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八橋装院 FUKUNARY 高橋伸英さん|異なる業種とのコラボレーションで常に進化を

1959年創業、数々の有名ブランドの縫製を担ってきた被服縫製会社「八橋装院(やはしそういん)」。これまで培ってきた高い縫製技術やノウハウにクリエイティブな発想力を組み合わせて、バッグや財布などのプロダクトを広島から発信しています。ファクトリーブランド「FUKUNARY(フクナリー)」誕生の気になるストーリーを、代表取締役の高橋伸英さんに伺ってきました。

職人の研ぎ澄まされたセンスと感覚を自社ブランドに生かす

八橋装院さんの事業内容や取り組みを教えてください。

高橋:日本を代表する有名なアパレルブランドの委託加工業と、自社ブランドのFUKUNARY事業を、すべて自社工場で行っております。

委託加工業といわれる「OEM」は、材料やデザインなどすべて供給されるんですか?

高橋:そうですね。原反で届いた生地を裁断することから始めるので、例えるなら、プラモデルをイチから作るような感じです。私たちの縫製工場では、一流ブランドの受託生産を長年任されてきました。そのため、技術的に難しい事にも果敢に挑戦しているので、職人の経験値や技術力は確実に上がっています。

日本製&広島産にこだわっている特別な想いとは?

高橋:国内縫製業界は、1991年頃のバブル崩壊前後がピークで日本製は6割を占めていましたが、2017年は2.7%。現在は1.9%とさらに減少しています。元々は、OEMの洋服だけでしたが、先代がやっていた事を引き継いだだけでは廃れてしまうので、革命を起こさなければいけないとずっと思っていました。これまで培ってきた縫製技術を広島から全国にもっと発信したかったので、自社ブランドを企画・開発し、新たな歩みをスタートしました。

自社ブランド「FUKUNARY」が誕生するまで、どういう経緯があったんですか?

高橋:まず2009年に、モノづくりの基盤と技術向上につなげたいという想いで、会社のリソースを使って、製作過程で出る残布(ざんぷ)を利用してオーダーメイドの洋服を作る第一弾の自社ブランド「THE NPU(ザ エヌピーユー)」シリーズを開発したんです。

「SDGs」という持続可能な社会の取り組みが注目されていますが、高橋社長は13年も前に展開されていたんですね。

高橋:最近、サスティナブルとか良く聞きますが、単純に、製作過程でどうしても出てしまう「残布」を捨てるのが「もったいない」と思っていたんですよ。しかし、現状は厳しくて…。技術だけでモノが売れると思っていましたが、実際は、マーケットを見ないといけないことに気づきました。特に洋服は、季節やトレンドを追い続けることに苦戦しました。そういったことがきっかけでオーダーメイドではない自社ブランドを作ろうと、全員が一丸となり社内でチームを作りました。

通常の業務と並行しながら行っていたんですか?

高橋:そうなんです。就業時間までの合間に打ち合わせを重ね、2年もの歳月を経てやっと私たちの夢がカタチになり、2013年、待ちに待った「FUKUNARY」が誕生しました。

八橋装院の想いが詰まったファクトリーブランド

MIKASA製のボール生地がバッグや雑貨に⁉ 

バレーボールのボール生地がバッグに大変身

MIKASA製のボール生地を使ったバッグや雑貨がとてもインパクトがあって斬新ですが、スポーツブランドのMIKASAさんと出会ったきっかけは何だったのですか?

高橋:広島県ビジネスフェアの展示会で、たまたまMIKASAさんとご一緒したことがきっかけです。以前から「若い方にも日常的に使ってもらいたい」という想いがあったので、コラボ製品の話をさせていただいたんです。ありがたいことに快諾していただけて、バレーボール生地の素材を提供してもらい、試作品を作ってスムーズに製品化まで進みました。その後は、バスケット、サッカー、ビーチボール生地の素材も提供してもらい、それぞれの特性を生かした製品を作りましたね。

トントン拍子に製品化に至り、まさしく、出合うべくして出合ったという感じですね。

イベント出店に駆け回り販促活動に力を入れる日々

2014年8月6日 広島PARCO前にてPOPUPイベント

バレーボールのディスプレイがとてもカラフルで目を引きますね。

高橋:MIKASAさんに、バレーボール100個お借りしました。バレーボール選手のジャンプの高さを目印にして、参加型のジャンプコンテストも開催したんですよ。屋外のイベントだったので、お客様の目に留まり反応も良かったです。

広島PARCOイベント大盛況の様子

PARCO前だと、ターゲット層でもある若い方の集客もあり、認知度も上がったのではないでしょうか?

高橋:はい。その勢いもあり、熊本PARCOにもPOPUPで出店し、東京の代々木体育館である、rooms30・31・32の展示会にも続けて出店しました。これによって、ブランドの認知度が上がり、いろいろなオファーをいただけましたね。

モノづくりの背景を工場見学とワークショップで体験

工場見学やワークショップは、どのような方が参加されていますか?

高橋:子供会や修学旅行生、洋服が好きな方が来られています。ワイナリー工場のように、商品が出来上がるまでの過程が見えるよう、モノづくりを「生」で体感・体験してほしいと思っています。(コロナ禍のため現在は中止されています)

今回は、取材をかねて特別に工場見学させていただきました。

最新のCADシステムの機械やCAM搭載自動裁断機、自動延反機と、特殊ミシンを導入することで、裁断時間が1/10以下に削減し効率化が実現、量産体制が整ったそうです。


精密なCAM搭載自動裁断機


自動延反(えんたん)機を使用して、裁断のために生地を必要な長さにカットします。


CADシステム自動裁断機で各パーツを裁断します。


裁断されたパーツ


裁断したパーツに強度を持たせるため芯を貼ったりなどの下準備を行います。


使用用途に合わせて、さまざまな種類の工業用ミシンを使い分けています。


特殊な工業用ミシンで洋服に仕立てていきます。


検査工程では、ひとつひとつ丁寧に手作業で確認をしています。


ECサイトの運営やSNSの管理・運用も自社で行っております。


FUKUNARYブランドは、広島県福山市「中村金襴」のKUROGIN生地や「尾道帆布」の素材を使ったアイテムも多数展開されています。

【オンラインショップ】

STORES(FUKUNARY)

STORES(FUKUNARY feat. MIKASA)

楽天市場店 FUKUNARY


【取扱店舗】 ※営業時間は各施設により異なります

●FUKUNARY 本店(直営店)
 広島県広島市安佐南区西原1-27-10    

●FUKUNARY THE OUTLETS HIROSHIMA店(直営店)
 広島県広島市佐伯区石内東4-1-1 1階  

●FUKUNARY 福屋 広島駅前店(POP-UP)
 広島県広島市南区松原町9-1 3F 婦人服売り場  

●しま商店(委託)
 広島県広島市南区松原町1-2 ekie 2F NORTH(広島駅構内)

お客様が思い描いている夢を「ブランドというカタチ」に

高橋社長の今後の展望はありますか?

高橋:まずは、若者たちが八橋装院に就職したいと言ってもらえるような会社にすること、そして、広島に縫製業を残し続けていきたいです。全国的には、まだまだ知られていないので、八橋装院のモノづくりを通して、お客様に “満足” と “感動” で幸せを感じていただく活動を続けて、ブランド認知の拡大をしていく必要があります。

高橋:また、新規企業のブランド作りのオーダーメイドにも力を入れていきたいですね。八橋装院は、洋服や雑貨のイメージのラフをいただけたら「商品」という形に出来る会社です。お客様の納得できる商品を作るためには、時間とコストはかかりますが、ここは、妥協できない部分ではありますね。

営業においても、まずはご自身が先陣を切るという高橋社長。イベント出店の際も、自ら資材を調達し什器を作られたそうです。そして広島に、こんなにも高い技術を持った縫製工場があることに感銘を受けました。広島県民の誇りでもある「FUKUNARY」が、日本全国の伝統素材を網羅し、世界中から脚光を浴びる日もそう遠い未来ではない気がします。

八橋装院株式会社 代表取締役

高橋伸英さん

広島市安佐南区出身。国内有名DCブランドの受託生産を数多く担っている。2013年、広島素材や全国の質の高い素材に八橋装院の縫製技術をかけ合わせて、自社ブランドである「FUKUNARY」を立ち上げた。広島の高い技術力を全国へ発信している。

FUKUNARY 本店(直営店)

広島県広島市安佐南区西原1-27-10

OPEN.10:00~17:00

定休.日曜日・祝日

アクセス
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