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お茶の時間 雲間|忙しい手を止めてゆっくり楽しむお茶の世界

スマートフォンを片手に、常に「効率」や「正解」を追い求めてしまう現代の私たち。そんなせわしない日常から抜け出して一歩足を踏み入れると、そこにはまるで時間が止まったような落ち着いた空間が広がっています。店主の寺本紫織さんが迎えてくれるこの場所は、日本茶、台湾茶、中国茶を季節にあわせて最も美しい瞬間を提供してくれる場所。中にはここでしか味わえないお茶も。ぜひ、旅行気分でお楽しみください。 

はじまりは、各地に出向いた「流しのお茶屋さん」

日本茶はもとより、本場の中国茶、台湾茶を楽しめる「喫茶店」は広島では希少。「もともとお茶好きだった」と話す寺本さんが『雲間』を開いたのは、味覚だけでなく心にまで浸透するお茶の魅力を伝えていきたいという思いからでした。

「友人からお土産でもらった台湾茶のおいしさに衝撃を受けたんです」と話す店主の寺本紫織さん。「そのおいしさに魅了され、台湾のお茶屋にまで行きました」

もともと広島大学で学内誌の制作に携わり、様々な研究者を取材していた寺本さん。その中で理学部の先生たちと出会い、市民とざっくばらんに科学を語り合う「サイエンスカフェ」の活動を始めます。

一方で当時、台湾茶との衝撃的な出合いをきっかけにお茶の魅力に強く惹かれていた寺本さんは、店舗を持たない移動お茶屋「温泉茶(おんせんちゃ)」の活動もスタート。

寺本:お茶を淹れると湯気が立ち、それを飲んだ人が温泉に浸かったときみたいに「はーっ」と一息つくんです。そこで『温泉茶』と名付け、いろいろなイベントに足を運び、人々の緊張感がほころぶ瞬間にお茶の効果を感じていました。

転機となったのは、ノーベル賞受賞などの大きな科学イベントに向けた会場探しに苦労していたときのこと。「それなら自分でお茶も淹れられて、サイエンスカフェもできる場所を気楽に開けばいいじゃない」と一念発起しました。ノウハウゼロからの挑戦でしたが、周りのサポートを受け開店することができました。 

店内は一枚板の大きなテーブル席と2名掛けの1席
お茶を飲みながら最先端科学の話を聞く、不定期開催のサイエンスカフェ。

ゆっくりお茶との会話を楽しむ自分時間

店内で飲むことができるお茶は日本茶・中国茶・台湾茶の10種類前後。「いまもっとも旬なお茶」を提供するためメニューは変動します。お茶は季節に合わせて飲み頃、飲み方も変わるそうで、実際の茶葉を見ながら今日の出合いを楽しみます。

寺本さん厳選の茶葉がずらり。

この日選んだのは中国湖北省の『白茶』。雪深い山の野生茶樹の芽をそっとしおらせ、乾燥させたお茶で、青りんごのように清らかな香りが特徴です。

一煎目は寺本さんが淹れてくれます。二煎目以降は自由にお湯を注いで自分のペースで。適温に保たれた大山の天然水で心ゆくまで堪能できます。

寺本:『白茶』は、揉まずに日陰でゆっくり影干しして作られるため、抽出も驚くほど緩やか。あえて急須の蓋をせず、ドライフラワーのような葉っぱがゆっくりとふやけ、ほどけていく美しい姿をぼんやりと眺めながらお茶の時間を楽しんでもらえたらと思います。「淹れ方の正解」に縛られず、お湯を注ぎ足しながら一日中付き合えるのは、まさに自然そのものを体の中にゆっくりと取り入れるような感覚なんです。
お湯を含んだ白茶の葉が、少しずつ元の美しい姿へとほどけていく様子も、このお茶の魅力のひとつ。 

6月からは、ファン待望の『台湾茶祭り』がスタート。 高山茶と言われる、標高1000m以上の茶畑で育つ烏龍茶は、「どうしてお茶からこの香りが出てくるの?」と思うほど、花や果物みたいな香りがするそうです。

寺本:台湾茶は、茶葉も畑で育ったままの形に開いて美しいんです。『聞香杯(モンコウハイ)』という器に一度お茶を注ぎ、それを飲むための器『飲杯(インハイ)』に移して、残った香りを楽しみます。香りを大切にするお茶なので、その台湾茶の香りを皆さんに体験していただけたらと思います。
まるで花のようにふんわり広がっていく台湾茶の茶葉

歴史ある茶葉を気軽に生活に取り入れて

お気に入りの茶葉を選び、ゆっくりと注ぎ、ふわっと立ち上がる香りや味を楽しむ…。そんな空間を提供する『雲間』。お茶を飲みながら寺本さんとの会話を楽しむ方や、静かに読書される方など、それぞれのスタイルで過ごします。

茶葉や茶器は購入することも可能。
お茶を楽しむ際に注意するべきことはありますか?
寺本:気になりますよね。ワークショップをやってほしいという声もいただきます。お湯の温度や茶葉の量などはお伝えしていますが、あまり形に捉われてほしくないというのが本音です。それぞれの好みもありますし、色々なパターンで楽しんでいただけたら。自分なりの淹れ方を研究するのもいいですね。毎回、違った味に出合えるのもお茶の魅力なんじゃないかなと思っています。
茶器にもこだわり、視覚で楽しむことも大切にしています。

日々、なかなかうまくいかなくて、どんよりした日々だとしても心にぱっと、雲間から光が射すような瞬間があれば生きていけるそういう時間をここで過ごしてほしい…。そう願って名付けられた『雲間』。「TPOで選んでいいと思います。喉の渇きはペットボトル、心の渇きは急須のお茶でゆっくり癒してもらえたら」と寺本さん。

私たちの生活に馴染みのあるお茶だからこそ、意識して取り入れることで、ちょっとした幸福感が手に入る…。遥か遠く、中国の山奥で何百年もの時を刻んできた茶樹の歴史に思いを馳せながら 、一杯が紡ぐ贅沢な時間に、ただ静かに身を委ねてみませんか。 

お茶の時間 雲間

広島県広島市中区白島北町16-22 

OPEN.13:30-18:00

定休.日・月曜

アクセス
広島市内から車で10分