
広島県産の焙煎落花生や、少量で料理をがらりと変える白ネギのタレ。それらを生み出しているのが、東広島市の脇農園が手がけるブランド『土とね、(TUTITONE)』です。複数年、「ひろしまグッドデザイン賞」の奨励賞を受賞し話題を集めています。こだわり抜いた土づくりから育まれる野菜の力を、加工品という形で全国へお届け。親子二代、一丸となって挑戦を続ける脇農園の取り組みをご紹介します!
すべての基本は、土づくりから
脇農園の始まりは2006年。東広島で鉄工所を営んでいた創業者・脇伸男さんが「昔食べたトマトの味が忘れられない」「孫にも、自分たちの当たり前だった味を食べさせたい」と農業に挑戦したのがきっかけでした。

現在、12ヘクタールの畑すべてに、暗渠(あんきょ)排水管が埋められています。
ゲリラ豪雨や台風の後でも強制的に排水が行われ、翌日には畑にサンダルで入れるほど水はけが良いそうです。
さらに、年に一度は土壌検査を行い、不足していた養分を入れています。このとき入れる堆肥の量は、一般的な畑の3〜5倍。さらに、土を耕す深さも、通常の倍!
こうして作られた土は「団粒構造(※)」となり、植物が根を伸ばしやすい、ふかふか、カステラ状の土となるのです。
※団粒構造:土の粒子が小粒の集合体を作っていて、互いに適度な隙間がある土のこと。逆の「単粒構造」は隙間が少ない、羊羹状の土のこと。

「土をちゃんと作って、その後は余計な手出しをしない。野菜は土からしか栄養を取れないので、とにかく元気な土を作ることで、元気な野菜も作れるんです」と語るのは、創業者・脇伸男さんの息子の脇伸哉(しんや)さん。
落花生の栽培は、脇農園を立ち上げて14年後の、2020年に始めました。
関東で働いていた頃、秋になると生の落花生を茹でて食べており、そのおいしさが広島に帰ってからも忘れられなかった伸哉さん。
「賞味期限が短いので産地以外では『茹で』で食べられず、残念だと思っていました。千葉の人に『広島には落花生がなくて可哀想』と言われたこともあります。」
さらにマメ科の落花生は、すでに栽培を行っていたナスや白ネギの連作障害を防ぐ効果もあり、新しく手がける作物としてぴったりでした。

実際、土づくりにこだわった脇農園の焙煎落花生は栄養価が高く、通常の落花生と比べて必須脂肪酸のリノール酸が1.4倍、リノレン酸が25倍も含まれています。
健康のために毎朝、脇農園の落花生を食べるファンも増えているそうです。
素材の力を活かした加工品ブランド『土とね、』

市場流通ではなく、こだわりの栽培方法をPRできる販売がしたいと、自社ブランド『土とね、』を立ち上げました。縁があった料理家・岸八千代さん、イラストレーター・福田利之さんとタッグを組み、加工場も新設。
料理人をしていた、弟の脇大輔さんも農園に加わり、実際の製造を担当することに。
『土とね、』で販売しているのは、農家が自分たちで栽培した野菜を、自分たちで加工したもの。なかでも看板商品は、1年を通して販売している焙煎落花生です。
焙煎落花生に使用しているのは「おおまさり」と、「ちばはんだち」の2種類。おおまさりは一般的な落花生の約2倍の大きさで、甘みが強く食べ応えがあります。一方の「ちばはんだち」は高級落花生として知られ、油分が多く、コクのある味わいが特徴です。
実はこの「おおまさり」、実が大きく水分量が多いため、通常の工程で焙煎すると実が割れてしまい、「茹で落花生」として流通することがほとんど。しかし、脇農園では焙煎して販売しています。

一般的な産地では、収穫後、落花生は畑で重ねて放置することで実を乾燥させます。しかしこのやり方では、中まで均一に乾燥できません。
脇農園では、ビニールハウスでしっかり1ヶ月半天日干しにした上で、じっくりと低温で焙煎することで、大粒のおおまさりを加工できています。
手間も時間もかかりますが、香ばしさと旨みのある落花生となります。
収穫した落花生のうち、『土とね、』ブランドとして販売されるのはわずか2割。形や大きさを選別し、手間を重ねて商品になります。


「ピーナッツペースト」は、ちばはんだち、きび砂糖、藻塩だけで作られたシンプルな一品。シンプルだからこそ、落花生の香り高さや味が際立っています。
パンに塗るのはもちろん、クリームチーズと混ぜてベーグルに付けたり、砂糖・醤油・酢・油と合わせれば、香ばしくてコクのあるクリーミーなピーナッツドレッシングになります。

「白葱たれ 白・赤」も、使い道やアレンジが豊富。
白は、白葱のシャキシャキ感を楽しみながら、甘みと旨みをしっかり味わえる万能たれ。赤は、カリカリに揚げたネギとザクザク食感の落花生が入った、ピリ辛でエスニック風味なタレ。いつもの一品がグッとレベルアップします。

広島を落花生の産地に!0.06%からの挑戦
広島の落花生生産量は全国の0.06%。作りはじめの頃は知名度も低く、なかなか売れなかったと言います。
風向きが変わったのは2023年。
芸人のアンガールズさんがテレビ番組で脇農園を訪れ、落花生の種まき・収穫・販売を行ったことがきっかけでした。
今では、ほかの農家から「種を分けてもらえませんか」と言われることも。
伸哉さんは「広島って牡蠣もあるし、もみじまんじゅうもある。でも落花生もあるよね、有名だよね。と言われるようになりたい。広島を、落花生の産地にしたい」と話します。

思いを実現するため、農園では中学生の職場体験や、企業の研修受け入れ、落花生の収穫体験も行っています。
特に落花生収穫体験は、土の中に伸びた1つの茎から100個もの落花生ができることもあるので、次々に採れる落花生に、大人も子どもも声をあげて、夢中になって収穫するそうです。

丁寧な土づくりから、広島産落花生が全国へ展開する挑戦はまだまだ続きます。