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𠮷村葬祭 吉村大輔さん|心のこもったお葬式を実現する葬祭プロデューサー

2021年で創業95年を迎えた広島市中区国泰寺にある𠮷村葬祭。「心のこもった葬儀をしませんか?」をキャッチフレーズに、3代目社長の吉村大輔さんはお客様の思いに寄り添った葬儀をプロデュースしています。人間だれにも必ず訪れる「葬儀」という最後の行事。葬儀を施工するうえでの吉村さんの思いを、自社で運営している葬儀会館「マントクホール」にて伺いました。

葬儀の仕事は体力勝負

吉村さんは吉村葬祭の3代目社長ですが、将来は会社を継ぐという思いで学生時代を過ごされてきたんですか?

吉村:全く思っていなかったですね。自分の好きな仕事に就きたくて、高校を卒業してからすぐ働きました。それに、車が欲しかったんですよ。18歳で運転免許を取得してあちこち乗り回していました。

私も初めてマイカーを買ったときはうれしくて走り回りました(笑)。

吉村:昔から自動車が好きで自動車整備士になりたかったので、高校は自動車整備課に行っていました。社会人になって最初の10年間は、トラックの荷台を架装する会社に勤務していました。その中でもっと自動車に携わりたいと思っていましたし、ずっとつなぎを着て油まみれの仕事でもよかったんですけどね。でも30歳になる前くらいに家業を継ぐことになって、愛知県の葬儀社で2年間修業をしました。

遠方まで修業に行かれたんですね。

吉村:当時は祭壇をトラックに載せて会社からお寺やお客様のご自宅へ運び組み立てて、葬儀が終わったら片付けて会社の倉庫にしまうということの繰り返しでした。24時間体制なので葬儀社の仕事は体力勝負ですね。給料は良かったですけど体力と時間がないっていう。最近は葬儀会館で葬式をする事が多いので、状況は大きく変わっています。ただ愛知県だったので土地勘がなかったところは苦労しました(笑)。

会社の倉庫には葬儀で使用する仏具が所せましと収納されています。

最近のお葬式事情は多種多様

葬儀をするとなったときは、一般的には自宅から近い葬儀場を使うことが多いのですか?

吉村:最近は個人情報とかを近所の方に知られたくないという思いから、少し遠い所を選択されるお客様もいらっしゃるんですよ。

周りの方に知らせるのが普通だと思っていました。

吉村:昔はそうでした。今はわりと家族葬などで事後報告的な感じも多いです。故人の最後の顔を多くの方に見てもらえないのは残念ですが、多くの方が葬儀に参列されると喪主の方も挨拶などで大変です。親族だけだとゆっくりと故人を送ることができるものの、親族以外の方から「なんで言ってくれなかったのか」という声が出る場合もあります。

考えれば考えるほど分からなくなってきそうです…。

吉村:一度きりのことなので、親族の方々が後悔のないようにさまざまなパターンをお伝えしてサポートさせてもらっています。

以前に比べて価値観や考え方が変わっているから、葬儀においてもお客様に合わせたお話をすることがより求められているんでしょうか。

「葬儀にも時代の流れがある」と吉村さん。

吉村:昔は親族がこんな葬儀がしたいと思っても、「しきたりだから」という理由で思い通りにできないことも多かったですね。それがどんどん変わっていくことによって、すごくフリーな状態で葬儀ができるようになりました。葬儀は宗派にもよりますが絶対に「こうしなければいけない事」というのは少しの項目しかなくて。皆さんびっくりされるんですけど、祭壇の遺影写真は無くてもできるんですよ。

写真は100パーセント必要なイメージです。

吉村:そうですよね、でも宗教者の方は写真がなくてもお経は読めます。たとえばこのレイアウトは浄土真宗なんですけど、真ん中の阿弥陀如来の掛け軸がないと葬式はできません。逆に言えば、掛け軸だけでもあればできるということです。

いろいろなルールがあるんですね。

レイアウトを見れば宗派が分かります。
吉村:昔の人がつくった葬儀の形が長らくあったんですけど、最近は家族葬がメジャーになってきて、それも変わってきています。家族葬は安いというイメージがあるかもしれませんが、親族が希望されるなら小さく安くではなく、家族しかいなくても盛大な祭壇をつくって送り出してもいいんです。送り出す人の人数ではなくて、気持ちが重要です。皆さん予算や思いはそれぞれ違うので、その思いを聞き出して形にすることも我々の仕事です。

葬儀の仕事ってお客様と出会ってから2・3日のお付き合いになると思いますが、短い期間で信頼関係をどううまく築いているんですか?

吉村:私はもともといろいろな事に興味がある人間なんですけど、1個の事を100パーセント覚えるよりも、100個のことを1パーセント覚える方が好きですね。いろんな話をする中でどこかその人とつながる部分があるんです。そうしたら何でもないことから話が広がっていきますから。

その方らしいお葬式を行う上ではお客様と近い関係性を築かないといけないですね。思いをしっかりと引き出すために、お客様との距離を縮める努力をされているんですね。

心に残る葬儀をするために

吉村:ところで広島CLiP新聞の皆さんはご実家の宗派や、お寺の名前や場所は知っていますか?

うーん、私の家が何宗か知らないです…。お寺の名前も…。お寺には何度も行ったことはありますけど。

吉村:若い世代はそういう方が多いんですよ。お客様とはそういった情報も探りながらお話します。お寺の場所が分かっていれば調べて宗派は分かりますけど、全く知らないっていう方も少なくないです。お父さんお母さん世代が子どもをお寺に連れて行っていないと、やっぱり分からないですよね。お寺との葬儀日程の調整なども我々がすることが多いです。

吉村さんのようなご職業は葬儀のときにハブになる感じですね。中心になって親族やお寺の方と話を進めていくのは葬儀会社では一般的なんですか?

吉村:僕はそう思っているんですけどね。街中と田舎では関係者の関わり方が大きく違いますし、昔は近所の方々が協力しあって炊き出しをしたり、役所の手続きをしたり祭壇を作ったりしていましたけど最近はほとんど聞かないですね。

𠮷村葬祭さんには「心のこもった葬儀をしませんか?」というキャッチフレーズがありますけど、それにはどんな意味が込められているんですか?

吉村:葬儀のときに、お客様の手が届きにくい所に先回りをして我々がパッと手を差し伸べてサポートすることによって、親族の方は葬儀の進行に気を取られることが少なく故人を送り出すことだけに心をこめられる状態を作るように心掛けています。

吉村さんだと安心してお願いできるということですね。

吉村:故人をしっかりと送り出せれば、親族の方は何年たっても「あの時のお葬式よかったね、気候も良かったね」などいい思い出になってくれることが多いです。またその子どもさんにも葬儀の流れを感じてもらって「こうやってするんだなー」とか勉強してもらえるとうれしいですね。

「心のこもった葬儀」は「心に残る葬儀」でもあるんですね。

吉村:葬祭って「祭」という文字が入るように、故人にとっては最後のお祭りなんです。でも内容は一人ひとり違います。100歳以上の大往生や、若くして病気や事故などありますから、現場では全体の空気を読みながら状況に応じて異なる感覚を持って進めていきます。

お客様の気持ちを汲み取りながら寄り添うお仕事をされるのが吉村さんのやり方で、それが「心のこもった葬儀」につながるんですね。

正しい焼香の作法を伺います。

焼香は人生で何度か経験はありますが、見よう見まねでやっていて正しい焼香って知らないんですよ。

吉村:宗派によって異なりますが、1~3回香炉の炭の上に抹香(粉状のお香)をくべます。ですがマナーとしてはそこのおうちに合わせる必要はないです。ご自身の宗派の焼香作法を行ってください。

自分の宗派のやり方でいいんですね。

大切なマナーだから、学生時代に習えるタイミングがあったらいいですね。

吉村:そうですね、仏教学校へ進学すれば教えてもらえるんですけどね。

次に焼香をする方のために抹香の表面をならしておくとスマートです。

親孝行のあり方とは

最近は「終活」という言葉をよく聞きます。吉村さんの思う終活ってどんなことですか?

吉村:確かによく聞きますね。問い合せを受けることも多くなりました。今はインターネットなどで葬儀全般についてご自身で簡単に調べる事ができる時代になりましたし、多くの方が意識されているんだと思いますね。

葬儀にはどのくらい費用がかかるのかを調べて準備しておくようなイメージでしょうか?

吉村:金銭的な準備も大切ですが、宗派やお寺がどこかも確認が必要です。そして思っている以上になかなか決まらないのが、遺影写真ですね。「写真がなくても葬儀はできます」とは言いましたが、やはり祭壇には故人の写真が飾られるのが一般的です。広島CLiP新聞編集部の皆さんは写真について考えたことはありますか?

写真のことなんて意識したことなかったです。

吉村:写真のことを伝えると「まだ元気だから考えてないよ」という返答をよくいただくんですけど、元気なときの写真がいいんですよ。例えば80歳を超えて外出をあまりしなくなって服装にも気を使わなくなって、自宅のリビングでたまたま撮った写真よりは、60・70歳ごろの元気に外出していて、旅行や四季折々のイベントを楽しめている頃で、風景のきれいな所で元気な肌つやのいい写真を撮っておいて欲しいと思います。

ちょうど私の両親は70歳なんですよ。もしかしたら写真を撮ることも親孝行の一つかもしれませんね。あとお寺の名前は確認しておきたいと思いました。

吉村:昔は写真館に家族みんなで行って集合写真を撮ったりしていましたけど、そういったことも年に一回しておけば、家族写真が将来的には素敵な遺影写真になるんですよ。昔の遺影写真は、首から下は黒色のスーツネクタイの合成写真というのが普通でしたけど、それもどうかなという話から、普段着でも写りの良い写真を選ぶ流れになってきていますね。

確かに古い遺影写真は構図がワンパターンですね。

吉村:どんな写真でも遺影に選ぶことができます。その人の一番楽しそうな写真とかその人らしい写真とかでもいいと思います。魚釣りが好きだった方は釣り竿を持っている写真とかね。僕らは分からないですけど、見る人が見たら「あー、あの人らしいねー、懐かしいねー」って言われるんじゃないですか。きっと参列した方が故人をしのんで話をするきっかけになると思います。

故人の思い出話に花が咲きそうですね。今度親族が集まったときには、それとなく両親の写真を撮りたいと思いました。

吉村:遺影用の写真を撮りに行くのではなくて、親孝行の一つとして旅行や花見のときに自然に写真を撮ると素敵な写真ができますよ。花見の季節に桜をバックに写真を撮ったら、背景はそのまま使えばいいですし。そういった感覚を普段の生活に取り入れていけるといいですね。

さまざまな葬儀の形をプロデュースしている吉村さん。広島で長く多くの方に頼られているのは、創業95年の実績と信頼だけではなく、柔らかな受け答えでお客様の思いを聞き出すことが上手な吉村さんの人柄だと実感しました。きっとこれからもお客様の思いを形にし続ける心強い存在です。

有限会社𠮷村葬祭 代表取締役 

吉村大輔さん

大正15年創業の𠮷村葬祭3代目社長を務める。「心のこもった葬儀をしませんか?」をキャッチフレーズにお客様の思いに寄り添った葬儀をプロデュースしている。

有限会社𠮷村葬祭

広島市中区国泰寺2丁目3-10

TEL.082-244-6522

アクセス
広島CLiP新聞編集部(CLiP HIROSHIMA)から車で3分