
2025年で放送25年を迎えた広島FM「大窪シゲキの9ジラジ」。中高生応援番組として、スタジオからの生放送はもちろん、学校の放送室から届ける「出張校内放送」など、直接10代と向き合うさまざまな取り組みを行っています。
「オオクボックス」の愛称でも親しまれる番組DJの大窪シゲキさんは、「第62回ギャラクシー賞」にてラジオ部門DJパーソナリティ賞を受賞。番組を通して長らく広島の10代に寄り添い、向き合ってきた大窪さんに、今の思いや番組のこれからについて尋ねます。
初代から受け継いだ、いろんな人の思いとともに走ってきた
大窪:ありがとうございます! 2000年に番組が始まって、初代DJから受け継いで僕は2007年から2代目DJとして担当させていただいています。放送開始からリスナーさんやスタッフさん、関係者の皆さんをはじめみんなで築き上げてきた25年だなと感じていて、関わった全ての人におめでとうございますという気持ちです。
大窪:2009年から番組に登場してくれている9ジラジファミリーのSUPER BEAVERと一緒に、8月8日に25周年ライブを開催したことですね。彼らがステージで「25年間何かを続けるのは意外とできることだと思うけど、25年経ったときにこんなにも多くの人が祝ってくれる状況をつくれているのは素晴らしい」と言ってくれて、僕もスタッフもうれし泣きしました。僕自身、始めることや終わることは簡単ですが続けることが一番難しいと感じていますし、番組に関わる人はそれぞれ自分に何ができるのかを考えてきた25年だったと思います。僕自身が携わっているのは18年ですが、初代から受け継いできたいろんな人の思いとともに走ってきた感覚があります。

駆け付けたリスナーで25周年ライブは大盛り上がり!10代のみんなを日々リスペクト
DJを担当するうえで大切にしてきたのはどんなことですか?
大窪:嘘をつかない、かっこつけないということです。DJになったばかりの頃はかっこつけていましたし、リスナーさんからすると僕の方が大人なので「教えてあげなきゃ」という感覚も少しありました。ただ10代のみんなから教えてもらうことが多いことに気づき、変わりました。リスナーさんとのやり取りの中で、一つの言葉が独り歩きしてしまうこと、言葉は人を守ったり癒したりもするけれど傷つけてしまうこともあるということを僕自身も経験しました。分からないことをみんなに教えてもらうようにした頃から、オオクボックスとしてリスナーさんとの距離が縮まったような気がします。年齢は関係なく、一人の人間として10代のみんなと接しているし、リスペクトしています。
大窪さんご自身の人となりが、番組の「らしさ」にもつながっているのだろうと思います。
大窪:そう言っていただけて嬉しいです。全国的に、特に10代に向けた番組で25年も続けられるのは珍しいことなんです。リスナーさんとの年齢が離れていくので、DJを交代するかという話もありました。ただ、僕たちは広島県内の中学校や高校へよく行きますが、学校では校長先生や教頭先生が生徒の皆さんと楽しそうに話している様子を見かけます。だからDJも、リスナーさんと年が離れている世代の人がいても良いんじゃないかと思って。僕自身としては、還暦ぐらいまではDJを担当できたらいいなと思っています(笑)。10代はもちろん、元10代のみんながふらっと実家や母校へ行くように、番組へも寄ってもらいたい。「オオクボックス、まだいるじゃん!」って言いながら、聴いていた頃の自分の感情を思い出せるような場所になればいいなと思っています。
変わることも大切ですが、変わらないものがあることも大切ですね。
大窪:「ただいま」と「おかえり」が言い合える場所が広島のメディアに存在しているのは、僕らとしてもとてもうれしいことです。
リスナーにとって、ラジオが安心できる場所になれるように
中高生リスナーさんから届くメッセージは、大窪さんがDJに就任された18年前と今とで変化はありますか?
大窪:恋愛や部活、勉強やテスト、親や友人との関係性に悩んでいるところは基本的には変わらないと思います。ただ10代のみんなのやることが増えて、忙しくなっているという変化は感じます。学校の授業でも金融や防災について学ぶようになったり、家に帰るとスマホでSNSをチェックしたり。いろんなものが溢れていてずっと外とつながっている状態なので、部屋で一人で自分の未来を思い描いたり自分と向き合ったりする時間は減っているような印象です。


大窪:SNSだと、本人にとって喜ばしいことでもみんなが同じ気持ちで受け取れないこともあります。でも「9ジラジ」はみんなの喜びを全肯定できるので、これからはラジオが気持ちにグッと寄り添ってあげられる世界をつくれるのではないかと考えています。家でも学校でもない、自分が素直になって安心できるサードプレイスにラジオがなれればいいなと思っています。
大窪:2つあって、一つはリスナーさんから番組に「死にたいです」というメッセージが届いたことです。そのときは、僕やスタッフ、リスナーさんも一緒に向き合って思いを届けて、今はその子も地に足をつけて生きてくれていることが一番うれしく安心しています。同時に、番組が相談したり信頼してもらえたりする場所になったんだという実感もありました。「ここに行けば大丈夫」という場所があることをもっと広く知ってもらわないといけない、とも感じました。だからラジオだけではなくテレビや新聞、イベントなど、いろんなメディアや場所とミックスしていきたいと思い、そこから番組自体もラジオを飛び出していくようになりました。
番組ディレクターとの打ち合わせ。大窪:もう一つは、ギャラクシー賞を受賞したことです。これもリスナーさん、スタッフさん、スポンサーさんやアーティストさん、関わる人全員でいただいた賞だと思っています。街なかでも「受賞おめでとう!自分もうれしいよ!」と喜びの声を届けてもらえるんですよ。人のことで喜べるのって素敵なことですよね。僕も広島FMも「9ジラジ」ももちろんうれしいのですが、皆さんが自分事のように思ってくれていることが本当にうれしかったです。
第62回ギャラクシー賞贈賞式 ©放送批評懇談会周年は3月まで続きます。今後どんなことにチャレンジしていきたいですか?
大窪:12月21日に25周年の感謝祭イベントを広島クラブクアトロで開催します。10代リスナーを無料で招待する第1部、大人リスナーとカンパイしながら過ごす第2部の2部制となっているので、ぜひ一緒に楽しみたいです。他にも、番組としてはこれまで校内放送や文化祭、体育祭などで広島県内の学校に伺っていますが、いつか修学旅行でも10代のみんなと過ごしてみたいとスタッフと話しています。僕自身としては先ほどお伝えしたように還暦までラジオを続けたいので、これからも頑張っていきたいと思っています!