忘年会シーズン真っ只中の今。どんな世代であっても気兼ねなく過ごせる焼き鳥店は、店選びの候補によく挙がるのではないでしょうか。
広島の焼き鳥店の中で実力と人気を兼ね備えているのが、広島市中区に3店舗を構える『炭焼雷』です。今年、創業45周年。街でこんなに長く愛されているのは、きっと理由があるに違いない! その秘密に迫るべく、『炭焼雷』を展開する(株)キャピタルコーポレーション代表取締役・村井由香さんに、店の歴史や焼き鳥へのこだわり、今後の展望について聞きました。
広島の良さを伝えていくのが店の役割
『炭焼雷』の創業は、1978年。広島市中区袋町に1店舗目となる並木店(現在は閉店)が誕生して、その歩みがスタートしました。
現在は同町内に移転オープンした本店、流川町に新天地店、紙屋町に立町店と3店舗を展開。夜になると提灯や店の明かりに導かれるように多くのお客様が訪れ、食事のひと時を思い思いに楽しむ人で賑わいます。
村井:鶏は「廣島赤鶏」と「広島熟成どり」を使っています。広島で店をするからには、広島の良さを伝えていくのも私たちの役割だと考えているからです。柔らかさや旨みの深さなど肉質が良いその2つの銘柄鶏を当日の分だけ仕込み、鮮度が良いまま焼き鳥にしてご提供しています。創業以来継ぎ足してきた、素材の旨みをしっかりと取り込んでいる秘伝のタレもポイントです。
村井:大型の焼き台も特徴なんですよ。焼き手が備長炭を使って遠火の強火で一気に焼くことで、肉の旨みを引き出しています。オープンキッチンなので、手さばきを席から見ることができるのも面白いところだと思います。
村井:満席のときでも、焼き手はどのお客様がどの串をどんなスピードで食べているのかを把握しながら串を焼いています。本当に焼き手の職人技によるものだなと常々思いますね。
そんな配慮がお客様にとって居心地の良さにつながって、「また食べに来たい!」と思うんだろうなと感じます。
地域の飲食店は、街のインフラの一つ
村井:コロナ禍で店内飲食が難しかった時期に、テイクアウトやデリバリーを始めました。その取り組みを経て焼き鳥を家にお届けするという形ができたのですが、その延長で今少しずつ取り組んでいるのが焼き鳥体験です。焼き鳥を食べるだけではなくて、つくる過程も楽しんでもらおうという提案で、お子様へ向けた食育のような要素も入っています。
村井:卓上焼き器と冷凍生串をサブスクで毎月お届けするスタイルです。食べるときはもちろん、自分たちで焼くときに生まれるコミュニケーションも楽しかったりしますよね。
たしかに! BBQとかでも会話が増えて楽しいですね。
村井:スタッフも、「食べ物を売る」のではなく「コミュニケーションの場をつくっている」という気持ちで店に立っています。そうするとまた新しい視点でサービスの向上に励むことができて、仕事のやりがいにもつながると考えています。
店でも自宅でもおいしい焼き鳥が味わえるのはうれしいです。
村井:卓上焼き器を使って自分で焼いて食べるタイプと、店で焼いた後に瞬間冷凍した串を発送して湯煎で温めて食べるタイプがあるので、ライフスタイルに合わせて選んでいただくこともできますよ。
村井:雷の歴史は外食部門でスタートして、コロナを経て中食や内食部門も担うようになりました。今は焼き鳥体験のように体験を通して食育について考えたり、SDGsの観点からフードロスについても考えています。今後の構想としては、フードテック事業としてそうしたことに取り組んでいきたいと考えています。
食について、より広い視点での取り組みが増えていきますね。
村井:そうですね。ただ、地域に飲食店があるということは街のインフラの一つだと思っています。街に店があり続けることは大きな使命だと考えているので、広島で雷のファンをこれまで以上にたくさんつくっていくことで街づくりに貢献していきたいです。スタッフ全員で「自分たちが街の魅力をつくる役割の一部を担っているんだ」という思いを持って、これからも取り組んでいきたいですね。
創業45周年を迎えて大切にしたいこと
村井:父が創業して、私が事業継承をして今に至ります。小学生低学年の頃に雷へ来てワクワクドキドキしたことを覚えていて、その気持ちを大切に事業継承しました。だから今も、お客様にそうした気持ちになっていただける場所でありたいと思いながら、日々営業しています。あと、以前は焼き鳥といえば男性のお客様が多いイメージがありました。
村井:女性のお客様にも来てもらいやすい場所にしたかったので、内装の雰囲気を変えたり煙が洋服につきにくい工夫をしたりなど、いろいろな取り組みをしました。女性が社長である意味を考えて、女性でも訪れやすい店づくりを大切にしています。
45年間も続けるというのは簡単なことではないですね。
村井:そこは本当に、これまで関わってくれた社員やスタッフが積み重ねてきた結果だと思います。焼き鳥のおいしさはもちろんですが、きめ細やかなサービスも大事にしていて、常にお客様に寄り添ったサービスをしたいと考えています。
「飲食店は街のインフラである」という言葉を聞いて、思わず大きく頷きました。45年も店が続くということは、決して簡単なことではありません。我が街にそうした店があることに感謝しつつ、これからもおいしい焼き鳥を堪能し、一緒に訪れた人とのコミュニケーションの時間を楽しんでいきたいと思います。