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JAF広島支部 熊谷幸史さん|広島のカーライフをサポートする。 ドライバーに安心・安全・信頼を提供する縁の下の力持ち

運転をしていると一日一回は目撃するであろう、目立つ車両と制服。JAFの存在は知っていても、隊員の方の思いを知る機会はほとんどありません。広島市西区庚午北にあるJAF広島支部ロードサービス隊 広島基地で班長を務める熊谷幸史さんに、知られざる隊員の活動内容や仕事にかける思いを聞きました。

JAF隊員になろうと思ったきっかけは、自身の体験から

学生時代からJAF隊員になるまでの道のりを教えてくれた熊谷さん。
学生時代からJAF隊員になるまでの道のりを教えてくれた熊谷さん。

いつからJAF隊員になろうと思ったのですか。

熊谷:学生時代に大阪の自動車整備専門学校に進学し、自動車整備士免許を取得しました。すでにそのときにはJAF隊員になりたかったんですよ。学生時代に友人の車で外出した際に、車内にキーを閉じ込めてしまってJAFに助けてもらったことがありました。そのときに私も隊員になりたいと思いました。

そんな体験をされたのですね。

熊谷:ただ当時はインターネットも普及していなくて、なるために必要なことを調べることができませんでした。就職センターでもJAFの案内はなかったですし。私の学生時代は自動車販売会社への就職のレールが敷かれていたので、広島県内のトヨタディーラーに就職し、4年半勤務をしました。

そのあとすぐにJAF隊員になったのですか。

熊谷:そのあとは某自動車メーカーの開発部門で、発売済み車両の不具合を確認して、次期新型車などに使うデータを取得する仕事をしていた時期がありました。

そのあとついにJAF隊員になったのですね。

熊谷:そうです。でも今だから言えるんですけど、学校を卒業してすぐに隊員にならなくてよかったと感じています。JAF隊員になって今年で13年目の今でも、過去の自分の経験とかさまざまなシチュエーションを体験したことが、実際のレスキュー現場で役立っているからです。

何事も現場の経験って大切ですね。

快適なカーライフへの使命を背負って日々仕事をしています。

隊員ならではの職業病とは

今日も広島基地から、多くの隊員が出動しています。

普段の仕事はこちらの場所で勤務しているのですか?

熊谷:そうです。広島県にはJAFの基地が数か所かあって、私は広島基地に所属しています。お客様から救助要請があったら作業車に乗って出動します。出動先で車載コンピューターに次の現場データが届いて、そのまま次へ行くことも珍しくありません。

1日に何件くらい出動するのですか。

熊谷:出動する内容や場所などによって件数は大きく変わりますが、8時間勤務で6~7件ほど出動します。

JAFの専用車両は用途に合わせて様々なタイプがあります。

想像していたよりすごく多い!

熊谷:私が隊員になって12年以上経過していますが、何も無かった日は1日もありませんね。

私のイメージでは、「今日は何もなくてよかった」っていう日がほとんどかと思っていました。

熊谷:私も入隊するまでは同じことを考えていました。ずっと待機していて仕事が入れば行くぞ、みたいな感じで。車が年々新しくなると故障は少なくなる傾向にはあるので出動件数は年々下がっていますが、それでも作業はあります。バッテリ上がりが一番多いですね。次にパンクやタイヤ交換、キーの閉じ込みの順番です。

出動回数が多いと、運転する機会も多くなりますね。

熊谷:レスキューに向かう我々が事故をしてはいけないので、JAFでは「コメンタリードライブ」を全国で行っています。「青信号よし」「交差点、右・左よし」「横断者なし、巻き込みなし」など見えるところ全部をコメンタリーしています。日常生活でマイカーに乗っているときにもブツブツ言ってしまい、同乗の家族に「気持ち悪い」って言われることがありますよ(笑)。これは職業病ですね。

「コメンタリードライブ」で安全第一!!

自動車のレスキューは、自然相手の仕事でもある

数多くの現場に出動されてきたと思いますが、困ってしまうケースってどんなことですか。

熊谷:困ったことは数えきれないくらいあります。全く同じ現場というのはないので。その中でも冬の季節は大変です。雪で動けなくなったお客様の救援に向かうのですが、安全のためすべてのタイヤにチェーンを装着して、これ以上ない万全の装備で出動します。それでもレッカー車が道路の凍結でスリップして、現場到着までにこっちが事故するんじゃないかと感じることも珍しくないですね。

運転中も真剣な眼差しの熊谷さん。

過酷な環境下での出動はリスクを伴いますね。年間を通じて一番出動が多い時期はいつ頃ですか。

熊谷:年間を通じてだったら7・8月の気温の高いときですね。夏はバッテリ上がりが起こりやすい時期です。しかも行楽などで外出する機会が多いので出動も多くなります。エンジンをかける時の気温が20℃前後であることがバッテリにとって負担が少ないんですよ。真夏は30℃超えているときも多いので負担が大きく、結果バッテリ上がりにつながるという原理です。

車も人間も暑いときや寒いときはしんどいんですね。

いろいろな新型車が発売されたり、電気自動車が多く公道を走るようになりましたが、対応方法が気になっています。

熊谷:まず新型車が出たときには、各メーカーやディーラーへお願いをして対応方法を教えてもらったり、講習をうけたりして私たちも知識を高めています。電気自動車ではガス欠ならぬ「電欠(デンケツ)」があります。

「電欠」って言葉があるんですね。

熊谷:あります。給電スポットまで車を運ばせてもらいます。スポットはJAFにも用意しています。

CLiP HIROSHIMAには「コムス」という電気自動車があるんですけど、もしコムスで困った場合もJAFさんにお世話になれますか(笑)。

熊谷:大丈夫です。しっかり運びます(笑)。

CLiP HIROSHIMAの裏マスコット「コムスパイセン」も安心ですね(笑)。

隊員をしていて嬉しかったことも、困ったことと同じくらいあるのではないですか。

熊谷:以前、JAF広島基地近隣の小学校の児童さんたちに、レッカー車や仕事の内容を説明したことがありました。後日、児童さんたちから感謝の寄せ書きをもらったことが隊員人生のなかで特にうれしかった事ですね。

何年生くらいの子どもたちだったのですか?

熊谷:低学年ですね。ちょうど私の子どもと年齢が重なって感動しました。レッカー車に乗っていると小さいお子さんが手を振ってくれることもあるんです。

レッカー車は目立つし制服も派手でかっこいいですよね。警察官とか消防士と同じ格好良さがあるのがJAFさんだと思います。

隊員の仕事は現場作業だけではなく、デスクワークや講習会など多岐にわたります。

JAF広島基地で体験入隊

JAFさんがいつも行っている作業を是非体験させていただきたいのですが、我々でもできることはあるでしょうか。

熊谷:パンクの修理はどうですか。本来は車両からパンクしたタイヤを取り外して作業を行うのですが、練習用のタイヤを用意しています。JAFに入隊したときも学習するのですが、今も定期的に訓練しています。まずは私がデモンストレーションしますね。

日々の訓練が、現場でのスムーズな作業につながります。

熊谷:刺さっている釘を取り除いた後に、接着剤のような液体を塗ったこのドリルみたいな道具を時計回りに差し込みます。さらに同じ方向に回しながら引き抜きます。この作業はタイヤに穴が開いてしまった部分を洗浄する役割があるんですよ。同じ作業を3回くらい行います。次にこのゴムみたいなのを刺して、そして引き抜くと…。

お、おー。空気が抜けているのが止まった!手品みたいですね。

熊谷:数分するとしっかり固まるので、作業車から空気を基準値まで足します。そしてこのせっけん水を吹きかけて空気の漏れを確認します。もし空気が漏れていたら泡がブクブク出てきます。それではやってみましょう。

作業後には空気が漏れていないことを必ず確認。
むむっ思ったより硬いっ!先程軽々とされていたからもっと簡単だと思っていました。これは夏場、大変そうな作業ですね。電動工具などで作業はできないんですか。
熊谷さんは簡単に作業しているように見えましたが、実際に体験してみると重労働なことに気付かされます。

熊谷:手で作業をした方がキズの向きなどを確認できるので、手作業が基本ですね。現場ではパンクの状態や天気・道路状況などがまちまちなので柔軟な対応が必要です。

何とか修理できた感じに仕上がりました…。空気も漏れていませんっ!できたっ!!今回の作業でしたら普段は何分くらいで仕上げるのですか。

熊谷:作業開始から作業完了のお客様サインまでおおむね30分以内でやっていますね。

時間はかかりましたが、なんとかパンク修理できました。

このレッカー車にはいろいろな装備を搭載していると思うのですが、JAFの秘密兵器とかないんですか。

熊谷:それがあるんですよ。是非紹介をしたい道具があります。タイヤを溝に落としたときにはこれがないと仕事にならないくらい役に立つ装備です。この四角いゴムの塊にレッカー車から空気を送り込むと…。

おー!、車が持ち上がったー!!

重たい車も秘密道具で軽々と持ち上がります。
熊谷:車を脱輪させてしまったときに狭い隙間にこの道具を差し込んで車を上げることができます。かなりの重量を持ち上げることが可能なんですよ。この道具はお客様からのウケもいいですね。

いちばんの仕事はお客様の「心のケア」

熊谷:以前夏に心霊スポットに行ったお客様から救援要請が入ったことがあって、我々はワンマンでの仕事なので、夜中に一人でそこへ行くのかとドキドキしながら向かったこともありましたね。内容はバッテリ上がりだったのですぐ解決したのですが、作業完了後に急いで片付けをしてお客様と一緒に現場から帰りました(笑)。

でもトラブルがあって心細いときに、JAFの方がかっこいい車と制服で救助にきてくれた安心感はありますよね。

車両トラブルの時にこのカラーリングが見えると安心しますね。

熊谷:それは強く思いますね。車両トラブルや事故などでとても気持ちが沈んでいるお客様も多くいますし、なかには怒っている方もいます。しかしながらこちらが話を聞いて事情を理解しながら会話をすれば、お相手の方も落ち着きを取り戻して感謝や謝罪をいただくことも多いんです。しっかりと話をするというのは大切なことですね。

心のケアまでフォローされているなんてすごいですね。

熊谷:我々はサービスマンなので現場で100点の仕事をするのが前提ですが、同時に接客業でもあると考えています。例えばお客様と話をするときには真っすぐ向かい合わないように、斜めの位置に立つように心掛けているんですよ。正面は対立の位置だからよくないので。

相手に威圧感を与えないようにする配慮、そういう細かな気遣いがお客様には印象に残るかもしれないですね。以前私がJAFさんにお世話になったときの隊員の方はとてもやさしく対応して下さいました。

熊谷:心のケアを学ぶ上で、目指す人物像があります。私は班長という立場にあるのですが、その上には主任がいます。主任のようになりたいと強く思っています。

どんなところに憧れを感じているのですか。

熊谷:心のケアがとても上手な方です。日々勉強させてもらっています。お客様にも同僚に対してもコミュニケーションが上手くいかないと、楽しく仕事を頑張れないですからね。

レスキュー現場にてお客様が求めていることは車の修理や搬送ですが、実はその先にあるのは、ほっと安心できたり、相談したりといった気持ちの面なのかもしれません。自動車トラブルのレスキューだけにとどまらず、人と人とのコミュニケーションを重要視している熊谷さんをはじめとするJAF隊員の皆さん。いざというときに安心して頼ることのできる心強い存在です。

JAF 広島支部ロードサービス隊 広島基地

班長 熊谷幸史さん

すべてのドライバーに安心・安全・信頼を提供する縁の下の力持ち。JAF隊員となって13年目。車の修理や搬送と併せて「心のケア」も行いながら広島のカーライフをサポートしている。

一般社団法人 日本自動車連盟(Japan Automobile Federation)