府中町の特産品、「白そば」をご存じでしょうか。江戸時代からその歴史が始まったとされており、一度は途絶えたものの、なんと平成に入ってからふるさと伝統の味として復活したといいます。
現在、その白そばをつくっている製麺所は府中町内に一軒のみ。製造する『濵田製麺』を訪ね、代表の濵田将志さんに話を聞きました。
府中町の特産品を守りたい
濵田:江戸時代の「芸備名取合」という書物に、府中町には「白そば」という有名な食べ物があったと記されているそうです。ただどこかのタイミングで白そばの文化がなくなってしまい、長く途絶えていました。平成に入ってから地元の方々が府中町の歴史ある味わいを復活させようと取り組まれて、平成3年から特産品としてつくられるようになったと聞いています。
濵田製麺さんはその取り組みに関わられていたんでしょうか?
濵田:濵田製麺の前身は「木田製麺」という製麺所です。木田製麺が白そばの復活に取り組み、製造するようになったんですよ。木田さんが製麺所を閉めることになった際、僕自身が府中町出身で町の特産品を守りたいという気持ちがあったので、製麺所を受け継ぐことになりました。それと同時に白そばのレシピを受け継ぎ、今つくっている形になります。
程よいコシと喉越しの良さを堪能
濵田:一番の特徴は、名前の通り麺の色の白さです。殻を完全に取り除いて実の部分だけを挽いたそば粉を使うので、この白さになります。
一般的なそばと比べると、分かりやすく見た目が白いですね。
濵田:江戸時代に、石臼の軸へ一文銭を入れて臼の間をあけてそばの実を挽いたことで実と殻が分かれ、その実だけを挽いたことから白そばが生まれたのではないかとされているんですよ。
濵田:殻を取り除いている分、雑味は少ないですがそば特有の風味も少なくなります。ブツブツと切れるような食感がなく、程よくコシがあり喉越しの良さを楽しめるそばです。
レシピは木田製麺さんから受け継いだものを変えずにつくられていますか?
濵田:はい、受け継いだレシピを大切にしています。試行錯誤しながらいろいろと試してみたこともあるのですが、白そばは特産品なのであまりに大きく変えてしまうのは違うなと感じ、現在は基本のレシピでつくっています。
白そばをつくり続けていくことの責任
濵田:基本的には今まで続けてきたことを、これからも変わらずにずっと継続していくことを大事にしたいです。白そばは地域の方から愛されていますし、「これがないとね」と言ってお店に食べに来てくださる方や買いに来てくださる方の期待にも応えたい。白そばの製法自体は濵田製麺にしかないので、だからこそつくり続けていくことの責任感やモチベーションにつながっています。
長い歴史のあるものだから、守り続けることはやはり大切ですね。
濵田:そうですね。ただ一方で、府中町の特産品である白そばを多くの人に知ってもらいたい気持ちもあります。守ることを大切にしながらも、やはり変えていくことが大事な面もあると思うので、それは製造以外の部分でさまざまにチャレンジしながら、白そばの魅力を町外の方にも広く伝えられるようにしていきたいです。
この白そばをつくっているのは『濵田製麺』のみ。日々真摯にそばをつくり、提供している濵田さんの思いに触れながら、府中町の特産品「白そば」をぜひ味わってみてください。
▼取材後記▼
白そばのほかに中華麺も製造している濵田製麺。取材後には、麺好きの編集部員が白そばや中華麺を購入して帰りました。
後日、中華麺と付属のスープを使ってつけ麺にアレンジ!自宅で味わう際には、お好みの味わい方で楽しむのも良いですね。