瀬戸内海に浮かぶ人口7000人ほどの離島・大崎上島。柑橘栽培や造船業が有名ですが、実は広島県産しいたけの約7割(※2023年度)を生産している工場があります。そんなフルーツセンター文田の工場に広島CLiP新聞編集部員が潜入!代表取締役の文田天(ぶんだ・たかし)さんに、シイタケ作りのこだわりやおすすめの食べ方を教えてもらいました。
フルーツセンター文田では、シイタケの菌床作りから植え付け・栽培・出荷までを一貫して行っています。365日新鮮なシイタケを栽培・出荷しており、その量はなんと年間500トン以上!こちらの工場ではその工程をすべて見学することができます。
いざ!しいたけ工場へ
まずはシイタケの菌を植え付ける「培地」作りの工程。培地は広葉樹のおがくずに、とうもろこし粉などの栄養と水を加えたもの。その後、培地にしいたけの種菌を植え付けて3か月間培養させます。
培養後に菌床の袋を開けると、シイタケの芽が一斉に発芽し始めます。4~5日後に、多すぎる芽を間引く「芽かき」作業を行います。開封から5〜7日後の食べごろになったものから収穫します。
シイタケ栽培の肝は温度管理と水やり。温度を上下して刺激を与えることで大きく立派なシイタケに仕上がるそう。季節によって時間が違いますが朝と夕に、敷地内すべてを周って細かく温度調整を行い、天候や湿度によって水のやり方を変えています。
文田さんおすすめ!おいしい食べ方
そんな手間をかけてできたフルーツセンター文田のシイタケは肉厚でジューシー。石づきを落とせば、太い軸もおいしく食べられます。そこで文田さんにおすすめの食べ方を教えていただきました。
まずはシイタケの肉巻き。塩コショウをしたシイタケに豚バラ肉を巻きつけてカリッと焼き上げます。豚バラの肉汁をシイタケが吸って旨味抜群!ポン酢をつけてもおいしいです。
他にも、切ったシイタケにバッター液をつけて油でこんがり揚げた「シイタケフライ」もおすすめ。味付けはレモン汁・ソース・塩などお好みで。シイタケが苦手な方でも食べやすいよう考案されたそうです。
シイタケ栽培で島を元気に
フルーツセンター文田は、昭和59年に文田さんのお父様が設立しました。設立時はキウイフルーツの栽培と果物の卸を行っていたことが社名「フルーツセンター」の由来だそう。しかし平成3年の台風19号で農家の畑が大打撃を受け、シイタケ栽培に転換。
「最初は作り方がわからず、ペラペラのシイタケができたりした。今のシイタケは血と汗の結晶」。そんな文田さん曰く「商売をする上で唯一決めてることは、”削減”を優先しないこと」。
この言葉の裏には、約15年前に安価な輸入シイタケによって全国的に価格が下落傾向となり、その対策として経費削減を行いながら生産量を増やそうとした経験があります。この時は結局、生産量は増えても品質が上がらず、卸値も低下しスーパーでも安く売られるシイタケとなってしまいました。
「試してみて、ダメなところを改善する。その積み重ねで出荷量も開始当初から5倍になった」。
文田さんの試行錯誤と、24時間365日に渡る徹底した温度管理や水やりのおかげで、上質なシイタケを安定して出荷することができています。
同社の従業員は、60人以上いるほぼ全員が正社員。
「会社だから利益を考えるけども、人がいらないやり方をすれば島に人がいなくなる。扶養を含めた100人くらいの人たちがシイタケだけでこの島で暮らせている。人口の過疎化が進む中で、これをいかに維持していくかが重要」。
『文田しいたけ』は、県内のそごう・サンリブを始めとした百貨店やスーパーで取り扱っています。シイタケのために、従業員のために、そして大崎上島のために、手間を惜しまず全力で奮闘する文田さんの肉厚なシイタケをぜひ手に取ってみてください。