
夏野菜がおいしい季節になってきました。キュウリやナス、さまざまにある夏野菜の中でも代表格なのがトマトではないでしょうか。
広島市安佐南区では、「空宙(くうちゅう)®トマト」というちょっと変わった方法で栽培されるトマトがあります。その栽培方法とは、通常は土に植えて育てるところ、この空宙トマトでは根も実も宙に浮かせて育てるというもの。生産者である「上野園芸」の上野さんご夫婦を訪ねて、この空宙トマトが育っているところを見せてもらいました。
1979年に独自開発した栽培方法「空宙®栽培」
広島市安佐南区長束エリア、住宅街を縫って進んでいくと見えてくるいくつかのハウス。ここで空宙トマトは育てられています。

代々農家として、この地でさまざまな野菜を育ててきた上野さん。1979年に「腰を曲げた状態で行う農作業は、どうしても腰を痛めやすい。それを解消して何歳でも農業を楽しめるように」と開発したのが、空間を立体的に活用した水耕栽培方法「空宙®栽培」です。それを原型に、現在はトマトをメインに栽培しています。
ハウスの天井付近にパイプを通し、そこに少量の土と根を置いて栽培することで、天井一面に野菜の実がなる天井方式。実際にハウスの中に入らせていただくと、手を伸ばせば収穫できる高さにトマトがなっており、これなら確かに腰への負担は少なそうです。

もう一つは、パイプを地面に対して垂直に並べて、パイプの側面に野菜を植える林立方式です。こちらの方法だと、トマトの枝がパイプの穴から下側へ向けてダイナミックに伸びていきます。

これらの方法で栽培されたのが、空宙トマト。トマト以外にはキャベツやネギなども育てているそうです。

空宙栽培に一番適していたトマト
現在は、5~7月と10~12月の2期に分けて栽培しているという空宙トマト。これまでにさまざまな野菜を栽培してみて、この空宙栽培に一番適していたのがトマトだったそうです。

また地面からトマトを離すことで、病害虫に侵されるリスクも減るそうです。その結果、農薬の使用量も減らすことができます。トマトを健康的に育てることにもつながっているんですね。

まだまだ可能性が広がる空宙栽培と空宙トマト
「トマトや野菜を食べることを、楽しいと思ってもらえるように」という思いで栽培と向き合う上野さん。「“食べてみてトマトや野菜が好きになった”という声が、本当にうれしい」と話します。
空宙トマトをもっと多くの人に知ってもらうために、栽培以外のことにも取り組み中です。ペットボトルで節水・節電しながら空宙栽培ができる自社開発の小型空宙栽培装置を使って、銀行の屋上で野菜や米を栽培する取り組みでは、栽培から収穫、そして食べるところまで体験してもらっているそうです。


また近隣の長束西小学校・中学校の給食に空宙トマトを使ったメニューが登場したり、小学生とともに販売体験、中学生とはペットボトル栽培を地域の方に伝えていくなど、地域とつながりを深めながら食育にも取り組んでいます。

またモルディブでは農業支援として、ペットボトル栽培の普及に取り組んだことも。海を渡り、空宙栽培が野菜を育て、食べるきっかけを広げていっています。

今年もきっと、暑さが身に堪える夏になりそうです。大切に愛情を持って育てられた水分たっぷりのみずみずしい空宙トマトをおいしく食べて、これからの暑い時季を元気に過ごしていきたいですね。
