好きが高じて唐辛子やハーブ類を家庭菜園で育て始め、今では農家として独立し生で食べる唐辛子のおいしさを広めたいと日々栽培に励む『すずきエスニックファーム』代表・鈴木隆之さん。生食の魅力や栽培の方法、工夫について教えてもらいました。
全国的にも珍しい、スパイス・ハーブ専門農園
スパイス・ハーブ専門の農園は珍しいですが、始めたきっかけは？
鈴木：元々、唐辛子やハーブが食べ物として好きでした。好きが高じて家庭菜園で育てていたのですが、料理をするときに自分が育てた生の唐辛子を入れてみると、すごくおいしかったんですよ。唐辛子は乾燥のものが市販されていることが多いので、生のおいしさをみんなに知ってもらいたいと農家になりました。
農家の前はサラリーマンだったそうですね。
鈴木：定年まで残り20年くらいになった頃、これからの働き方を改めて考えました。廿日市市が主催する創業塾で好きなことを仕事にしている講師の話を聞き、自分も好きなものを追求しようと考えて唐辛子やハーブにたどり着きました。最初はサラリーマンとの兼業農家として栽培していましたが、その際の初収穫を目の前で買ってもらった感動が、兼業から専業になることを考えるきっかけになりました。
11種類もの唐辛子を栽培中
農園では何を栽培していますか？
鈴木：今年は唐辛子を11種類ほど栽培しています。品種でいうと、鷹の爪やホットパラソル、プリッキーヌチンダー、プリッキーヌスワン、ハラペーニョ、タバスコ、ハバネロ、島唐辛子、韓国唐辛子、黄色唐辛子、ジョロキュアです。ハーブ類だとパクチーとスイートバジルを育てています。
唐辛子だけでそんなに！ 栽培方法に何か特徴はありますか？
鈴木：農薬を使わないことです。唐辛子やハーブはそもそも虫がつきにくくて農薬をあまり必要としないので、農薬に頼らずに栽培できるんですよ。なので今は、近所の牧場にある馬糞を発酵させて土づくりしています。吉和有機農園の「有機農業入門塾」で習った技術を投入して、米ぬかを乳酸発酵させた肥料をメインに使用しています。あと特に唐辛子は湿気に弱いので、余分な雨水が染みこみすぎないよう畑の形も変えて工夫しています。
農薬に頼らない栽培は消費者にとってもうれしいですね。
鈴木：生のおいしい唐辛子を食べてもらいたいと思って始めているので、やっぱり安心して食べられるものをつくっていきたいと思っています。フレッシュの唐辛子やハーブ類は、廿日市市内の一部の産直市場やECサイトで購入できます。唐辛子って合わない料理がないと思っていて、特に生のフレッシュなものは刻んで乗せるだけで料理が本当においしくなるので、中華料理や炒め物、カレーやシンプルに焼いた肉など、自由に味わってもらいたいです。
フレッシュで食べる食文化を広島につくりたい
生はもちろん、加工品もつくられていますね。
鈴木：フレッシュを販売するうえでどうしても余るものが出てきたので、それを無駄にしないようにと加工品をつくりました。一番は生のおいしさを伝えたいのですが、生だと保存期間などに制限があり、使い勝手としては加工品の方が便利な部分もあります。農園を知ってもらうきっかけになる商品になれば、という思いでつくっています。
鈴木：これらのパウダー状のスパイスは、『ADOA大野』などで販売していて、皆さんから好評をいただいているので今後は種類を増やせたらと思っています。パウダー以外でもうすぐ販売を控えているのが、廿日市市の老舗『佐伯醤油』の「宮島かきのしょうゆ」に唐辛子を漬け込んだ一品です。僕は納豆が好きなのですが、この唐辛子の牡蠣醤油漬けをひとたらしするだけで味わいが全然変わっておいしいですよ。他にもいろいろと研究しているので、早く商品にできればと思っています。
今後はどのように展開していきたいですか？
鈴木：生の唐辛子やハーブを販売できる場所をもっと増やすことと、お店で味わってもらえる機会も増やしたいです。以前タイカレーの期間限定ショップを開いて多くの方に楽しんでもらえたので、今後も挑戦したいですね。広島に、唐辛子を生で楽しむ食文化をつくれたらと思っています。
一つあるだけで、料理の味わい方がグッと広がるスパイスやハーブ。廿日市市で情熱をもって育てられた鈴木さんの唐辛子やハーブ類を、あなたの食卓にもぜひ！
