
長く使えば使うほど美しく、唯一無二の一点ものへと変化していく革製品の受注製作を行っているOKAJIRli(オカジリ)さん。中学時代、個性的な雰囲気をまとったオダギリジョーさんに憧れ、「オダギリジョーみたいになりたい!」とリスペクト。それは作品づくりにも影響され、手掛ける作品は繊細で個性的。「他と一緒はおもしろくない」とオリジナリティー溢れる作品で全国のイベントを駆け回るOKAJIRliさんをご紹介します。
趣味から本業へ。不思議なご縁から始まった第二のステージ
これを聞かないと始まりません!OKAJIRliさんの名前の由来を教えてください。
OKAJIRli:きっかけは仮面ライダークウガ(2000年1月~2001年1月・テレビ朝日系列)でした。そこに出演していたオダギリジョーさんがかっこよくて。あの独特の雰囲気に魅了されていきました。映画も何本も観てどんどん好きになっていったんです。好きすぎて、この当時に本名の梶山と「オダギリ」を掛け合わせて「OKAJIRli」(オカジリ)という名前まで考えてました(笑)。実はこれ、革製品のブランドを立ち上げる前から思いついていて、ついにはブランド名にまでなりました。
「名前まで考えちゃったんですよ」と屈託のない笑顔のOKAJIRliさん。
ブランドを立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか。
OKAJIRli:革製品づくりはもともと趣味で、10年前くらいからやっていたんです。スマートフォンの手帳型ケースがブームの時代にはそれを作ってメルカリなどで販売していたんですけど忙しくなりすぎて。その頃は会社員だったこともあり時間に余裕がなく、製作は一旦ストップしていました。
それが、6年前に知人から誘われ初キャンプを体験して…たき火の炎が目の前で心地良い音で揺らいでいるのに癒されてハマったんです。何度となくキャンプに行くようになり、使っていたキャンプ道具の火吹き棒に革を巻いてSNSに載せたら今までにないくらいの反響があって。ちゃんとものづくりを再開したいと思っていたタイミングだったので「もう一回真剣にやってみよう」と、革製品のブランドを立ち上げました。

火吹き棒にそれぞれ栃木レザー(RED)、ルガトレザー(BLUE)を巻いてインスタグラムに投稿したところ、思いがけない反響が。キャンプ道具にオリジナリティがプラスされ人気に。
「ブランド立ち上げと同時に多くの注文が入るようになった」と話すOKAJIRliさん。サラリーマン時代には味わえなかった多くの人とのつながりや出会いがモチベーションになり、2年前から本業として活動しています。

OKAJIRliさんの「思い」が詰まったアトリエ。そこは世田谷ベースさながらの空間。OKAJIRliさんが作品に使用するのは伝統的な製法でなめされたヌメ革の「栃木レザー」。鞣(なめ)しに有害な薬品は一切使わず、ミモザの樹皮から抽出した樹脂を使用しているため、環境にも優しいのが特徴です。昔ながらの工程でしなやかさとタフさ、経年変化(エイジング)による味わい深さが存分に楽しめる高品質の皮革です。
OKAJIRli:キャンプ道具のアレンジ作品を作ったことでたくさんの方に周知してもらい、ご縁もいただきました。そんななかで財布やカバンに需要があることも知り、今はそれをメインに製作しています。

二枚の革で作られたコインケース。スナップの開閉で間口の広さを調整できる心遣いがOKAJIRli流。
トートバッグも人気アイテム。栃木レザーにルガトレザー(※)の琉球ブルーがアクセントに。エイジングにより表情が変わっていくのが革製品の魅力。
※ベルギーのタンナリーマズール社が製造する牛革。きめ細やかで艶やかなことから「革の宝石」とも呼ばれている。
どれも素敵です!使い込むことで自分だけの風合いが出せそうですね。
OKAJIRli:それ(エイジング)がやっぱり一番の魅力かなと思います。若干傷が入ってももともとオイルが沁み込んでいる革なのでそんなにダメージはないですし、ミンクオイルを塗ると傷は目立たなくなります。こういった手入れをすることでそれがまた「味」になります。耐久性にも優れていますから、一生ものだと思っています。もちろん僕自身も革製品を愛用しています!いま大事に育てているのがこのマネークリップなんですけど。もうかわいくて…(笑)。使って1年くらい経過して、だいぶんいい感じになってきました!
コンパクトさと利便性で時代にマッチ。注文も多いというマネークリップは、いま一番主流で作っているアイテムだそう。
気づけばいつもそばにあった、ハンドメイドの世界
OKAJIRli:実は祖母なんです。趣味で革小物などを作っていて、その影響が大きいですね。若い頃にはおばあちゃんが作ってくれた財布も使っていました。いま考えるとすごい技術だなと思います。
OKAJIRliさんの祖母が作った革製カバンは、ものづくりの原点。いまではOKAJIRliさんの活躍を喜び「私にも作って」とリクエストもあるそう。
アトリエにある道具のほとんどは祖母から譲り受けたもの。OKAJIRliさんの手によって息吹を吹き返した。
作品は全て手縫いというこだわりにも、「これ自慢してるみたいであんまり言いたくないんですけど…」と控えめ。一針一針思いのこもったステッチが「ここにしかない、自分にしか作れない一点物」として、愛好家に手渡される。
お客様との触れ合いを求めイベントやポップアップ出店で全国を飛び回る
いろいろな場所へ出向かれるのには何か理由があるのですか?
OKAJIRli:実店舗が無く、商品の販売はオンラインのみなので、購入していただいた方に直接会いたい、というのが一番の理由です。キャンプ道具の革製品を作っていた時、いろいろな県から注文をいただいて。なのでその人たちに会いに行く目的で最初に行ったイベント会場で…会えたんですよ!「あなたの製品購入しました!」という方が来てくださり、お話ができました。この仕事はたくさんの方のご縁で成り立っていると思っているので、本当にうれしかったですし、そういうご縁は大切にしていきたいと改めて思い、いまでも可能な限り全国展開でイベントに出没しています(笑)。
イベントやポップアップではこの看板が目印。「重いけど目立つから持って行っています」
と、話すOKAJIRliさん。
OKAJIRli:全国のイベントで知り合った作家さんたちが、とってもおもしろくていいものを作っているんですよ。そんな作品をもっと多くの人に知ってもらいたいという思いが日に日に強くなってきていて。自分の作品も含め、ショップ(実店舗)という形にできればと考えています。その時にはどうぞよろしくお願いします!
ハンドメイドの温かさや、唯一無二。そんな表現ではとても収まりきれなかったOKAJIRliさんの世界観。革をこよなく愛し、その作品を愛してくれる人を愛する。「一生もの」を作るオダギリジョーに憧れる男は、その名に恥じない信念を貫いています。