しまなみ海道を渡り、2つ目の島である「因島(いんのしま)」。ここで“アイドル農家”として活動している尾道出身の2人組がいるという噂を聞き、お話を伺いに行ってきました。彼らはいったい何者なのか?! 湧き出る興味を抱えながら海を渡ると、そこには想像していたアイドル農家とは違い、熱い思いで農業に取り組むお2人に会うことができました。
アイドル農家「みなと組」の誕生秘話
さっそくですが「みなと組」結成の経緯を教えてください。
加藤:もともと僕たちは中学の同級生なんです。僕は興味があった農業を学ぶために台湾の大学へ留学したのですが、在学中にもっと現場のことを知りたいという思いが強くなり、中退して帰ってきたんです。そんなタイミングで、上原に「一緒に農業をしよう」と声をかけたのがはじまりです。
上原:僕もその時は大学在学中でしたが、どういうわけか二つ返事でOKしちゃいました。
すごく気になっていたのが「アイドル農家」という印象的なワードについて。その由来が知りたいです!
加藤:僕たち結成当初は国内初のアーモンド農家になるという目標を持っていました。ただ、アーモンドって植えつけをしてから収穫できるようになるまで5年もかかるんです。「売上が立たないその5年間どうしよう。何か売らなきゃ・・・」と悩んでいたところ、相談していた友人が「まずは顔を売っときなよ!」というひと言から、アイドル農家を名乗るようになったんです。
なるほど、まずは農家として存在を知ってもらおうということで「アイドル農家」だったのですね。今はもう、畑で作物を育てられているのですか?
加藤:そうなんです。アーモンドができるまでの間にせっかくだから何か育てようと、現在は在来品種を中心とした夏野菜やハーブを育てています。今ではそっちがどんどん楽しくなってきちゃって。販売するものができたので、もう本当はアイドルじゃなくて普通の農家なんです(笑)
毎年進化する、こだわりの栽培方法
加藤:僕たちの農業は、自家製発酵肥料だけで栽培・栽培期間中の農薬不使用・自家採種という3つのやり方を軸にしています。
加藤:野菜の味は肥料に大きく影響されるので、僕たちの使う肥料は、植物性の素材(米ぬかや大豆、レモングラスなど)を中心に身近に手に入るものを自分たちで選び、それらを発酵させたものを使用しています。そうして収穫した野菜の中から、自分たちがおいしいと感じた野菜の種を採取し、次の年に植える、というやり方を行なっています。
加藤:大変な作業ですが、理想の味に向けて毎年ブラッシュアップされていく過程が面白いんです。
今後の進化が楽しみですね。ハーブティーや夏野菜は、どこで購入できますか?
上原:ハーブティーは、向島の「素白(そはく)」というギャラリーや広島市の「MOUNT COFFEE(マウントコーヒー)」などでも取り扱っていただいています。あと、僕の姉が向島で「
ミドリノコヤ」という小さな喫茶店をやっているので、そこでゆっくり飲んでいただくのもオススメです。
(※MOUNT COFFEE(マウントコーヒー)さんの記事はこちら )
加藤:夏野菜に関しては、毎週収穫できた分だけをオンラインストアで販売する、という形をとっています。これまでは個人の方向けに販売していましたが、今年からはレストランなどでも少しずつ扱っていただけるように頑張っているところです。
オリジナルのマガジンで、野菜のおいしさを伝える
みなと組さんといえば、定期的に出されている「みなと組マガジン」も印象的です。どんなきっかけで始まったのですか?
加藤:みなと組マガジンは、夏野菜を発送する際に、毎回新しい冊子が一緒に入っていると楽しんでもらえるかな、と思って作るようになったことがはじまりですね。発送する商品がない時期はブログにアップしています。最近は月に1回くらいのペースで作っていて、今年も夏野菜の収穫時期には商品に同梱する予定なので楽しみにしてください!
加藤:まず一つは、農業だけで食べていくこと! 二つ目は、こうなればいいなっていう大きな夢になりますが、慣行農法(※)の野菜が主流で並ぶスーパーに、僕たちが作るような野菜がじわじわと増えて、それが主流となっていったらいいなぁ、と思っています。そのために、僕たちの野菜のおいしさを、もっともっと多くの人に知ってもらえるように頑張っていきます!
(※)…野菜や果実・穀物類を育てる際の、農薬と肥料の使用回数などにおいて、多くの生産者が行っている農法。
アイドル農家「みなと組」の正体は、農業へのまっすぐな想いと情熱を持った2人組でした。自分たちの作る野菜のおいしさを追求し、納得できるやり方を確立していく途中だという2人の姿は、大変な作業をしているのにどこか楽しそうで、とても頼もしく見えました。2人の今後の活躍に注目です!