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広島文化学園大学 講師 湯浅理枝さん|「できないではなく、どうすればできるか」学生たちを成長させる合言葉

広島市安佐南区長束にある広島文化学園大学。2020年、コロナ禍で多くの学校行事が中止となり、学生同士の交流も少なくなった中、コロナ禍でも学生たちと一緒にできることはないかと考え、「あかねプロジェクト」を立ち上げました。湯浅さんがこのプロジェクトを通して学生たちに感じてもらいたい思いを尋ねました。

講師と大学院生⁉

湯浅さんが大学の講師になろうと思ったのはどんなきっかけからですか?

湯浅:大学の講師になる前は、10年間公立の小学校や附属の小学校で教諭をしていたんです。附属の小学校に勤めていた時に、体育の研究をしていて。大学の先生方にご指導いただく機会が増え、体育の授業についていろいろなことを教えてもらいました。ある日、広島文化学園大学でダンスなど体を動かす身体表現の授業を担当できる教員が必要ということでお声掛けをしていただき、ご縁あって今ここでお世話になっています。

小学校教諭時代にダンス指導をしていた様子。

そうだったんですね。小学校教諭を経験したからこその指導法はありますか?

湯浅:実際に現場に出て働いていた経験を話すだけではなく、理論と経験を結び付けながら伝えられるよう心掛けていますね。

大学の授業での様子。
湯浅:今の自分の力ではまだまだ足りないことが多いと思って、私自身も今大学院に通っているんです。2021年3月に修士課程が修了して現在は博士課程に進んでいます。まわりの皆さんにご配慮いただきながら大学の授業や勤務と並行して大学院で勉強させていただいています。
2021年、ゼミ生の卒業と一緒に湯浅さん自身も大学院の修士課程を修了。

えぇ!そうなんですか。大学院で何を学んでいるんですか?

湯浅:リズムダンスの授業について研究しています。まずは指導をして、そこから子どもたち自身でオリジナルのダンスを創造していけるような授業がいいんじゃないかなって思っていて。どうしたら子どもたちが創造的に活動できるのか?そのプロセスを明らかにして、今後の授業のヒントになればいいなと考えています。

小学校とオンラインでつながり、ダンスの指導もしています。

直接触れ合えなくてもつながることができる「手」

あかねプロジェクトが始まったのはどんなきっかけからですか?

湯浅:コロナ禍でも何かできることはないかなと思ったのが始まりです。大学祭は中止になっても先輩たちがつないできたことを別の形でもいいから行いたいという大学祭実行委員の学生たちと、人が集まらなくても何かを集めてメッセージ性のある作品をつくるのはどうだろう?と話し合いました。

2020年はどういったことをされたんですか?

湯浅:「手」をテーマに折り鶴ツリーと手形のメッセージボードを作成しました。手でつくった折り鶴や手形アートを一つにすることで間接的に触れ合い、みんながつながることができると考えました。

湯浅:学生たち主導で近隣の幼稚園や小学校にアナウンスしたり、地域の方々へのお声掛けもしたりしました。そうしたら近くに住んでおられるおばあちゃんがわざわざ大学まで折り鶴を持って来てくださり「もう少し折れるから紙をください」っておっしゃったんです。活動を知っていただき、色々な方に協力していただけるプロジェクトになっていると実感できたことがすごくうれしかったですね。

このプロジェクトを通して地域の方々と関係を築けるのは素敵なことですね。

学生たちが一つ一つ手作業で折り鶴をつなげました。
折り鶴2万5千羽、高さ3.5mのツリーが完成。イオンモール広島祇園とHBGホールにて展示されました。
手形同士であれば、たくさんの方とつながることができると考え作成したメッセージボード。
学生たちと発案!折り鶴を再生してつくった万年カレンダー。

学生たちの思いが全国に

今年のあかねプロジェクトに携わっている学生の方にもインタビュー!

学芸学部自治会長の松平拓大さん、事務局長の鷲見詩音さんに話を聞きました。

左から鷲見詩音さん、松平拓大さん。

2021年のあかねプロジェクトに参加しようと思ったのはどんなきっかけからですか?

鷲見:コロナウイルスの影響がなく、普通に学校生活が送れていたら、あかね祭という大学祭や「こどもまつり」という子ども学科の行事で、学生たちや地域の方々とたくさん交流ができていたはずなんですけど、それができなくて。落ち込んでいるときに湯浅先生が「このプロジェクトを通してたくさんの方と交流してみるのはどう?」と声を掛けてくれたことがきっかけです。ぜひやりたい!と思いました。

松平:学生生活を送るなかで「なにかやり遂げられるものをやろう」と考えていたので、湯浅先生から声を掛けてもらった時はうれしかったです。

そうだったんですね。2021年のプロジェクトテーマは何ですか?

松平:昨年のあかねプロジェクト2020が「大学に人は集まらなくても、学生や地域の方々と関わることができる」という大きなテーマだったので、今回もその思いを引き継ぎました。さらに「広島」「コロナに打ち勝つ」「つながり」この3つの思いもプラスして、距離をとりながらも新たなつながりや希望が芽吹くようなメッセージを発信したいと考えました。

なるほど。このテーマをもとに今回はどういった取り組みをされるんでしょうか?

松平:とても小さいペットボトルキャップを少しずつ集めて一つの絵にすることで、大きく力強いメッセージを届けられるのではないかと考え、2021年は「エコキャップアート」に決まりました。

このデザインは学生さんたちが考案されたんですか?

鷲見:そうです。何人かのデザイン案を組み合わせて作成しました。

「広島」が連想されるものや「つながる」を表現した握手など、学生の思いがつまったデザイン。
どこの部分に何色のペットボトルキャップを当てはめるのか、みんなで共有しています。

すごく色鮮やかなデザインですが、それに合ったペットボトルキャップを集めるのは大変じゃないですか?

松平:キャラクターの顔に使う色が「うすだいだい」なんですけど、その色のペットボトルキャップは存在しないのでそこはベージュでカバーしたりして。

ベージュ!?私見たことあるかな~(笑)。

松平:お茶や紅茶系など意外とあるんですよ!

あぁ、確かに!言われてみれば紅茶系はそうですね。ペットボトルキャップはどうやって集めたんですか?

鷲見:学生や近隣の幼稚園、小学校などに出向いて回収の協力をお願いしました。またたくさんの方にこのプロジェクトを知ってもらうために、ラジオにも出演させていただいてプロジェクトについての説明をしました。そうしたら大きな反響があって全国の方から大学にたくさんのペットボトルキャップが届いたんです。

ペットボトルキャップは作品展示後「世界の子どもにワクチンを委員会」へ寄付する予定だそう。

全国から!?反響すごいですね!

鷲見:お手紙までいただいて、とてもうれしかったですね。

広島だけにとどまらず、全国から応援していただいているプロジェクトなんですね。

プロジェクトを進めていく中で大変だったことは何ですか?

松平:緊急事態宣言で思うようにペットボトルキャップを回収することができなくて、製作が1ヶ月遅れてしまったことです。でも県外からキャップを送っていただいたように、このコロナ禍でも遠くの人とつながりができたことが本当にうれしかったですし、何としてでも完成させなければという思いが強くなりましたね。

ペットボトルキャップの分別作業もかなり大変だったそう。「特に白が多いので目がおかしくなりそうでした(笑)。」と鷲見さん。
専用のシートにペットボトルキャップをはめていく作業をしている様子。たくさんの学生たちが空きコマを利用して作成に携わりました。
みんなで協力して完成間近!
完成した作品がこちら! 8月7日(土)~9月20日(月)まで、イオンモール広島祇園にて展示いたします。
このプロジェクトの思い出が手元に残るよう、記念のしおりを作成。エコな紙を使用するなどSDGsへのこだわりも!
学生たち手づくりの回収ボックス!展示会場でもペットボトルキャップを集めています。
8月7日(土)8日(日)は学生のスタッフも会場を盛り上げてくれました。

将来の夢に向かって一歩前進

このプロジェクトを通して得たことはありますか?

松平:電話対応や学生に向けたアナウンスなど、社会に出ても役に立つようなことをこのプロジェクトを通して学ぶことができました。僕は小学校の教員を目指しているので将来、授業でエコキャップアートのような大きな作品を子どもたちとつくることができたらいいなと思います。

鷲見:私はこのプロジェクトで「つながり」をより一層意識するようになりました。将来、特別支援の教員になりたいと思っているので、この経験を生かし、学校の中だけではなく地域との関わりも増やして一つの作品をつくることができたらいいなと思います。

学生のうちに経験できているのはすごくいいことだなと感じます。夢に少しずつ近づいていますね。湯浅さんは今後あかねプロジェクトを継続していくために、どのような思いを伝えていきたいですか?

湯浅:今回のプロジェクトに携わっている学生たちのように、「できないではなく、どうすればできるか」と考えてプロジェクトに取り組んでもらえたらいいなと思いますね。今後も授業やプロジェクトなどで学生と一緒にチャレンジできることを探していきたいです。10月からは、安佐南区山本にあるハーベストタイムさんにご協力いただき、子ども学科の2年生が考えたお菓子ギフトをつくるという新たなプロジェクトが動き出しているのでまたがんばります!

コロナ禍でもつながることができるこのプロジェクトは、地域の方々だけではなく全国の方々にも思いを届けることができていると感じます。学生たちが成長できるようサポートし続ける湯浅さん。今後のプロジェクトも楽しみです!

広島文化学園大学 講師

湯浅 理枝さん

小学校教諭時代の研究をきっかけに大学の講師に。現在は講師でありながら、自身も大学院に通い勉強を続けている。コロナ禍でも学生たちと一緒にできる「あかねプロジェクト」を立ち上げ、地域に元気を届けている。

広島文化学園大学 長束キャンパス

広島市安佐南区長束西3丁目5-1

TEL.082-239-5171

アクセス
広島CLiP新聞編集部(CLiP HIROSHIMA)から車で約25分