
日本で誕生した錦鯉。いまでは50か国以上に輸出されKoi(こい)と呼ばれ親しまれています。鯉養殖の老舗、小西養鯉場は大正8年(1919年)創業。4世代にわたり広島から世界へ美しい錦鯉を届けています。食用鯉から始まった事業は戦後、景気の高まりとともに観賞用の錦鯉へと変遷を遂げています。時代ごとのニーズを見極めながら変革を重ね、現在は2025年7月に就任した4代目・誠社長と共に、一貫した自社ブランド「小西の鯉」を展開しています。
『泳ぐ芸術品』と称される錦鯉



時代ごとに柔軟に変化しながらも、一貫した自社生産で「小西ブランド」の確かな品質を築き上げてきた同店。錦鯉は「泳ぐ芸術品」と呼ばれる美しい模様はもちろん、人の顔を覚えて懐く親しみやすさも大きな魅力です。適切に飼育すれば20〜30年間生存でき、息の長いパートナーとして共に人生を歩むことができます。

「買っていただいた後、お客様の元で長く元気に育っていく姿を見ることこそが、私たちの一番の喜び」と語る小西会長。世界中の愛好家を惹きつける背景には、創業以来積み重ねられてきた、生き物に対する徹底した環境づくりと妥協のない情熱がありました。
健やかで美しく、丈夫な錦鯉を育てる
小西養鯉場が最も大切にしているのは、手元に渡ってから何十年も元気に生き続ける健康で丈夫な品質。一般的な短期間での急成長を目的とした養殖とは異なり、長期にわたり愛着を持って飼育される錦鯉だからこそ、スタート地点からの体づくりが欠かせません。

高品質と美しさを兼ね備えて育った「小西ブランド」の錦鯉は、これまでに数々の品評会で受賞されています。その一つ、1997年に小西会長が開発した「からし鯉」は、世界的な人気を誇る看板品種。からしのような絶妙な黄色が美しく、最大の魅力は1mを超える巨体に育つ圧倒的な成長力。また、非常に大人しく人懐っこい性格で、飼い主の手からエサを食べるほどよく懐きます。その親しみやすさから、池全体の鯉を落ち着かせる存在としても愛されています。現在は誠社長が継承し、ジャンボ系統のさらなる多品種強化を図るなど、世界中の愛好家から「小西ブランド」の象徴として高く評価されています。


錦鯉の水槽飼育は、大きな池がなくてもリビング等で気軽に楽しめる飼育スタイル。横から美しい模様を観賞できる点や、人に懐きやすいのも特徴です。非常に丈夫なため特別な保温器具は不要で、週1回程度の少量の水換えとエサの与えすぎに注意すれば、初心者でも手軽に始められます。
「特別な池がなくても、家族の一員として大切に育てる楽しさを知ってほしい」。生活様式が変化する現代だからこそ、現代の暮らしに寄り添う形で、錦鯉文化を未来へ、そして次世代へとつなぐ架け橋になろうとしています。
世界を魅了した美しさを、もっと身近な日常へ
現在、小西養鯉場が生産する錦鯉の8〜9割は海外へと輸出されています。世界的な評価を高める一方で、「日本発祥の伝統文化だからこそ、地元・広島をはじめ国内でももう一度その魅力を身近に感じてほしい」という強い想いのもと、体験型イベントを積極的に展開しています。
その象徴ともいえるのが、昨年8月から大型商業施設「アルパーク」で開催されている「日本一!鯉恋すくい大会」です。会場の巨大水槽を埋め尽くすのは、同店が手塩にかけて育てた色鮮やかな錦鯉の稚魚約2万匹。制限時間内の獲得数を競う本格的な大会形式で、「子どもの部」だけでなく「大人の部」も設けられ、今年も多くのファミリーや愛好家で熱気に包まれました。


「単に楽しく遊んでもらうだけでなく、大人も本気で挑戦できる場にしています。実際に錦鯉に触れ、持ち帰って育てる体験を通して、広島が誇る錦鯉文化の『未来のファン』を増やしていきたい」と話す小西会長。広島は広島城(鯉城)や広島東洋カープなど、古くから「鯉」と縁深い街。同店では錦鯉を単なる「高級品」としてではなく、誰もが気軽に楽しめる身近な存在として提案し続けています。小西丈治会長がこの「鯉恋すくい大会」に情熱を注ぐ背景には、地元のシンボルである錦鯉への親しみと愛着を、若い世代へ繋げたいという深い願いがありました。

創業から100年を超えてなお、受け継がれた技術と情熱を胸に、小西養鯉場はこれからも地域とともに、錦鯉文化の新たな未来を切り拓いていきます。