
広島CLiP新聞編集部が位置するCLiP HIROSHIMAからほど近い、広島市中区国泰寺にある「名井(みょうい)珈琲商店」は、創業75年を迎えた自家焙煎コーヒー店。店内には20種類のコーヒー豆が並び、質や価格の良さが地域に支持されています。
店を切り盛りするのは、20年アメリカで舞台芸術に携わっていた3代目店主・名井陽子さん。老舗の味を守りながら、新しい挑戦も続けるお店を訪ねました。
ブレンド11種、変わり種や希少な豆も

コーヒーのいい香りが漂う店内では、11種類のオリジナルブレンドに加えて、ゲイシャやサクラブルボン、トラジャなど、その時期だけの限定豆も取り扱っています。その数は合計20種類ほど。
どのブレンドにも熱心なファンがいます。一方で、夏ならアイスコーヒーに適している豆やデカフェ用など、季節に合わせた豆も仕入れているので「今日は違う味を試したい」という方にもぴったり。

お客様はご近所の方が中心ですが、最近では新しい豆を求めて遠方から来る方もいるそうです。
店主の名井陽子さんは「うちのコーヒーの特徴は、ブラックでも飲みやすいさっぱりした味です。手に取りやすい価格で、本物志向。素材を大切にして、加工場直売です」と紹介してくれました。

名井さんは、同店の3代目店主。取材中も次々と話題が出てくる、エネルギッシュで明るい方ですが、実は店を継ぐまでの20年、アメリカで働いていたという経歴の持ち主です。
舞台芸術家からの転身、いちから学んだ自家焙煎
名井さんは大学卒業後、アメリカでパペットやコンテンポラリーダンスを取り入れた舞台芸術の仕事に携わっていました。日本でパペット劇といえば子ども向けですが、アメリカでは大人向けで前衛的なパペット上演があるそうです。
かつてはニューヨークのタイムズスクエアに存在し、アメリカでは伝説となっている宇宙や火星旅行をテーマにしたレストラン「Mars 2112」でも働いていたそう。

現在のコーヒー店経営、という姿からは少し意外ですが、2016年に名井珈琲の先代店主が急逝し、親戚の名井さんが店を引き継ぐことになったのです。
「アルバイトをしたことはありますが、コーヒー店を経営するとは思っていませんでした。でも、アーティスト時代の経験は今も『なぜこの商品を売るのか』などの経営哲学に役立っています」

店を継ぐため日本に戻った名井さんは、十日市町にあるコーヒー店の店主を師と仰ぎ、毎週、定休日に9年間通って、焙煎技術を学びました。
焙煎に使うのは、先代から受け継いだ40年ものの大きな焙煎機。
焙煎だけでなく、販売しているドリップバッグも名井さんが製造しています。
コーヒー、アート、人が集まる場所へ

名井珈琲商店では、コーヒー豆の販売以外にも、地下の倉庫を使って、アーティストを招いたイベントや展示を行っています。
今年(2026年)の4月には創業75周年を記念したイベントも開催しました。店の歴史を写真で振り返る企画や演奏会を企画し、来店した方においしくて楽しいひとときを提供しました。

上の写真は、75周年を記念して作ったドリップバッグのセット。昭和26年の創業当時から愛されている「あのころブレンド(モカミックス)」と、近年人気になっているエチオピア原産の高級コーヒー品種「このごろブレンド(ゲイシャ)」、さらにオリジナルの切手と絵葉書が入っています。
名井さんは「店を営業するのはすごく集中力が必要です。船の運転みたいなもので、状況に応じて対応しないといけない」と言う一方で、これからの抱負も話してくれました。

名井珈琲商店の今後は、まず今年の11月に地下倉庫を使った写真展を計画中です。さらに来年からは、月に1回程度、コーヒーの試飲会を開く予定です。会社帰りの人でも行きやすい夕方などを検討しているのだとか。イベントや新しい情報はホームページやインスタグラムで更新されるので、チェックしてみてくださいね。
味を守りながら、新しい挑戦も続けていく名井珈琲商店。おいしいコーヒーや、名井さんとの楽しいトークで元気をもらいに、ぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。