30年間アーティストとして壁画制作の活動をメインに立体造形、デザインなどこれまで数々の作品を生み出してきた久保開作さん。一つ一つ思いを込めて丁寧に作ることを心掛け、現在まで活動されています。そんな久保さんに、活動にかける思いについてお話を聞きました。
好奇心でスタートしたことが自分の仕事に
久保さんは壁画を描くことをメインに、立体造形の制作やTシャツのデザインなどさまざまな作品を制作するアーティストとして活動をされていますが、絵を描くことを始めたのはどんなきっかけからなのでしょうか。
久保:すごく単純なことなんですけど、小学校の絵画コンクールで賞が取れたときに、親や友人に褒められてうれしかったことがきっかけで、絵が好きになりました。あとは、図工も得意で好きだったっていうこともありますね。
絵を描くことも、ものづくりも好きだったんですね。そこから壁画を描くことになったのは何か理由があるんですか?
久保:ふとやってみたいって思ったんです。20代の頃にたまたま友達の店の壁画を描かせてもらったことがあって。その頃はお金をもらわずに、ただ単純に描かせてもらうことから始めました。
久保:本当は美術大学に行きたかったんですけど、勉強不足で(笑)。美術大学へ行くための予備校に通って、デッサンなどの基礎をそこで勉強しました。あとは絵が好きだから美術館に行ったり、本を読んだりして独学で学びましたね。最初の頃は全然上手じゃなかったんですけど、すごく楽しかったんですよ。
久保:あとは中学生のときにスケボーを趣味で始めたんですけど、スケートパークって壁にスプレーアートがあるじゃないですか。その文化だったり、雑誌、ビデオなどを見て、その中の世界がすごくかっこよくて影響を受けたことも大きかったかもしれないです。
絵が好きなこととスケボーと二つの局面から今があるんですね。最初は趣味からスタートされたということですか?
久保:そうですね。実家が運送屋でそこで働いていたんですけど、ある時から絵を描く仕事がしたいなと考えるようになりました。やっていくうちにだんだん「うちにも描いてほしい」っていう声が増えてきて、絵の仕事の割合の方が大きくなったんです。
久保:宣伝はほとんどしてなくて、ありがたいことに口コミで広がっていることが多くて、直接絵を見て声を掛けてくれるんです。絵の仕事が増えたことによって、親からも独立しなさいって言ってもらえて、25歳の2000年から「CAY ART TRICS」という名称で個人事業主としてスタートしました。
ということは、もう20年以上絵の仕事をされているんですね。
「自分」ではなく「人」を思って作る作品
久保さんはどういう思いを持って日々活動をされていますか?
久保:自分の絵を売るんじゃなくて、依頼をしてくれた人のために絵を作るようにしているんです。依頼者の要望に合わせれば基本的には何でも対応ができます。自分の思いを押し付けるんじゃなくて、相手のことを考えて思いを取り入れることが大切だと思って日々活動をしています。
それって絵だけじゃなくてどの分野でもいえることですよね。
久保:結局お客様が喜んでくれることが一番なんですよ。依頼してくれたお店の人もお店に来てくれるお客様にも喜んでもらいたいですし、そんな作品が作れたらいいなと思います。壁画とか内装とかいろんな仕事を依頼される方がいるので、できることはなんでもやってみようっていうことをモットーにしているんです。
久保:やっぱり作ったものを喜びあったり、びっくりしたりいろんな反応がみれることがおもしろいですよね。できるだけ丁寧に手を抜かず、一生懸命作品制作に関わることを意識しています。そうすれば思いも入るし、見てくれた人たちにも気持ちは伝わると思うんです。
逆に大変だったり、苦労してきたことも多いんじゃないでしょうか?
久保:毎回苦戦はしますよ(笑)。クライアントに合わせるのが難しい時もありますよね。その人にとってどこがいいとかっていうのを考えて、デッサンを見てもらったり、何度もやり取りがあったり。あと出来上がった後に簡単に「ここ変えて!」って言われると正直しんどいなと思う時もありますね。
なるほど、そういった場合はすぐに修復ができるんですか?
久保:絵だから、上から塗ってしまえばいいんですけどね。あまりにも多いと断る場合もあります(笑)。あとは、Tシャツも注文が殺到して困ったこともあります(笑)。
久保:そうですね。前に一つの商品が爆発的に売れたことがあって。もともと色のついたTシャツの一部を漂白することによって、デザインを表現する手法を使った作品なんです。やり方はYouTubeを見て自分なりに勉強して。1枚1枚ムラが違ってできることがおもしろいんですよね。
版をつくだけではなくて、1枚1枚久保さんが作られているんですね。
久保:仕上げは「手」でっていうことを売りにしています。今ってプリントがほとんどだけど、手描きで仕上げることの需要はどこかにあるだろうなとスタートしたころから思っています。プリントでいいと思う人もいると思うけど、やっぱり手描きがいいって人もいると思うんです。
広島の街の一部となる作品を
久保:僕が絵を描いた路面電車が走ればいいなと思います。自分の描いた絵が電車になって走るのはすごくおもしろいですよね。
それってすぐにかないそうですね!どんな絵を描きたいかイメージはありますか?
久保:花電車というカテゴリーがあるんですけど、花や植物が電車を覆い尽くしている絵を描きたいです。広島のお祭りやカープが優勝した時にも花電車が街を走ると思います。その花電車を、自分の得意なエアーブラシという塗装の道具を使って、リアルな花や緑で覆われた花電車を制作してみたいですね。
中尾:普段は壁画を制作していますが、それは動くことはないですよね。電車にペイントすれば、街の中を走りたくさんの方に見てもらうことができます。これが実現したら、自分の作品が広島の街の一部になれるような気がしますね。
久保:乗り物なので乗ってみたい人もいるだろうし、作品の中に入り込んで移動するという行動も新鮮でおもしろいですよね。車内にも所々にペイントを施せばいつも乗っている電車とは違った感覚でどこかへ行く楽しみになってもらえればいいなと思います。
電車一つでいろんな楽しみ方がありますね。これから走ることが実現されると思うととても楽しみです!
「広島県外でも世界でも依頼があればどこでも行きますよ」と久保さん。話を聞いていると本当に絵を描くことやものづくりが好きなんだなと実感しました。これからもアーティストとして広島県にとどまらず世界に羽ばたいていく久保さんの活躍に目が離せません。