
広島市安佐北区落合、JR芸備線玖村駅近くにある『くらしの道具屋 TUKURITE』は、古家具の修理・販売やオーダー家具製作、さらにリフォームまで幅広く手掛けるお店です。店内には無垢材の温もりあふれるオーダー家具や古道具が並び、訪れる人々を引きつけます。また、使わなくなった家具の引き取りやリメイクにも力を入れており、思い出が詰まった家具を現代のライフスタイルになじむデザインによみがえらせています。
お店の前に並ぶカラフルな椅子は、もともと学校で使われていた椅子をリメイクしたものだそう。店内に入ると、奥にある工房で作られたリメイク家具や雑貨がずらりと並びます。無垢材を使用した家具は一つとして同じものはなく、木目の美しさや手仕事ならではの温かみが魅力的です。

今回お話を伺ったのは、代表取締役の古川さんと取締役の新田さん。古川さんは大手家具メーカーで約10年修行したのち独立。2017年に『株式会社TUKURITE』を設立しました。翌年、広島豪雨災害で東広島市の工場が半壊したことをきっかけに、現在の安佐北区落合に新工房をオープンしました。
お店のロゴマークは、イラストレーター・グラフィックデザイナー『Krimgen(クリムゲン)』さんが手掛けたもの。温もりのあるタッチが『TUKURITE』の世界観とマッチしています。
写真左:取締役の新田さん、写真右:代表取締役の古川さん思い出の家具を再生し、次世代へ
『TUKURITE』では、「おばあちゃんが使っていた家具を修理して受け継ぎたい」「子どもの頃使っていた机をリメイクしたい」といった依頼が多く寄せられます。大切な家具を今のくらしになじむ形によみがえらせるのが『TUKURITE』の魅力です。
「どういった使われ方をしていたんだろう?」と過去に思いをはせるのも、古家具の醍醐味。新田:古いものには古いものならではの魅力があって、使い込まれたからこそ出る風合いは新しいものでは決して生み出せません。古家具にはそれまで使われてきた歴史があり、次の方が使うことでその歴史が引き継がれていくんです。私たちは、風合いを残しながらデザイン性と使い勝手を高めて、また何十年も使い続けられる家具へと再生しています。
写真左のロッキングチェアと右の長椅子は、元の形を残しつつ、表面を磨き直し、破れた部分を修理することで再び魅力を取り戻しました。また古物商の資格を活かし、古家具の引き取りや市場での仕入れも行っています。「思い出が詰まった家具を手放すのは心苦しいけれど、違う形で誰かに使ってもらえたら嬉しい」という思いから、次世代に繋げる活動に力を注いでいます。

リフォームで空間を彩る提案も
『TUKURITE』では家具の制作だけでなく、店舗の内装や、個人宅のリフォームなども承っています。「家具の新調やリペアに合わせて部分的にちょこっとリフォームしたい」といった細かな要望にも柔軟に対応しています。
古川:この近くのうどん屋「わだち草」さんや、お店の目の前にあるパン屋「BREAD FACTRY K」さんをはじめ、近隣のお店の内装もいくつかお手伝いさせていただきました。
人気のパン屋「BREAD FACTORY K」さんのパンを並べる平台を制作されたそうです。古川:他にも個人宅の和室だった一部屋をセレクトショップ風にしたり、ベランダをちょっとしただんらんスペースに改装したり、お客様のご要望を丁寧に伺いながら最適な提案ができるよう心がけています。
元々は和室だった空間が、モダンなセレクトショップ風に生まれ変わった一室。古川:過去にはリフォームの相談を受けた際、単に家具の配置を変えただけで解決したこともあります。無理にリフォームを勧めることはないので、安心してご相談いただきたいです。
奥田民生さんや吉川晃司さんが若い頃に通っていたという、歴史ある木管楽器店のデザイン看板も制作。看板には、テレビ番組で来店された際に奥田民生さんが残した直筆サインが!今後は古材の活用にも挑戦
工房の一角には古い木材が集められたスペースがあります。家の解体や古家具の修理で出た木材は、多くが廃材として処分されるそうですが、『TUKURITE』では再利用を目指しています。

古川:確かに古い木材ですが、一つ一つ個性や表情があって魅力的だと思うんです。こういった木材はホームセンターでは手に入りませんし、僕らには“作る技術”があります。だからこそ、これからはもっと古材を集めて、再利用する活動を広げたいですね。
こちらの掛け時計は、元の木材の形を活かして作られた唯一無二のフォルムが印象的です。古川:どんなものにも、作った人や使ってきた人の思いが詰まっています。それぞれのストーリーに思いをはせながら、新しい形に生まれ変わって新たな物語が生まれると嬉しいですね。

完成した家具を引き渡す際には、涙を流して喜ぶお客様もいるそうです。そんな瞬間が、古川さんと新田さんにとって「この仕事をやっていて良かった」と実感するひとときだと言います。『TUKURITE』の家具は、手仕事の温もりと思いが詰まった唯一無二の存在です。広島の地で、これからもくらしに寄り添う家具と空間を作り続けていきます。