13歳の頃からクラシックギターを始め、音楽大学卒業後スペイン留学を経て、ギタリストとして活躍している石原圭一郎さん。現在は広島市西区でギター教室も運営しています。その他にもソロリサイタルツアーや広島ギター協会会長を務めるなどさまざまな活動をしている石原さんに話を聞きました。
波瀾万丈なスペイン留学
石原さんがギターを始めたのはどんなきっかけからなのでしょうか?
石原:僕が13歳の頃、クラシックギターが売り場にあふれていたくらい日本で、はやっていたんです。当時、近所にギターが上手なお兄さんがいて、その方は女の子にすごくモテていたので、僕もやったらモテるかもしれないと思って始めました(笑)。
そうだったんですね。もともと音楽が好きだったんですか?
石原:姉が小さい頃からピアノをしていた影響で、僕も音楽教室に通って音楽には触れていました。
石原:レッスンのテレビ番組などを見て、独学で勉強しました。あとは、授業の一環としてもギターを学ぶ機会はありましたね。
授業でも取り入れられるほど、すごいブームだったんですね! その後もずっとギターに触れていたんですか?
石原:本当は違うことをしようとしていたんですけど、たまたま僕のいとこがエリザベト音楽大学にギターコースができるというのを図書館で見つけて教えてくれたんです。それを聞いて、これは行くしかないと思って。
なんだか音楽の道に引き寄せられた感じがありますね。
石原:僕もそう思います。大学4年間、ギターのことをしっかり学んで、卒業後はスペインに留学しました。
石原:最初の2年間は大学の先生の紹介で、音楽の有名な先生がいるスペイン地中海沿岸のアリカンテという地域にある音楽学校に通いました。
そうだったんですね。スペイン語はあまりなじみのない言語なので、大変だったことが多かったのではないですか?
石原:卒業後すぐに行ったので、なにも分からない状態でした。友人にスペイン語を教えてくれる人を紹介してもらい、語学を勉強しながら、音楽の学校にも通う日々を送っていましたね。
知らないことがたくさんある中でなかなかの挑戦ですね。
石原:でも言葉は普段の生活で慣れていったのでそこまで大変ではなかったんですけど、治安が日本と比べてあまり良くなくて。結構危ない目に遭いましたね。
石原:一度、銃で撃たれかけたことがありました(笑)。友達と一緒に、夜中に道端でバドミントンをしたことがあったんです。そしたらパトカーがやってきて、銃をかまえた警察官が私たちの方に向かってきたんですよ。たまたま僕たちがバドミントンをしていた場所が銀行の近くだったのが良くなかったみたいで。
石原:そうなんですよ(笑)。聴き取りに答えたり、パスポートを見せたりしたら、納得してくれて。最終的には警察の人が「僕たちが悪かったから、続けていいよ」って言ってくれたんです。
石原:なので素直にそのままバドミントンを続けましたね。でもさっきの出来事が怖すぎたので、動揺してなかなかシャトルがラケットに当たらなかったです(笑)。
石原:あとは飲み屋さんのカウンターで一人で飲んでいた時に、いわゆるカツアゲをしている人がいたんです。お客様一人一人に声を掛けてお金を取っていたので、次は僕の番だと思っておびえていたら、僕だけ話しかけられずに、飛ばされたんです(笑)。
石原:日本人は空手など武道系をやっていると思われていたみたいで。逆に怖がられました(笑)。
今では笑い話になる出来事ですが、本当にドラマみたいな出来事ですね。
お客様を楽しませる「演奏」と「トーク」
日本に帰ってきてどのように過ごされていたんですか?
石原:僕が帰ってきた時はちょうどバブル絶頂期で、ものすごく景気がいい時でした。なので演奏の仕事がどんどん入ってきて、デパートやレストランなどでの演奏もたくさんしました。
タイミングがいい時に帰ってこられたんですね。日本ではソロリサイタルツアーを行っているとのことですが、始めたのはどんなきっかけからなんでしょうか?
石原:自己表現の場を設けたいなと思ったのがきっかけです。僕の中で「コンサート」と「リサイタル」っていう言葉をあえて使い分けているんですよ。コンサートっていうのは、いろんな人にいろんなことを楽しんでもらう、リサイタルは、自分の自己表現を見せる場所というように自分の中で分けています。
石原:地方で開催した時に、主催の方が看板をつくってくださったんですけど、よく見たら「リサイタル」が「リサイクル」になってて(笑)。
石原:そうなんですよ。でも今となってはいい思い出です。
ソロリサイタルをやっていく中で、石原さん自身が成長したことはありますか?
石原:最初の頃はトークが苦手であまりしなかったんです。でも徐々に曲のことはもちろん、関係のない話も皆さんの前で話すようになっていって。あるギター誌の中で評論家が「トークが面白かった」とコメントを書いてくれていて、成長できたと思いました。
トークの部分も含め石原さんのリサイタルをお客様に楽しんでもらっているんですね。
石原:ソロリサイタル以外にも、被爆ギターを使用して平和コンサートなどもやらせていただいています。
被爆ギターと普通のギターはどんなところが違うのでしょうか?
石原:19世紀のギターをモデルにしたものなので少し小さめなんです。このギターは被爆して弾ける状態ではなかったんですけど、僕が所属している広島ギター協会のメンバーの協力で、ギターショップで修理をしてもらい、弾けるようになりました。
石原さんはどういった思いでこの被爆ギターを弾かれているんでしょう?
石原:被爆ギターを僕だけではなくて、若い世代の方にも弾いてもらって平和についても広めていく価値があるのではないかなと思っていますね。
石原ギター教室へ体験入学!?
ご自身の音楽活動以外にもギター教室をやられていると伺いました。
石原:そうです。以前は違う場所でギター教室をやっていたんですけど、現在の場所では15年くらいになります。ありがたいことに、口コミで広がっていって、現時点では40名くらいの生徒がいます。
ギタリストとして描く未来
石原:コロナが落ち着いたら、ソロリサイタルを再開したいですね。指が動く限り、皆さんの前でもっと演奏していきたいですし、このギター教室も続けられたらなと思います。
石原:ひと段落ついたら、ちょっとしたバーや喫茶店を営業しながら、たまにギターを演奏するなんてこともしてみたいですね。
スペイン留学やソロリサイタルツアーなど、何ごとにも前向きに取り組んできた石原さん。取材を通して、石原さんの温厚な人柄やクラシックギターに対する熱い思いが感じられました。人生を共に過ごしてきたクラシックギターで、これからも素敵な音色を全国へ響かせます。