廿日市市の中心部から車で約15分、山の中にひっそりと佇むのが『吹きガラス工房Fuji321』です。吹きガラス作家・藤島 孝臣さんが吹きガラス製品の制作・販売を行っています。
工房の中へ入ると、ずらりと並ぶガラスのアイテム。日の光をうけて美しく輝くグラスや、小さくても存在感のある一輪挿し、空間の雰囲気をつくる照明など、一つひとつの味わいが伝わってきます。
そんなガラスの魅力や、普段の生活にどのようにガラスアイテムを取り入れるとよいのか、藤島さんに教えてもらいました。
使い手の生活になじむガラスを
藤島:以前は車の板金塗装をしていましたが、ガラスの里(現在は閉園)へ遊びに行ったときに見たガラスの製造過程が面白くて、一気に興味を持ちました。仕事を辞め、すぐ沖縄へ行って吹きガラス工房で修業を始めました。10年ほど沖縄で学び、2014年には廿日市市で自分の工房を構えました。
藤島:5分から10分くらいの短い時間で一つの作品が出来上がるところです。そのスピード感がまるで手品のようで、すぐにガラスの世界に惹きこまれました。つくる立場として考えても、制作期間が長いものよりガラスのように短い時間で勝負するものの方が自分の性格には合っているなと感じています。
藤島:生活になじむガラスをつくるということです。飾るものではなく、例えば水を飲むときに毎日使うグラスのように、食器棚の手前にいつも置いてもらえるようなものを目指しています。琉球ガラスはカラフルな色合いが多いのですが、広島に戻って制作するうちに、日々の暮らしの中で鮮やかなガラスを使うと少し浮いてしまうと感じたんですよ。なので、それ以降は透明や茶色などをベースにしたガラスをつくっています。
藤島:そうなんです。あと吹きガラスは作家が実際に吹いてつくるので、まったく同じ形やサイズ、色合いのものをつくることが難しいです。なので作家は、一般的には同じものをつくることを目指して制作します。ただそこを突き詰めすぎると工業的な雰囲気を持った作品ができてしまうので、ここ数年は多少形がいびつであっても表情がちゃんと感じられるように、統一感を意識しすぎないような制作方法にしています。
お客様との会話が制作のヒントに
こうして工房でゆっくりと作品を選べるのがいいですね。
藤島:制作に集中しているとどうしても人と話す機会が減ってしまうので、工房に来られるお客様やイベントに参加させてもらったときに出会うお客様との会話が楽しいですね。会話の中から制作のヒントをもらっているので、接客している時間もすごく好きなんですよ。
これから寒くなる今の時季だと、どんな風にガラスのアイテムを生活に取り入れるのがおすすめでしょうか。
藤島:食器はやはり夏場の方が使いやすいだろうと思うので、冬場であればキャンドルスタンドや照明などインテリアのアイテムが取り入れやすいですよ。光を柔らかく通して雰囲気が出るのでおすすめです。窓辺にガラスを置くと、冬ならではの優しい陽の入り方も楽しめると思います。
藤島:自分の工房を構えてもうすぐ10年を迎えようとしていますが、それでも毎日修業だと感じています。日々の暮らしに取り入れやすいガラス製品をこれからもつくって、提案していきたいですね。いずれ近いうちに、牡蠣殻を使って発色させた広島だからこそのガラスの制作にも挑戦していきたいと思っています。
毎日使うことでより愛着が増す藤島さんのガラス作品は、ギフトにもぴったりです。暮らしを彩るアイテムと、ぜひ出合ってみてくださいね。