広島県尾道市に属し、しまなみ海道で結ばれる瀬戸内海に浮かぶ生口島。温暖な気候で柑橘類の栽培が盛んに行われており、日本一のレモン産地としても知られています。その生口島(瀬戸田町)で自然農法の柑橘を活用し、柑橘商品の販売/企画やシェアキッチンの運営、商店街の活性化などを行っているのがRemon.Lab(レモンラボ)。CRO(チーフレモンオフィサー)の石﨑浩太郎さんは地元農家や移住者を繋ぎ、地域活性化に取り組んでいます。
地方創生活動で全国を飛び回り感じた地元への思い 耕三寺と瀬戸田港を繋ぐ参道として栄えた「しおまち商店街」の港側にある『Remon.Lab Base』(レモンラボベース)。目の前には穏やかな瀬戸内海が広がっています。 エンジニアとして会社に所属し、新事業を創出する地方創生プロジェクトで全国を飛び回っていた石﨑さん。様々な地域で地元企業や農家さんと出会いコンサルティング活動を行っていくなかで、心の中に芽生えたのは「生まれ育った広島でも何かできないか?」という地元愛。その思いは年々強くなっていったといいます。
Remon.Lab CROの石﨑浩太郎さん。
石﨑: 2015年にしまなみ海道沿いの新たな取り組みに携わらせていただいたんですが、それまで尾道や向島、生口島があるのは知っていたんですけど、瀬戸田町を初めて知りました。それから地域の方と様々な取り組みを行っていくなかで、農薬や肥料を使わない自然農法に出会ったんです。自然農法ならではの難しさなどがありながら、あえて自然農法で柑橘を栽培している…こんな素晴らしい取り組みを、自分も知らなかったし、もっと多くの人に知ってもらえたらと思い、瀬戸田でチャレンジしようと思いました。
長年抱いてきた思いが実り、2000年にRemon.Labを起業した石﨑さん。地元農家と共同で自然農法の柑橘を活用する事業をスタートさせました。活動拠点を持ったことで、地元の方々との距離もさらに縮まっていったと感じたそうです。
石﨑: 拠点を構えたからこそ、見えてきたことがたくさんありました。農業を営むうえで大切な栽培・収穫・収益の安定など様々な問題。これらの課題を一緒に取り組みながら、柑橘の栽培を通して地域の人同士や地域の外と中、いろいろな人と人を繋げていきたいと思いました。
石﨑: 島内に『レモン谷』という場所があります。先人がレモン栽培を盛んにしている地域をいつからかそう呼称するようになり、その後に正式地名として申請したことから地図にも載るようになりました。日本の道路標識は「ヘボン式」(※)で綴られておりラ行はra ri ru re roとなります。レモン谷の標識もremondaniという表記に。世界中でreではじまるレモンはここにしかないのではと思い、生口島、瀬戸田の柑橘(レモン)を世界中に知って欲しいとRemon.Labは、Reの表記としています。当該地には「国産レモン発祥の地」に関する石碑もあるんですよ。
※ヘボン式とは外国人が日本語の発音をしやすいように考案されたローマ字表記法。
石﨑: 農薬も肥料も使用しない、草もむやみに抜かないことで、土壌の微生物、クモやハチなどさまざまな生き物とも共存しています。本当に自然に寄り添って栽培するので収穫量が不安定だったり、畑を含めた自然環境への配慮など…生産者には自然農法ならではの苦労や独自の販路開拓などに努力が必要です。自然そのものを相手にした大変な作業を明治時代から粛々と作り続けている方がいる。そこに胸を打たれました。このような取組みを広めていきたいと思いました。
自然農法で栽培されたレモンは皮まで安心して食べることができます。また、自然農法ならではの凝縮された旨みと香り豊かな風味が特徴。特に、皮の苦みが少なく、レモネードやはちみつ漬けなどに皮ごと活用できるのが大きな魅力です。 生産者の高齢化などによりこれまで通り栽培することが難しくなった、安定した収入につなげたい、など農家さんの相談ごともサポートし、レモンを使った商品の企画なども行っています。
レモン収穫ワークショップで自然農法レモンを知る 『Remon.Lab』では自然農法で栽培されたレモンを知ってもらう近道として『レモン収穫ワークショップ』も開催しています。参加者は収穫から食べるまでを体験し、これまでのレモンの概念を覆す魅力を発見できると好評です。
広島CLiP新聞編集部員が参加したレモン収穫ワークショップの様子。瀬戸内海を見渡せるレモン畑で収穫から食べるまでを体験しました。 「レモンの葉を揉んでみて!しっかりレモンの香りがするんですよ」と石﨑さんのレクチャーを受け、実際に試してみると…みずみずしいレモンの香りが強く感じられてびっくり!Remon.Labでは、レモンの茶葉を使ったフレーバーティーも作っています。 収穫後は生搾り体験。とれたての自然農法レモンの果汁を味わったり、皮に含まれる香りを体感するために表皮のエキスを果汁に移し、果汁だけの味との違いを試します。 その後、Remon.Lab Baseの並びにある複合カフェSOIL Setda(ソイルセトダ)に場所を移し、瀬戸田のレモンを使用した食事を楽しみます。
SOIL Setoda 1階に併設されたカフェ。こちらでワークショップ限定メニューをいただきます。 この日のメニューはレモンを乗せて焼いたサワラや、レモンを使用したドレッシングでいただく鯛のカルパッチョ、季節の野菜などを堪能しました。
実際に自然農法のレモンを収穫して食べるまで…この流れを体験できるのはとても貴重だと感じました。
石﨑: 無農薬や減農、有機など栽培方法の組み合わせはたくさんあります。それぞれの特徴を知ってもらえる機会を提供することが大切であり、自然農法でなければいけないとは思っていません。ワークショップではそんなお話もするんです。いろんな栽培方法を知ったうえで選択できたらいいですよね。どうやって作られているのか?を理解するとスーパーで売られている食材にもっと興味が持てると思うんです。そこから農家さんの思いに心をはせてもらえたらと思います。
もっと知ってほしい、魅力溢れる瀬戸田のこと 地域内外の事業者や地域イベント、地元の集まりなどに利用されているRemon.Lab Base
Remon.Labではシェアキッチンも運営されていますね。
石﨑: シェアキッチンというと固い感じもしますが、地域内外の方にも気軽に利用してもらえるオープンスペースという感覚です。ちょっとした集会の時など賑わっています。月に一度開催される地域の新規事業者を紹介するような会も開き、地元の方に知ってもらう取り組みも行っています。 また、生口島で店を開きたい人など向けに期間限定でシェアキッチンを貸し出し、お試し営業する活用方法もおすすめしています。地方創生プロジェクトで全国を周り感じたことなのですが、地方で新しいことにチャレンジしたい人がいきなり移住し店を構えるってとてもハードルが高い。その地域になじめるか?まずは実際に体験してみることが大切だと思うんです。 シェアキッチンで惣菜を作り1か月間仮営業し、地元の人が好む味は薄口か?濃口か?などの味付けや食の好みなど試して味を決め、空き家を利用したカフェをオープンという流れも。こういった地域の余白みたいな場所を作れば、チャレンジしたい人たちも入ってきやすいんじゃないかな。
これもRemon.Lab という場所を構えたことで実現したことだと手応えを感じています。
「シェアキッチンでの仮営業ではウチと繋がりのある農家さんの柑橘を使ってくれる方もいて。良い循環が生まれていると思います」 カフェメニューも展開しています。自然農法レモンを皮まで味わえるオリジナルのリモナータ(レモン果汁炭酸ドリンク)などを用意。オーダーが入ってからレモンを手搾り搾汁機で生搾りします。
石﨑: 瀬戸田の温暖な気候でしっかりと太陽を浴び、ビタミンも豊富なレモンがもっと広がっていけばいいと思っています。その一環として、農業に興味を持った方や農業を仕事にしたいと考えている人への就農支援を充実させていきたいと考えています。
柑橘を通して人と人を繋げたい…その思いは様々なカタチとなって派生し、瀬戸田を盛り上げる活動に広がっています。瀬戸内海を見渡せるレモン谷から新しい風を起こすRemon.Lab。ぜひ、島に足を運んでみてはいかがでしょうか。