呉市かまがり天体観測館は、1989年に開館した一般向けの公開天文台です。毎週土曜日の定例観望会のほか、流星群・お月見・惑星観察など天体の動きに合わせたイベントを年6回ほど開催しています。
また天文専門家が常駐しており、昼間でも太陽観察や宇宙・天文の話、望遠鏡の使い方や天体に関する質問を受け入れています。
館長の山根弘也さんを尋ね、施設の魅力や2024年の天体イベントについて取材しました。
美しい浜に隣接する島の天文台
広島市内から車で約90分。安芸灘大橋を渡り2つ目の島が上蒲刈島です。呉市かまがり天体観測館は日本の渚百選にも選ばれたビーチ「県民の浜」の敷地内に位置しています。
天体観測に向いているのは、暗くて街明かりがなく晴れた日が多い場所。こちらは市街地からさほど遠くない場所にありますが、どちらの条件も満たしているため観測に適しているのだそう。
設備は口径42センチのマクストフ式望遠鏡(※)をはじめ、大型の望遠鏡が3台と、移動式の望遠鏡や双眼鏡など。通常は施設の屋上デッキで観望会などを開催しています。
(※)マクストフ式望遠鏡…レンズと鏡を両方使用した望遠鏡。マクストフ式望遠鏡では国内最大級。
初心者も大歓迎!天体観望会
呉市かまがり天体観測館では毎週土曜日19:30〜21:00に定例観望会を開催しています。
館長の山根さんとボランティアの方で運営しており、自分の星座早見盤や望遠鏡を持参して使い方を教えてもらうこともできます。
「定例観望会は気軽に参加できるのが特徴です。その日見えるものを時間が許す限り見てもらう、ということを考えています」と山根さんは話します。
星空観察中は空を見ながら解説を行い、お客様からの質問にも積極的に答えています。
特に夏休み中は、自由研究や宿題・買ってもらったばかりの望遠鏡を持った小学生が連日訪れるそう。「宇宙のことで困ったことがあれば、ここに来れば大丈夫という場所にしたい」と力強くお話してくださいました。
取材時はお昼でしたが、広島CLiP新聞編集部員も大型の双眼鏡を使わせてもらうことに。島々の細部や対岸の四国まで鮮明に見ることができて驚きました!
定例観望会では大型の望遠鏡を使って、惑星や星団・星雲などの観察ができます。広島市内より暗いので、肉眼でも様々な観察が可能です。
最も人気なイベントは流星群の観望会。過去には隣接する「県民の浜」でビニールシートをひいて、砂浜で寝っ転がりながら行ったこともあるそうです。
定例観望会に加えて、時節や天体現象に合わせたイベントも開催しています。
要チェック!注目の天体イベント
山根さんは「ひとりでも多くの人に星に触れ合ってもらえたら」と、一般の方向けのイベントも精力的に開催されています。2024年春以降の大きな天体イベントを教えてもらいました。
●紫金山・アトラス彗星(10月〜11月初旬頃)
肉眼で観測できる明るさの彗星が地球に接近すること自体珍しいのですが、なんとこのアトラス彗星は一等星以上の「大彗星」になる可能性があります。ただ、彗星は太陽に近づく過程で消失する可能性もありますので、日本で見えることを祈りましょう。
●みずがめ座η(エータ)流星群(5月初旬)
出現数はそう多くありませんが、5月初旬は月明かりの影響がほとんどなく普段よりは流れ星が見えやすいという予想。観察するなら、夜明け2時間前がおすすめ。
●土星(2025年3月下旬/5月初旬)
年明け後の2025年には、土星の輪が見えなくなるイベントが2回起きます。約15年に1度の頻度で起こるそうで、太陽の光が真横に当たったり、土星と地球が真横に並んだりすることで発生します。
今後も上記の動きに合わせてイベントを開催する可能性があるとのこと。イベント情報は館のHPや呉市の市政だよりで発信しているため、ぜひチェックしてみてください。
この夏は少し足を伸ばして、天体観測に出かけてみませんか?本格的な望遠鏡を使って専門員さんのお話を聴きながら見る夜空は、きっと新しい世界が広がっているはずです。
星写真の提供:呉市かまがり天体観測館