
瀬戸内海を望む福山市・鞆の浦。古くから港町として栄えたこの町には、船づくりや鍛冶の文化が根付いています。そんな歴史ある町並みの一角に、『株式会社三暁(さんぎょう)』が運営する、ものづくりの魅力を体感できるスポット『santo(サント)』が2022年にオープンしました。

店内には、鍛造(たんぞう)技術から生まれたフライパンやアウトドアギア、家具などが並びます。隣接する工場では今も職人たちが作業を行っており、ものづくりの現場を間近に感じられるのも特徴です。商品を購入するだけでなく、鍛造体験や刻印体験などのワークショップを通じて、鍛造の魅力や職人の技に触れることができます。
(※)鍛造:金属をハンマーなどで叩いたり、金型で強い圧力を加えたりして成形する金属加工法のこと

運営元である株式会社三暁は、橋梁やエレベーター、クレーンなどに使われる精密金属部品を製造する一方で、鞆の浦に受け継がれてきた鍛造技術を未来へつなぐ取り組みにも力を注いでいます。今回はsantoを訪れ、その歩みやものづくりへの思い、人気の鍛造・刻印体験について、代表の早間さんと職員の後内さんにお話を伺いました。
「技術を残したい」から生まれた拠点『santo』
株式会社三暁は、小さな鍛冶屋として創業し、時代の変化とともに事業領域を広げながら発展してきました。2017年、長年にわたり船の錨(いかり)を製造してきた地元鉄工所の廃業に伴い、その工場や設備を引き継ぐことになります。
工場では江戸時代から続く鍛造技術による錨づくりが行われており、三暁は設備だけでなく、その技術も継承。現在も職人たちが昔ながらの道具や機械を使いながら製造を続けています。


そんなものづくりへの思いから生まれたのがsantoです。工場や職人の仕事を身近に感じながら、鍛造の魅力やものづくりの面白さに触れてもらうための拠点として開かれました。

人気の鍛造体験や刻印体験で、職人技に触れる!
santoの大きな魅力の一つが、実際に鉄を叩きながらものづくりを体験できる「鍛造体験」です。もともとは学生向けインターンシップのプログラムとして行っていた体験が好評だったことから、一般向けの体験事業としてスタートしました。
現在人気を集めているのが、フライパンやお香立てづくりなどの鍛造体験と、気軽に楽しめる刻印体験です。鍛造体験では、約1,000〜1,200度まで熱した真っ赤な鉄をハンマーで叩きながら形を整えていきます。

同じ工程でつくられていても、一つひとつ表情が異なるのは手仕事ならでは。使い込むほどに風合いが増していくのも魅力です。

また、短時間で楽しめる刻印体験も人気です。鉄製プレートに好きな文字や模様を打ち込み、オリジナルのキーホルダーをつくることができます。所要時間は約10分程度で、観光の合間にも気軽に体験できます。



利用者の約7割は女性で、友人同士や親子連れ、一人旅の方など幅広い層が訪れています。気軽に参加できることから、鞆の浦観光の思い出づくりとしても人気を集めているそうです。

アウトドアギアや家具、焚き火バーも!
santoでは体験事業だけでなく、鍛造技術を生かしたオリジナルブランドも展開しています。アウトドアブランド「cocinero(コシネロ)」は、スペイン語で「料理人」を意味する言葉。キャンプや焚き火を楽しむ人に向けて、鉄製フライパンやアウトドアギアを製作・販売しています。


一方、家具ブランド「TAonTA(タオンタ)」は、錨づくりで培われた技術を家具へ応用したブランドです。テーブルや椅子の脚部に鍛造パーツを取り入れ、鉄ならではの凹凸や質感をそのまま生かしたデザインが特徴。重厚感と安定感を持ちながらも、洗練された佇まいが魅力です。
早間さんは、「すべてのブランドに共通しているのは、伝統的な鍛造技術を後世に残していきたいという思いです」と話します。

また、santoでは定期的に「焚き火バー」も開催しています。屋根付きのスペースで焚き火を囲みながらゆったりと過ごせるイベントで、地元の人はもちろん、県外から訪れる人も少なくありません。

鞆の浦に受け継がれてきた鍛造技術やものづくりの魅力を、見て、触れて、体験できるsanto。職人たちの手仕事に触れながら、この町ならではの文化や歴史を感じられる場所です。鞆の浦を訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。