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木工職人たちが発信する「木工のまち」はつかいちの魅力

けん玉発祥の地として国内外に知られる廿日市市。江戸時代後期に誕生したとされる宮島細工をルーツに、さまざまな木工品の製造が行われてきました。「木工のまち」としてその文化と技術を広く伝えていくため、2017年に立ち上がったのが「はつかいち木工研究会」です。ものづくりへの想いや研究会の活動ついて、はつかいち木工研究会の会長である常藤家具製作所の鈴木徳俊さんと、廿日市市しごと共創センターの永谷早登さんに話を聞きました。

木工のまち、はつかいち

廿日市市というと、けん玉はもちろん木材港など、木とのつながりが深い街という印象があります。
鈴木:そうですね。廿日市市の木工について歴史をたどると、宮島にルーツがあるんじゃないかと言われています。江戸時代末期ごろ、嚴島神社参詣者へのみやげ物として杓子がつくられたのが始まりだそうです。以降、宮島ろくろや宮島彫り、角盆などがつくられ、それらは総称して宮島細工と呼ばれています。
木目の風合いが生きた宮島細工。繊細な彫りが施されているものも
宮島細工は宮島島内だけでつくられていたんですか?
鈴木:宮島細工の技術は、島内だけではなく対岸の廿日市市周辺にも伝わって、広く木工製品がつくられるようになりました。だからこの辺りには、現在でも木工製品の製造に関わる職人が多いんですよ。
はつかいち木工研究会会長の『常藤家具製作所』鈴木徳俊さん。
そうなんですね。じゃあもしかして、けん玉もその流れから生まれたものですか?
永谷:高い木工技術を生かして、大正時代には日本で初めてけん玉の量産化が実現しました。廿日市市がけん玉発祥の地として知られているのは、それが理由なんです。
今ではけん玉のワールドカップも廿日市市で開催されていますし、けん玉文化は日本だけじゃなく世界にまで広がっていますよね!
永谷:けん玉の高い人気をはじめ、確かな木工技術がこの街に根付いていることを多くの人に知ってもらい、伝えていくことと同時に、市としても「木工のまち」としてのイメージをより高めていこうという考えから、2017年に結成したのがはつかいち木工研究会なんです。
研究会の発足に携わり、現在もともに活動する、廿日市市しごと共創センターの永谷早登さん。

チームで技術と文化を伝えていく

研究会にはどんな方が所属していらっしゃるのですか?
永谷:鈴木会長の『常藤家具製作所』をはじめ、『木工房三浦』、『WOODY』、『益田畳店』、『しみず木工所』、『岩井家具工房』、『倉本杓子工場』、河野令二さん、『Tree』の9つの事業者さんです。地域には木工に携わる業者さんが多くいらっしゃるけど、小規模でされている方がほとんど。それで「木工のまち」をテーマにチームを組んで、オール廿日市でそれまでにやったことのないものに挑戦していこうと立ち上がりました。
立ち上がる前は、お互いにつながりはなかったんですか?
鈴木:職人の世界なので業者間で技術を教え合うことはなく、それぞれでものづくりをしている状況でした。今回研究会としてネットワークをつくることで、木工の技術と文化を伝えていくことはもちろん、新しい挑戦をしていきたいという想いを共有してスタートしたんですよ。
職人の熟練の技が光るカンナがけ。
永谷:1社ではできないことも、チームになればできることが増えますよね。また、地元の木工業者が地元の木材を使って製品にする、川上から川下への流れを大切にしたものづくりもポイントです。
鈴木:廿日市市周辺には昔はトチの木が多く植わっていたんですが、戦後にはほぼ切り出してしまって、今はほとんど残っていないんです。戦後スギやヒノキが植えられ、順調に成長して切り出せる時期になると、今度は外材が豊富に入ってくるようになりました。現在では廿日市市周辺で製品をつくれるほど大きな木がとれるのは間伐材くらいで、地元で育った木というのは貴重な存在になっています。
永谷:市産材を供給するための基盤も整えながら、結成から現在までチームでできるものづくりや活動にさまざまチャレンジしているところです。
常藤家具製作所の鈴木徳俊さん・辰徳さん親子。テーブルをはじめ木工家具を製作する。

多角的な視野で取り組むものづくり

これまでの活動では、どんなことをしてきましたか?
鈴木:研究会のメンバーは同じ木工業者だけど、製作しているものはそれぞれです。テーブルをつくる人がいれば、杓子みたいな小木工製品をつくる人もいる。小売りの経験がある人もいれば、製造を追求してきた人もいる。さまざまな経験を持つメンバーが一つになって、まずは展示会やマルシェなどに出店し、お客さんにどのような商品を届けられるのかを毎回勉強しているところです。
はつかいち木工研究会メンバーの一部。左から『岩井家具工房』岩井浩二さん、『常藤家具製作所』鈴木徳俊さん、『木工房三浦』三浦孝治さん、河野令二さん、『廿日市市しごと共創センター』永谷早登さん。
永谷:期間限定なのか、常設なのかによっても変わってきます。宮島口にある「はつこいマーケット」では常設で研究会メンバーの商品を販売していますが、ここだと観光客向けという目線も持たなければいけないですしね。
鈴木:展示ごとに客層が変わればニーズも変わり、県外のクラフトイベントでは全国からのお客さまともコミュニケーションを取りながら販売します。以前は職人目線でのものづくりが主だったメンバーも多いので、そうした経験はその後の製作や活動にも生きていますね。
2019年、『CLiP HIROSHIMA』で開催した展示会「はつかいちの小木工」の様子。

地元で育った木でつくる木工品

確かに、視野が広がるとものづくりに生かされることもきっと増えますよね。地元の廿日市市で行う活動にも、それまでとの変化などはありましたか?
永谷:廿日市市に暮らす人に地元で育った木の魅力を知ってもらいたいという想いから、研究会ではヒノキで積み木をつくって地域の保育園や幼稚園に届けています。子どもたちに積み木で遊んでもらうことで、市産材や木工のまちの魅力を伝えていく「木育」への取り組みも行っています。
鈴木:ほかには、廿日市市内にある広島トヨペット廿日市店さんのホビールームに研究会でつくった木のテーブルや椅子を置いています。今後は市内の公共施設に研究会で製作した木のベンチを置こうと準備してるんですよ。こうした活動はチームだからこそできることだと考えています。
『広島トヨペット廿日市店』ホビールームに置かれている、はつかいち木工研究会制作のテーブルや椅子。
永谷:メンバーがそれぞれの技術や経験、アイデアを出しながら、地元の木でつくる作品を形にしています。木工技術が廿日市市に根付いていること、地産地消で素晴らしい木工製品が生まれているということを、研究会の活動を通して県内外に広く伝えていきたいですね。

長く地域に伝わってきた木工文化。ひたむきに木と向き合い、時間をかけて磨いてきた木工業者たちの確かな技術から生まれる品は、どれも温かみがあり、その繊細さもまた魅力です。はつかいち木工研究会の手掛けるアイテムを通じて、これからも廿日市市で、そして県内外へと「木工のまち」の魅力を発信していきます。

はつかいち木工研究会

「木工のまち」廿日市市の文化と技術を広く伝えていくため、2017年に発足。廿日市市内の木工業者をメンバーに、さまざまな木工製品の製作や販売、市産材による木工製品の認知を高める活動を行う。

廿日市市しごと共創センター

廿日市市下平良1丁目1−4

TEL.0829-30-8405

OPEN.8:30~17:15

定休.土・日・祝日・振替休日・年末年始をのぞく

アクセス
広島CLiP新聞編集部(CLiP HIROSHIMA)から車で約40分