
『ギター・ベース工房 Parrot Green(パロットグリーン)』は、ギターなど弦楽器の修理やオーダーギター製作を行う小さな工房。三次市東酒屋町の住宅地の一角で、中四国では数少ないギター工房として、多くの演奏家や愛好家から「ギターの駆け込み寺」として親しまれています。
職人が作る繊細な音色に魅了されて

樋原さんがギターにのめり込んだのは高校生の頃。趣味でバンドを組んでいた友人たちと路上ライブをしていた時期に、友人から聴かせてもらった一枚のCDがきっかけでした。
押尾コータローさんが使用するギターを手がけた職人の存在を知り、話を聞くうちに「どうしても会いたい」という思いが募った樋原さん。高校生だった当時、フェリーに一人で乗り込み、その職人の工房を直接訪ねたといいます。
この出会いをきっかけに、樋原さんはものづくりの道へ。19歳で名古屋の工房兼学校に入りギター製作の基礎を学んだ後、実家の仕事を手伝いながら職人として活動を開始。口コミで評判が広がり、少しずつ顧客を増やしていきました。

フルオーダーからカスタム、リペアまで。演奏家が頼る「ギターの駆け込み寺」
「『こんなことできますか?』と、他店では断られてしまうような依頼にも、できる限り応えたいと思っています」と話す樋原さん。
例えば、「憧れのアーティストと同じ仕様のギターを作ってほしい」というフルオーダーや、廃盤となったモデルを「一枚の古い写真だけを頼りに再現してほしい」という依頼など、その内容はさまざまです。

ギターの音を大きく左右する“核心”は設計にあると話す樋原さん。理想の音を追求するため、材料となる木材の板厚をコンマ数ミリ単位で調整するなど、細かな試行錯誤を重ねています。



塗装にもこだわりがあり、乾燥に時間のかかるニトロセルロースラッカーを使用。なんと16回以上も重ね塗りを繰り返すため、塗装だけで最大2か月を要することもあるといいます。

依頼を受けると、まず行うのがヒアリングです。1〜2時間ほどかけて、楽器のことだけでなく趣味の話も交えながらじっくりと対話を重ねるのが、樋原さんのスタイル。楽器への思いやこれまでの経験、知識、さらには好きな音楽ジャンルやアーティストまで、一人ひとりの人柄を知ることを大切にしています。
リペアやカスタムは内容によって費用が異なりますが、フルオーダーは基本27万5,000円から。大手メーカーと比べて手の届きやすい価格設定も、多くの依頼が寄せられる理由の一つです。広島市内はもちろん県外からの依頼も多く、楽器が郵送で送られてくるケースも。その評判から、修理や製作の依頼は数か月から1年待ちになることもあるそうです。

「音楽の入り口を広げたい」次世代へつなぐ活動
工房の隣では、初心者向けのギター教室も開いています。教室には小学生から大人まで幅広い年代が通い、一人ひとりのレベルに合わせた指導はもちろん、楽器選びのアドバイスまで行い、「挫折せずに続けられる環境づくり」を大切にしているそうです。
また、地域のイベントではワークショップも積極的に開催。ギターを弾いたことがないお子様でも楽器や音の楽しさを体験できる内容となっており、音楽やものづくりに興味を持つきっかけづくりにも力を注いでいます。

工房での製作や修理の依頼が絶えない中でも、ギター教室やワークショップを続ける理由。それは、「音楽の入り口を広げたい」という思いがあるから。
憧れの音に魅せられ、高校生でギター職人の世界へ飛び込んだ樋原さん。今では修理やオーダー製作を手がける一方で、音楽の楽しさを次の世代へつないでいます。
ギターのことで困ったときはもちろん、「これから始めてみたい」という方も、ぜひ一度『ギター・ベース工房 Parrot Green』を訪ねてみてはいかがでしょうか。