
のどかな風景が広がる広島県庄原市の七塚原高原は、明治33年に日本で初めて国営の種牛牧場が設置された歴史を持つ、広島県内トップの生乳出荷量を誇る酪農の町です。

この恵まれた環境で育まれた生乳を使ったチーズづくりに情熱を注ぐのが、チーズ工房『乳ぃーずの物語。』。工房を運営する株式会社敷信村農吉(しのうむらのうきち)のチーズ職人・國利知史さんに、そのこだわりや原点、地域への思いについてお話を伺いました。
地元を元気にしたいという思いから始まったチーズづくり
チーズ工房が生まれた背景には、実は保育所の存在があります。出生人口減少により保育所の統廃合と民間委託を進めていた庄原市で、2006年、保育所の運営事業者として名乗りをあげたのが敷信村農吉でした。
そして園児たちに地元の安全で美味しい野菜を食べさせたいという思いから、自然農法など栽培方法にこだわった農家の野菜を取り扱う事業が始まりました。

「地元の生乳で良質なチーズをつくり、野菜と組み合わせれば、もっと野菜にも興味を持ってもらえるのではないか」。そんな発想から生まれたのが、チーズ工房「乳ぃーずの物語。」です。
地域の「乳」で紡ぐ、手間を惜しまないチーズづくり
チーズの原料となる生乳は、工房すぐ近くの市川牧場から、毎朝分けてもらっています。

季節によって生乳の状態や熟成環境が変化するため、乳酸菌の量や製造工程を細かく調整する必要があります。中でも熟成庫の湿度管理には特に神経を使っているそうです。



さきいかをイメージした「ドライチーズ燻製」や「さけるチーズ」など、ユニークなチーズもラインナップ。「基本的には自分が食べたいものを作っています」と國利さん。自身がお酒を飲む際に「どういうつまみがあったらいいかな」と考えて開発したのだそう。
庄原の名を世界へ。チーズ職人が目指す景色
チーズ工房として掲げている目標の一つが、「庄原市の名前を世界に出す」というミッションです。チーズの国際コンクールに挑戦し続け、すでにアメリカの大会でシルバー、スイスの大会ではスーパーゴールドを受賞するなど、実績を積み重ねてきました。

庄原市の深刻な人口減少に対し、チーズを通じて雇用を創出し、一度外に出た若者が「帰ってきたい」と思えるような地域づくりを目指しています。

工房にはショップが併設され、土・日・祝限定で出来立てのチーズが購入できます。
平日は、すぐ近くの「農吉本社事務所」にてチーズを販売中。地元住民や企業がお中元やお歳暮に選んだり、ふるさと納税の返礼品として届けられたりと、地域とのつながりも大切にしています。
直営店や本社のほか、JA直売所や三次ワイナリー、道の駅などで販売されており、広島市内では三越やアバンセ各店(三越店、ekie広島駅店、古江店など)でも購入できます。地域愛とものづくりへの探究心が詰まったチーズを、ぜひ一度味わってみてください。