
広島電鉄・古江電停から徒歩3分ほど。住宅街の中にまるでカフェのような趣で佇むのは、だしの専門店『古江のリチャード』です。1950年に創業し業務用だしの卸を行う『寺地花かつお』が2010年に構えた一軒です。
毎日の食卓に欠かせない存在だけれど、毎日取るのはちょっと面倒。そんなイメージが少なからずあるだし。「簡単においしく味わえるんですよ」と、店長の寺地美恵子さんが店に立ち、だしの魅力を伝えています。
だしを家庭でも使いやすい存在に
寺地:「だしを取るのは大変」というイメージがあると思うのですが、もっと簡単に日々の食事に取り入れてもらいたいと考えてオープンしました。家庭でも使いやすい個包装の使い切りサイズでだしパックを作っているのが特徴です。店では、私がブレンドしたオリジナルのだしを中心に取り扱っています。
「おいしいだしを使った料理は、本当に味わい深くなりますよ」と店長の寺地美恵子さん。寺地:おすすめは「美魔女だし」です。本枯節と呼ばれる最高級のかつお節、まぐろ節、さけ節、羅臼昆布(らうすこんぶ)をブレンドしていて、優しい味わいに仕上げました。茶碗蒸しやお吸い物、お味噌汁に使うと最高においしいんですよ。店では、添加物を使わず味を付けていない、そのままの味わいを楽しんでもらえるだしを置いています。
だしパックで簡単にだしが取れる「美魔女だし」。鍋に1袋入れ、弱火で4~5分煮てから取り出せばOK。「だしは肌や健康にも良いからね」と話す寺地さんによる、インパクトあるネーミングが特徴的。
削り節や粉末もあり。店主の名前を冠した「耕一郎節」(左)、「魔法の粉」(右)。専門家に聞いた簡単でおいしいだしの取り方
せっかくなので、寺地さんにだしの取り方を教えてもらいました!今回は難しく感じる人も多そうな、削り節でのおすすめの取り方を伝授してもらいます。
まずは半日程度、昆布を水に浸けておきます。汁物3人分で水600cc、昆布2gが目安。火にかけて沸騰したら昆布を取り出す。
削り節15gを入れ、弱火で3~5分ほど煮ます。
ザルやこし器で漉して完成!
取り立て&出来立ての温かいだしを、しっかり試飲させていただきました。優しいのにコクも感じられて、だし好きの私としてはいつまでも飲んでいたいくらいです…!
寺地:ありがとうございます。だしを使えば塩や醤油を控えめにできるので、健康を意識している方にもおすすめしています。
おいしいだしを手軽に取れるのは、家庭においてはやっぱり重要ですね。
寺地:そうですね。だしパックを自宅で使うのはもちろん、ギフトで選ばれる方も増えてきました。日持ちも約半年と長いので、そういう点からも選んでいただきやすいと思います。かつお節や昆布自体も体に良いのでぜひだし殻も食べてほしくて、お店ではだし殻を使ったふりかけの作り方などもお伝えしているんですよ。
寺地さんが商品を卸しているうどん屋で出るだし殻は、以前広島CLiP新聞で取材した『夜明けのジョニー農園』が飼育する鶏のエサにも再利用されています。
だし殻を加え発酵させたエサが鶏の腸内環境を整える役目も果たしているそうです。(写真は『夜明けのジョニー農園』のジョニーさん)だしのおいしさは、食育にも
寺地:店をオープンさせたもう一つの理由に、お子様にだしの味を知ってもらいたいという気持ちもありました。カルシウムも摂れるし離乳食にも使えるので、だしが食育にもつながればと考えていたんですね。店ができて16年目に入った今、来て下さるお客様は年齢さまざまで、赤ちゃん連れの方も多くいらっしゃいます。「離乳食にはだしをどのように取り入れたらいいですか?」と聞かれることが、私は大好きなんですよ。赤ちゃんもどんどん大きくなって成長を感じられますし、「ここのだしで大きくなりました」と言っていただくと、お店をオープンして良かったと本当に思います。
寺地:私は人との出会いやご縁で人生が成り立っていると思っているので、この店でお客様とコミュニケーションを取れるのがとてもうれしいです。店が心地よい空間であることをこれからも大切にしながら、だしの魅力や食事のことをたくさん伝えていきたいです。
お客様からの声に応えて、現在は「おでんだし」や「お味噌汁のだし」、「お鍋のだし」といった専用のだしも店内に並ぶ。だしの取り方を教えてもらっているとき、だしの良い香りに包まれながら飲んで味わって、取材中ながらもすっかり癒された編集部スタッフ。そんな感覚になれるのも、だしの魅力かもしれません。まだまだ寒く、日中の寒暖差も大きい今。だしやだしを使ったメニューで心もお腹も温めてくださいね。