
路面電車が行き交う広島市中区・十日市町。大通りから路地へ入ると、個人経営のカフェやコーヒーショップ、パン屋など、個性豊かなお店が点在する注目のエリアです。そんな十日市町に、2025年6月にオープンしたのが『Book Cafe Whisker(ウィスカー)』。元鉄工所を改装した店内には本がずらりと並び、ランチやカフェを楽しみながら、気になる一冊を自由に手に取ることができます。

Book Cafe Whiskerのコンセプトは「知的好奇心の寄り道ができる場所」。
歴史や民俗学、神話、SF、オカルト、サブカルチャーなど、普段はなかなか深掘りしないテーマの本が並び、ふとした一冊との出会いから、新しい世界が広がります。落語会や個展、音楽イベントなども開催され、本好きはもちろん、普段あまり本を読まない人も、それぞれの「気になる」をきっかけに立ち寄れる場所です。
今回は、マネージャーの熊谷(くまがい)さんと店長の菅沼(すがぬま)さんに、お店の魅力を伺いました。
「面白そうだからのぞいてみる」から始まる、好奇心の寄り道

Book Cafe Whiskerのはじまりは、大阪・池田市で開催されたビジネスコンテストでの受賞です。「誰もが自分らしく働き、自立できる仕組みとしてのカフェづくり」をテーマに、カフェの開業に向けて動き始めました。その後、広島への転勤を機に場所を移し、現在の十日市町へたどり着いたそうです。
店名の「Whisker」は、英語で「猫のひげ」という意味。猫がひげを使って周囲の世界を探るように、人も好奇心を働かせながら、知らない世界を探ってほしい――。そんな思いが込められています。

その思いは、本棚にも表れています。漫画やデザイン、アート、哲学、歴史、都市伝説など、ジャンルは実にさまざま。


本と一緒に味わいたい、こだわりのカフェメニュー
本だけでなく、食事やドリンク、焼き菓子なども楽しめるBook Cafe Whisker。なかでもおすすめは、「もちもち酵素玄米」を使ったガパオライスです。専用の圧力鍋で炊いた玄米を、毎日かき混ぜながら3日間かけてじっくり熟成。もち米を使っていないのに、名前の通りもちもちとした食感に仕上がるのが特徴です。

どこか懐かしいビジュアルのクリームソーダも人気メニュー。いちご、パイナップル、ピーチ、メロン、ラムネ、マンゴーの6種類から選べます。今回は、定番の「メロンクリームソーダ」をいただきました。

スイーツや焼き菓子は、食品添加物をできるだけ使用しないよう心掛け、国産素材を使うなど、身体にやさしいものを目指しています。マカロニサラダも、和と洋を組み合わせた店長・菅沼さんこだわりの一品です。
そして、店内を見渡すと、あちこちに飾られた絵にも目が留まります。実はこれら、菅沼さん自身が描いた作品。絵を描くことは今も続けているライフワークで、ほかの作家さんとコラボレーションした個展なども開催しています。

本を片手に食事やドリンクを楽しんだり、店内のアートを眺めたり。思い思いの過ごし方で、ゆっくりと時間を味わえるのもBook Cafe Whiskerの魅力です。
一冊の本から、人とまちのつながりへ
Book Cafe Whiskerでは、本やカフェだけでなく、落語会や個展、音楽イベントなども定期的に開催しており、これまでにはテキサスからバイオリニストを招いて演奏会を開催したことも。出演者やクリエイターとのつながりも、お客様からの紹介や、「面白い場所があるよ」という人づての縁から生まれているそうです。
また毎月開催している「本の交換会」では、本を1冊持参すると、2冊持ち帰ることができるという仕組み。読み終えた本を家で眠らせている人、「積読(つんどく)」のままになっている人。本はあまり読まないけれど、誰かの話を聞くのが好きな人。そんな人たちも含め、本をきっかけに人が集まる場をつくりたいという思いから始まりました。

交換会では、持ち寄った本にニックネームと紹介コメントを添えて置いていく仕掛けも。本を読み、感想を残し、その言葉を見た誰かがまた別の本を手に取る。一冊の本をきっかけに、人の興味が次の誰かへと渡っていきます。
さらに、広島カレー部のネットワークを通じて、スパイス店やほかの飲食店とチームを組み、イベントを企画することもあるそう。

本を探しに来た人がイベントに参加したり、カフェに訪れた人がふと一冊の本に出会ったり、イベントでの会話をきっかけに新しい縁が生まれたり。そんな小さな「寄り道」が重なって、さまざまな出会いが広がっていくBook Cafe Whisker。ぜひ気軽に「好奇心の寄り道」を楽しんでみてはいかがでしょうか。