
47都道府県の中でも「コーヒー消費量」や「おうちコーヒー1杯にかける金額」が上位にランキングされるなど、コーヒー好きが多いという広島県。編集部のスタッフも、日々の暮らしにコーヒーが欠かせません。
そこで、コーヒー好きの編集部スタッフが広島市内の気になる3店舗へ足を運び、豆について話を聞いてきました。豆は、お店の個性がより表現されると言われるブレンド。各店舗のブレンドの特徴や、家で楽しむ際のポイントも併せて紹介します。
豆のいいとこどりをした配合で飲みやすい! 『ニシナ屋珈琲』のスペシャルブレンド
最初に訪れたのは、広島市東区にある『ニシナ屋珈琲 牛田本店』。1933年に創業し、広島のコーヒー文化を長く牽引してきたコーヒー豆販売店です。
店へ入ると目に飛び込んでくるのは、ズラリと並ぶコーヒー豆! すぐ横には大きな焙煎機もあり、コーヒーの良い香りに一気に包まれます。


数あるオリジナルブレンドの中から、「スペシャルブレンド」について販売員の光岡さんにお話しを聞きました。
光岡:ブラジル産やエチオピア産、エルサルバドル産などの風味豊かな豆に、苦味や渋味が特徴の豆を隠し味として加えています。どんな方でも飲みやすい味わいを目指した、店で一番人気を誇るブレンドです。
(スペシャルブレンドだけ少なくなっているコーヒー豆の販売ケースを見て)減りの速さから人気のほどが分かりますね。
光岡:豆は飲みやすさが長続きするような配合にしていますが、やはり煎りたてや淹れたてがおいしいので早めに飲んでいただくのが一番だと思います。お店で豆を購入する際は、一度にたくさん購入するのではなく飲みきれる程よい量を都度購入していただくのがおすすめです。
「スペシャルブレンドは、それぞれの豆のいいとこどりをしながらまとめています。バランスの良さを楽しんでほしいです」と光岡さん。☕Coffee Information☕
東広島市・大芝島で栽培しているコーヒーノキが、今秋ついに実の初収穫を迎える予定! 夢の“広島産コーヒー”の実現に向けた『ニシナ屋珈琲』の取り組みは、コチラから。
豆の酸味とミルクの融合で引き立つコク! 『てらにし珈琲店』のブレンド
続いては、広島市中区の『てらにし珈琲店 本店』です。昔ながらのクラシカルな雰囲気が漂う1978年オープンの喫茶店で、朝の一杯やモーニングを楽しむ人から夕方のコーヒーブレイクを過ごす人まで、年齢問わず多くの人が訪れる一軒です。自家焙煎のコーヒー豆も販売しています。

寺西:修業をした兵庫県『神戸にしむら珈琲店』で学んだコーヒーが全てで、この店のコーヒーもその影響を大きく受けたものです。そこでは、目指すコーヒーを“もっちりした味”という表現をしていました。
マスターの寺西さん。「ブレンドは1種類です。豆の風味を感じられるよう、3種類の豆に厳選してブレンドしています」。コーヒーで“もっちり”という表現は、なかなか珍しいですね。
寺西:それは、ミルクを入れることを想定しているからです。豆はブラジル産とコロンビア産、グアテマラ産を使い、酸味を生かせるように配合や焙煎を工夫しています。その酸味とミルクが合わさったときにコクが生まれて、そのコクが“もっちりした味”という表現につながるんです。
なるほど、酸味とミルクの融合にポイントがあるんですね!
店舗の隣にある一室で、日々焙煎士がローストする。☕Coffee Information☕
店舗ではネルドリップで淹れて提供するコーヒー。合わせるミルクは、1ccずつ調整して決めたというこだわりよう! 『てらにし珈琲店 本店』の歴史や人気のモーニングメニューなどの詳細は、コチラから。
世界とのつながりを感じる一杯に。『MOUNT COFFEE』のHiroshima Blend -G7 2023-
そして3店舗目は、広島市西区の『MOUNT COFFEE』。広電・高須駅から徒歩で約1分、高須通り商店街の一角に店を構えるこちらでは、フレッシュな豆の個性を生かしながら焙煎した、スペシャルティコーヒーを販売しています。
「Fine Morning」や「All The Day」など、ブレンドの名前が素敵ですね。
山本:生活に寄り添うようなブレンドにしたくて、コーヒーを飲みたくなる時間帯のネーミングで用意しています。元々ブレンドをつくるのが好きで、映画鑑賞や山登りなど自分が実際に体験したことからインスピレーションを得て、ブレンドという形で表現してきました。
「コーヒーが人やモノ、記憶や感情などさまざまなものをつなぐ媒体になればと考えていて、特にブレンドには力を入れています」と店主・山本さん。G7広島サミットの夕食会で各国首脳に振る舞われたコーヒーには、山本さんも携わっていると聞きました。
山本:G7のドリンク全般を担当されていたソムリエの田崎眞也さんと共同で、ブレンドをつくらせていただきました。緑豊かな中国山地や穏やかな瀬戸内海を味のイメージにしていて、G7にちなんで7か国の豆を使っています。現在は「Hiroshima Blend -G7 2023-」という名前で店舗で販売しています。
店で販売するブレンドは計7種類。ほかシングルオリジンもあり。山本:コーヒーは農作物なので、環境問題や産地の貧困・格差問題にもつながっています。今回のブレンドづくりを通してこれまで以上にそうしたことを考えて、G7ブレンドでは土地の環境や暮らしに配慮してつくられている豆を使っています。
背景をこうして聞くと、飲み方も変わってきそうです。
山本:コーヒーのおいしさはもちろん、自分たちの日常が世界へとつながっていることを知ってもらうきっかけになるブレンドになればいいなと思っています。
☕Coffee Information☕
山本さんは、産地やコーヒーでつながった人たちのことをPodcastやフリーペーパーでも発信中! おうちコーヒーのおいしい淹れ方も教えてもらいました。そのコツは、コチラから。
編集部スタッフが、実際に淹れて飲んでみます!

豆について取材した後、実際に編集部スタッフが一杯ずつ淹れて飲んでみました。まずは、『ニシナ屋珈琲』のスペシャルブレンドから。
中深煎りに仕上げられている『ニシナ屋珈琲』のスペシャルブレンド。100g550円。
お店で「最初は店が推奨する豆や湯の量で淹れて、そこから個人の好みで調整していくと良いですよ」と教えてもらったスタッフ。さっそくその通りに淹れてみます。「スペシャルブレンドの目安は、コーヒーカップ1杯分だと豆が12g、マグカップ1杯分だと豆は16g…」。
淹れたコーヒーをさっそく試飲。「すっきりとした味わいで、飲んだ後は爽やかさが広がる感覚です! 飲みやすさを追求した豆だけあって、どんなシーンでも選びやすい豆だと思いました」。次は、『てらにし珈琲店』のブレンドです。
豆の種類ごとに焙煎してから混ぜる「単品焙煎」をしているため、豆の色に違いがあることが分かります。100g702円。
まずはブラックの状態で飲んでみる。「程よい酸味や苦味が伝わってきて、キレを感じます」。
次に、ミルクを加えてみました。牛乳か乳脂肪分が少し高めの生クリームがおすすめだそう。「ミルクを入れると、酸味や苦味が生きることがよく分かりました! 普段はブラックを好んで飲んでいたので、ミルクを入れて飲む一杯のおいしさも知れたような気がします」。そして、『MOUNT COFFEE』のG7ブレンドです。
中煎りから中深煎りの豆がブレンドされているそう。産地はハワイ、インド、インドネシア、エチオピア、グアテマラ、コロンビア、ブラジルの計7か国。100g972円。
挽くとこんな感じです。
「口あたりが良くて、まろやかさを感じます。中国地方の山海の自然をイメージして味のベースを決めたと言われていただけあって、その穏やかな雰囲気が伝わってくる味わいです」。ブレンドとひと言でいっても、そこには店の個性がたっぷりと詰め込まれています。豆の種類や焙煎度合い、そこに込められた思いやブレンドが生まれた背景。各店舗のこだわりは奥深く、だからこそ実際に飲む一杯のおいしさも増すのだろうと思います。
朝、気持ちを高めたいときに。午後、ほっと一息つきたいときに。お気に入りの豆で、おうちコーヒーを楽しんでみてはいかがでしょうか。