広島マツダから2017年に発足したレーシングチーム、HM RACERS(エイチエムレーサーズ)。マツダ販売店が母体となるチームは国内でこのHM RACERSだけと、実は貴重なチームです。広島マツダ代表取締役会長でありチーム代表でもある松田哲也さんに、レース活動への想いを聞きました。岡山国際サーキットで行われたスーパー耐久シリーズのレポートとともにご紹介します!
HM RACERSの勝負の日に密着
今日は、編集部の森・藤安・住田の3人でスーパー耐久シリーズのレースが行われる岡山国際サーキットへやってきました。今、朝の7:30ですが、各チーム着々とピットで準備を行っています。
森:レースの日の朝は早いんですね。パドックにももうすでにお客さんらしき人たちがいらっしゃいます。
藤安:サーキットのピンとした空気も漂って、闘いの前!っていう雰囲気が伝わってきますよね。
藤安:周りのピットからもオイルやタイヤのにおいとか、エンジンをふかす音とかが聞こえ始めてきました…。いよいよ始まりそうですね。
予選は2人のドライバーで走って、その合計タイムの順番に決勝での発走の位置取りをするそうです。あ、予選レース始まりましたね!
森:予選が終わると、13時からの決勝まで少し時間がありますね。
今この間なら松田さんを取材できるかも! ちょっと行ってみましょう!
僕たちのチームは、“人”が主役
先ほどは予選大変お疲れ様でした。HM RACERSは2017年チーム発足とのことですが、元々松田さんご自身はモータースポーツとの縁はこれまでにあったのでしょうか?
松田:若い頃、中嶋悟選手や鈴木亜久里選手が活躍していたF1を観てはいたんですよ。でもまさか自分がチームを持つようになるとは思わなかったですね。
実際にチームを立ち上げるようになったきっかけはどんなところからですか?
松田:広島マツダのサービスに功労者がいて、今顧問をしている永田という者なんですが、実は彼の夢がレースに出たいということだったんですね。
松田:そうなんです。だから最初は「面白そうだな」という気持ちで始めたんですが、参戦するからにはやっぱり勝ちたいじゃないですか。
松田:私たちはマツダのブランドではあるけど自社でクルマをつくっているわけではないので、自動車ディーラーとして地域の人に愛され、選んでもらえるブランドをつくっていかなければいけないんです。いろいろとある事業の一つとして、このレーシングチームがあると最初は考えていました。
スーパー耐久シリーズのレースにマツダ車で参戦しているチームはいくつかあるとお聞きしていますが、マツダ正規販売店が母体となっているのはHM RACERSだけなんですよね。
松田:そうですね。僕は“人”が主人公のチームにしたいという想いで立ち上げたんです。だからうちは、「レーシング」じゃなくて「レーサーズ」っていうチーム名なんですよ。
…あっ! ほんとだ! 他のチームはほとんどが「レーシング」ですね。
松田:一人ひとりの魅力と、その魅力が結集したチーム力とともに前にガンガン攻めていくぜという意気込みを表しているのが、HM RACERSなんです。
圧倒的にかっこいいHM RACERSを会社の“顔”に
松田:初めてレースに参戦したとき、最初は何も分からなかったんですけど、単純にこれはかっこいいなと思ったんですよ。と同時に、これは攻めていかんといけんなと感じました。
実際にレースをして、ご自身の心も動かされたんですね。
松田:さっきブランドの話をしましたが、圧倒的なかっこよさがこのHM RACERSにはあると感じました。なのでこれをブランド化して、広島マツダを引っ張っていくようなものに成長させたいと考えるようになったんです。
会社のブランドイメージをHM RACERSに集約させる形でしょうか?
松田:そうですね。広島マツダの躍動をイメージさせるようなものにしたいと思っています。チーム発足の理由を、それまではメカニックの技術向上とかって言ってきたんですけど、今となってはもうそれは後付けだったなと思ってます(笑)。
松田:初年度はロードスターで参戦しました。うちはディーラーとしてたくさんロードスターを販売したり整備したりしてきたわけです。その辺のレーシングチームに負けるわけがないと思っていたんですよ。ところが…。
松田:レースでは3秒以上の差が出てしまって。とてつもない差で、これはヤバい、恥ずかしいと。自分の態度を改めんといけんなと(笑)。
松田:他のチームはレースクイーンがいないのにうちは連れていったりしてて、形はしっかりしているのに勝負では遅いという…。
松田:そうなんです。以降はちゃんと勝負に徹しようと、何度もテストや整備、調整をしました。ただHM RACERSのメカニックは毎回各店舗から招集しているので、そのたびに新しくチームをつくらないといけません。組織力を強化するために、毎週金曜日の夜はチームのみんなと焼き肉を食べに行く懇親会のようなこともしましたね。これが私のチーム代表としての大きな仕事でしょうか(笑)。
広島一歴史があるディーラーの挑戦
HIROSHIMA TOYOPET RACINGのチーム代表・古谷さんも言われていましたが、代表の仕事として食事の存在は大きいんですね(笑)。ただコミュニケーションの場と考えると、それもまた大切だろうと思います。
松田:はい、ちょっとずつメンバーの意識や一体感は変わってきたと思います。コロナ禍ではなかなかそれも出来ませんが、時間管理であったり雰囲気づくりだったりチーム運営の全てに関わってきますね。
チームビルディングの部分ですね。ちなみに2020年度のレースはロードスターではなくデミオで参戦されていますが…。
松田:1・2年目はロードスターでしたが、3年目と4年目にあたる2020年度はデミオです。大衆車としてのイメージが強いデミオが、モータースポーツのレースで勝つというのが面白いでしょ。それがこのモータースポーツに親しみを持ってもらうきっかけになればいいなと思っていて。
私の家族もデミオに乗っているんですよ。デミオだとなんだか親近感が持てますね。
松田:広島で一番古いディーラーである広島マツダが、親近感のあるクルマでレースを頑張っている。そうしたことも一つのきっかけにして、広島でモータースポーツの認知度をもっと上げていきたいですね。HIROSHIMA TOYOPET RACING さんと一緒に力を入れていきたいと思っている部分です。
臨場感やワクワク感を共有する
松田:これまでレースに挑戦してきて、デミオもコンマ何秒かずつは早くなってチームとしても年々成長しています。ただ同様に他のチームもどんどん早いタイムを出し始めているので、デミオ本来の持ち味の中で闘っていくにはどうすればいいかを考えて参戦していくことが今後の挑戦。あとは、チームのかっこよさをとにかくしっかりと伝えていくことですね。
さっきのレース中、動画やスチールのカメラマンがピット内にたくさんいらっしゃって撮影されていました。レース後には松田さんやドライバーのコメント録りもしていましたね。
松田:僕は、そこは徹底的にこだわっているんですよ。たとえば優勝したとしても、実際にレースを観た人とそうでない人の温度差がやっぱりまだあるんです。だからYouTubeでも配信しているし、活動の様子をしっかり伝えることを意識しています。勝負の臨場感やワクワク感を一緒に楽しんでほしいですね。
YouTubeやInstagramなどのSNSだとより気軽に観れますね。
松田:チームを知ってもらうことで、広島のモータースポーツを知ってもらうことにつながればと思っています。あとはレース活動を通じてHM RACERSでクルマの部品を開発してみたくて、これも将来の大きな夢ですね。
ありがとうございます。決勝の走りも楽しみにしています!
いよいよ決勝。3時間耐久レース結果は…?
決勝まで少し時間があるので、サーキット内を散歩してみましょうか。広場ではイベントもやっているそうですよ。
決勝が始まる前になってくると、だんだん人が多くなってきました。
森:一人の方もいればファミリーで来ている方もいるし、ご飯も食べられるし、レースってイベントのような感覚で楽しめますね!
藤安:決勝は3時間の耐久戦。それだけの時間を走り続けるってすごいですよね~。
レースの一日に密着して感じたのは、とにかく松田さんをはじめチームメンバー一人ひとりのイキイキとした表情が印象的だったということ。ひたすらに速さを追求して闘いの世界に身を置くその姿は、かっこいい以外のなにものでもありません。サーキット会場やSNSを通してHM RACERSの活躍を観れば、きっと心を一瞬にして掴まれるはずです。