトラック1台分で15、6万はかかるんです。でもそれをうちに持ってきたら逆に買い取ってもらえるんです。そりゃ、そのほうが嬉しいでしょ? みんなにメリットがあるからうまくいっているんです。
持ち込まれた杉足場板はどのようにアップサイクルされるんですか?
中本:内訳でいうと、運び込まれた杉足場板の3分の1は家具やインテリア商品に、そしてもう3分の1は床とか壁板といった建材として生まれ変わります。そのどちらにも利用できない残りの3分の1が廃棄になるんです。ウッドワンがバイオマス燃料工場を持っていて、電気をつくる工場なんだけど、そこに持ち込むと少額ですが燃料として買い取ってくれるんですよ。
それは大きいですね。
中本:そうなんです。受け皿としてのバイオマス燃料工場があるから、胸をはって業者さんに「全部うちに持ってきて」って頼めるんです。
中本さんがウッドワン時代からWOODPROで経験したことまで、ぎゅっと凝縮されて、今があるという感じですね。
中本:同じようなことをやる人が出るかなと思ったけど、いなかったですね。というよりできないのかもしれない。
ゼロからこの仕組みを考えてやりましょうって、できるものではないですよね。
中本:5年後も10年後もこの延長線上で食っていける仕組みを考える、そうやってつくってきた仕組みですからね。ちゃんとブランディングしながら商品価値を伝えて事業継続させるっていう、それをこれからも続けていかないとですよね。
若いクリエイターたちの交流スペース『レインボー倉庫』。

次世代の若者を育てるという使命

近くに『レインボー倉庫広島』というのもありますけど、あれも杉足場板を違う形で使ってもらうためにつくった場所ですか?
中本:いや、あれは地元の若い子たち、つまり次の世代を育てないといけないという意識から立ち上げた事業です。結果的にそれが、我々の事業に幅をもたせることにつながっていきますしね。
実際、レインボー倉庫はどんな風に利用されているんですか?
中本:カフェもありますし、1階はシェアスペース形式で個人、法人問わず施設を利用することができます。現在はハンドメイド作家がアトリエとして創作活動の傍ら、雑貨・アクセサリーを販売したり、デザイナーや映像クリエイターがオフィスとして利用しています。
1階のカフェでくつろぐ編集部員。女子トークで盛り上がりました!
若手クリエイターにとってはありがたい場所ですね。
中本:人と人が出会うことによってつながりが生まれ、そこから仕事が生まれる、そういうベースをつくっておきたいんです。絡み合うことによってお互いが成長していく、そのための場をつくるのが今の僕の使命かと。
レインボー倉庫内で化学反応が起きることを期待しているわけですね。
中本:どんなものが生まれてくるか分からないけど、実際、当初の目的から使い方も変わってきているところもあるし、今回の新型コロナの影響でまた変わらざるを得ないということもある。そういう風にもまれながらも継続していくことによって何かが生まれると、そこに期待しています。

杉足場板を使ったインテリア家具のショールームも兼ねている、広島市西区商工センターの『WOODPRO SHOP/BASE』。実際に家具の使い心地を体感できるほか、味わいのある古材の杉足場板やDIY グッズがたくさん揃っています。最近は、自宅をDIYでリノベーションする人も増えているとか。あなたも杉足場板でお部屋をプチリノベしてみてはいかがですか?

株式会社WOODPRO 代表取締役社長

中本 敬章さん

自称「杉足場板の伝道師」。ネット通販5店舗と実店舗『WOODPRO SHOP/BASE』で、杉足場板をリユースした各種オリジナル商品を企画・販売。その他、若手クリエイター育成の場『レインボー倉庫広島』、『廃材をおもしろく利用する会』や『廃材の森』など、杉足場板を起点に様々な事業を展開している。

WOODPRO SHOP/BASE

広島市西区商工センター2-7-21

TEL.082-961-3451

OPEN.11:00〜18:00

定休.毎週木曜日・金曜日

アクセス
広島CLiP新聞編集部(CLiP HIROSHIMA)から車で約20分

レインボー倉庫広島

広島市西区商工センター2-8-29

TEL.082-208-3850

OPEN.11:00〜18:00

定休.なし ※臨時休業あり(年末年始・悪天候等)

アクセス
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