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あさひチョコレート工房×カフェ|作る人も、食べる人も幸せに〜竹原発本格ビーントゥバーチョコレート 

国道2号の田万里バイパス沿いに、多機能型事業所あさひ(社会福祉法人平成会)が廃校を利用して営むチョコレート専門店「あさひチョコレートカフェ」があります。施設の職員と利用者さんが力を合わせて作るビーントゥバースタイルの本格派チョコレート「あさひチョコレート」はどのようにして誕生したのでしょうか。そしてそのおいしさの秘密は?「あさひチョコレートカフェ」の舵取りをする多機能型事業所あさひの岩岡智之さんにお話を伺いました。

きっかけは西日本豪雨災害での経験

どんなきっかけで多機能事業所がチョコレートを作ることになったのですか?
岩岡:当事業所の目的は、地域で暮らしたいと願う障がいのある方が働く機会を得られるようサポートをすることですが、2018年の西日本豪雨災害では地域一帯の交通が麻痺し、利用者さんにお仕事が提供できなくなりました。その経験から災害に左右されにくい自主製品の製造・販売事業を始めようとしたことがきっかけでした。

それが「チョコレート」になったのは、たまたまその話し合いをしていた頃に見学に来ていた特別支援学校の生徒さんが「ショコラティエがいいのでは?」と発言したことがきっかけでした。利用者さんたちからも「やってみたい!」という声があがり、チョコレートの製造・販売の事業化に挑戦することになりました。

工房とカフェは2005年に廃校となった旧田万里小学校2階の教室を利用している。
事業化の実現には、チョコレート研究の第一人者と言われる佐藤清隆先生(広島大学名誉教授)の存在が大きかったそうですね。
岩岡:僕たちは製菓について全くの素人だったため、途中で何度も諦めそうになったのですが、そんなとき、佐藤先生の存在を知りました。ワークショップに参加してチョコレート作りについて相談したところ、「板チョコまでは絶対作れるから」とビーントゥバースタイルを提案していただき、さらに技術面でも全面的にサポートしてくださることになりました。
佐藤先生は利用者さんの得意を活かせるビーントゥバースタイルのチョコレート作りを伝授。
「ビーントゥバー」スタイルとはどんなチョコレートですか?
岩岡:「ビーントゥバー」とは、「Bean(カカオ豆)からBar(板チョコレート)ができるまで」を自社内で一貫して行う製造スタイルのことをいいます。チョコレートを作る工程には、焙炒したカカオ豆のハスク(皮)とチュニブ(胚芽)を取り除く作業、ペーストにしてコンチング、テンパリングをして成型する作業など根気のいる作業が多いのですが、単一作業が得意な利用者さんはそういう作業も楽しみながら取り組んでくれるので、それが私たちの強みにもなっています。

利用者さんの得意を活かしたチョコレート作り

取材の日も、豆の皮を剥いでチュニブを取る作業に黙々と取り組んでいた利用者の皆さん。
なるほど!利用者さんの得意が、おいしいチョコレート作りに繋がっているのですね。
岩岡:はい。カカオ豆のハスク(皮)とチュニブ(胚芽)を丁寧に取り除くことで、ざらつきがなく、口当たりの滑らかなチョコレートに仕上げることができます。
向かって右の白いトレーにあるのが取り除いたチュニブ。数ミリしかないチュニブを取り除くのは集中力と根気のいる作業。
他にもこだわっていることはありますか?
岩岡:「コンチング」という砂糖とカカオをかき混ぜてすりつぶし練り上げる作業があります。その時間を短くすると作業効率を上げることはできるんですが、佐藤先生に教えていただいた丸2日間という時間を守ってしっかり練り上げることで、とろりとした舌触りを生み出します。おかげであさひチョコレートは見た目も美しく、口当たりもとてもいいと評判なんですよ。
成型したチョコレート。見た目の美しさも味も、佐藤先生やプロのパティシエさんにお墨付きをいただいたそう。
おすすめのチョコレートはありますか?
岩岡:僕の個人的な好みになりますが、ベネズエラとインド産のカカオ豆を使用したチョコレートです。「品がある」とか「フルーティ」とかいろんな表現があるんですが、本当においしいのでぜひ食べていただきたいです。
パッケージのイラストは、利用者さんが描いたイラストの中から採用。どれもカラフルでキュート。
ここではカフェも運営されているのですね。
岩岡:はい。チョコレートの直売のほか、ガトーショコラやプリンなどのチョコレートスイーツやチョコレートドリンクを楽しんでいただけます。春や秋は窓からの景色も美しいですし、特に窓辺の席は日差しがポカポカと暖かくて気持ちがいいんですよ。
窓から暖かい日差しが降り注ぐ店内。家具や椅子は、閉館する施設の備品を譲り受けたものを補修するなどして使用しているそう。
カフェメニューは写真のショコラショーや利きチョコのほか、チョコレートプリンやガトーショコラも。

チョコレートに込めた幸せの連鎖

「利用者さんたちと一緒にチョコレートを作るのはすごく楽しい」と笑顔の岩岡さん。
あさひチョコレートの活動が始まってから、利用者さんに変化はありましたか?
岩岡:メディアに取材いただく機会も増えて、知人や地域の方に「テレビや雑誌で見たよ」とか「ラジオを聞いたよ」と言われるとすごく嬉しいようで、それがモチベーションにもつながっているようです。
体調不良などで作業に参加できないとわかるとすごくがっかりするので、それだけ誇りを持って作業をしてくれているのではと感じています。
最後に今後の展望をお聞かせください。
岩岡:何もわからないところからのスタートでしたが、佐藤先生をはじめ、たくさんの人のおかげでなんとかここまで辿り着くことができました。これからもそうしたご縁を大事にしながら、自分たち自身がもっともっと成長して、地域を代表するチョコレートブランドに育てたい。そして地域の一員として、地域の方々と共に竹原を元気でハッピーな街にしていけたらと思っています。
各地のマルシェ出店やキッチンカーなど、活動の幅も広がっている。

岩岡さんのお話の中心にあるのは、いつも利用者さんへの温かい眼差し。互いに信頼し、思いやる関係性の中で生まれるチョコレートは、作る人はもちろん、食べた人もハッピーな気持ちにしてくれます。利用者さんのイラストが採用されたパッケージもおしゃれでお土産にもぴったり!ドライブがてらぜひ訪れて、カフェで本格派チョコレートスイーツも堪能してみてくださいね。

あさひチョコレート工房×カフェ

広島県竹原市田万里町1241

TEL.0846-24-6012

OPEN.11:00〜16:00

定休.水曜・日曜 ※詳しくは公式SNSにてご確認ください。

アクセス
山陽自動車道高屋ICより車で約15分