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フィッシュフレンズ|海も人も守る。釣り人が紡ぐ瀬戸内の未来

マリモグループの一員として、釣り業界に新しい風を吹き込んでいる企業・株式会社フィッシュフレンズ。釣り具の海外輸出や卸売を手がける傍ら、瀬戸内海の環境保全活動に情熱を注いでいます。
「海を守る活動って、ゴミを拾うだけじゃ続かないんです」と語るのは、営業部の山縣 勇さん。その取り組みは、ただのボランティアではありません。海洋保全、釣り人の安全、そして持続可能な仕組みづくりを一つに結んだ、循環型のプロジェクトです。

釣り愛が導いた環境保全の道

営業部の山縣 勇さん

山縣さんと釣りの出会いは大学時代。「初めてコウイカが釣れたときの感動が忘れられなくて。それからもう12年も続けています」。異業種からの転職先としてフィッシュフレンズを選んだ理由は、環境保全事業への共感でした。

山縣:釣りが好きだからこそ、海を守りたい。未来の子供たちの為にキレイな海を残したいんです。
海底のゴミを拾う山縣さん

山縣さんはダイビングのライセンスも取得し、月に1〜2回、海底ゴミの回収も行っています。「表面だけ綺麗にしても、問題は海の中にある。だから海底まで潜って、根本的に解決しないとって思うんです」。

瀬戸内海で今、深刻な問題が起きています。海水温の上昇により「磯焼け」が進行し、アオリイカの産卵環境が失われつつあるのです。
「海藻が育たなくて、海の中が砂漠状態になっているんです。アオリイカは卵を産む場所がなくて、釣り人の間でも『最近釣れない』という声が増えていました」。


この問題に対し、フィッシュフレンズが2025年新たに始めたのが「スクイッドセイバープロジェクト」。NPO法人もりメイト倶楽部Hiroshimaの協力を得て、森林整備で出た伐採材を使った産卵床を海中に設置する取り組みです。

海藻などに卵を産み付けるアオリイカの習性を利用し、海藻の代わりに伐採材の枝葉を束ねた産卵床。
産卵床ってどういうものなんですか?
山縣:だいたい2メートル四方の大きさで、伐採材の枝葉を束ねて土のうで固定したものです。海に沈めてもゆくゆくは自然に還るので、環境にも優しいんです。
森の間伐材が海のイカを守るんですね。
山縣:森の健全な育成に必要な間伐材を活用することで、森づくりにも貢献できます。山から海へ、森づくりと海の保全が繋がる仕組みです。

ライフジャケットで命と海を守る循環

スクイッドセイバープロジェクトの特徴は、その資金調達の方法にあります。産卵床1基あたり約15万円の設置費用を、ライフジャケット販売の収益で賄っているのです。

山縣:岸釣りでライフジャケットをつけている人って、実は少ないんです。でも水難事故は毎年起きている。だから、釣り人の命を守りながら、その収益でイカの産卵床を作る。そんな循環型のシステムを作りました。
コンパクトな腰巻式のライフジャケット。落水した時に自動的に膨らむ自動膨張式。
さらにコンパクトなウエストポーチ型は女性に人気。

販売するのは、Bluestormなど有名なフィッシングギアブランドとのコラボ商品。国土交通省の型式承認(通称:桜マーク)を取得した高品質な製品です。

メーカーとはどんな協力関係なんですか?
山縣:山縣:協賛金は一切いただいていないんです。代わりにロゴの使用許可をいただいて、SNSで一緒に発信してもらっています。現在は14社以上が協力してくれていて、SNSの発信力で広がっています。

特に人気なのが、ウエストポーチ型の軽量タイプ。「本当にペットボトルサイズで軽いんです。デザインもおしゃれなので、女性や初心者の方にも人気なんですよ」。

山縣さんが大切にしているのは、共感を基軸にした活動です

山縣:購入者の8割は「デザインが良かった」「メーカー品だから」という理由で買われます。でも、購入前にホームページの記事を読んでもらうようお願いしているんです。限定商品としてだけじゃなく、プロジェクトを理解してほしいので。
『海も人も守る』というキャッチコピーが素敵ですね。
山縣:釣りを知らない人からも「家族におすすめしたい」って言ってもらえるんです。そうやって口コミで「一緒にこのプロジェクトに参加しよう」って広がるのが理想ですね。

フィッシュフレンズの企業姿勢に共感し、コラボレーションや協力を申し出る企業も増加中。その賛同の輪は、釣り具メーカーのみならず異業種にも広がっています。

ハイエースなどのカスタムパーツで知られるUI vehicle(ユーアイビークル)と、ハイエースを中心としたカスタムプロショップ+ONEDER(プラスワンダー)吉島がコラボしたリールのカスタムハンドル。限定発売中。

60人が集う清掃活動から広がる未来

日本財団と連携した清掃活動も、着実に規模を拡大しています。フィッシュフレンズは日本財団の助成事業として、瀬戸内海の清掃活動を展開。もともと同社が運営する釣り情報サービスに「ごみ投稿」機能があり、利用者から寄せられた情報を日本財団に提供したことが連携のきっかけでした。

山縣:以前は10〜20人程度でしたが、最近は60〜70人参加が当たり前になってきました。大学生のボランティアグループが参加してくれたのをきっかけに、企業からの参加も増えたんです。

清掃活動の雰囲気は、和気あいあいとしています。「ご家族連れが多くて、子どもたちが競争のようにゴミを集めています。もう50回以上開催していますが、初期から来てくれている方が設営を手伝ってくれたり、すごく助かっています」。

釣具の海外輸出、商品開発、そして海洋保全。三つの事業を柱に、新しい釣り文化を創造するフィッシュフレンズ。「スクイッドセイバーという活動をブランド化していき、スクイッドセイバー=フィッシュフレンズ、というふうに皆さんに認知してもらいたい。海も、イカも、釣り人も守る取り組みを、国内外に認知させたいんです」と山縣さん。

国内ではまだ稀な、継続性のある環境保全活動。その根底にあるのは、釣りを愛し、海を愛する若者の情熱でした。フィッシュフレンズと山縣さんの取り組みは、これからも多くの人を巻き込みながら、瀬戸内の海を守り続けていきます。

株式会社フィッシュフレンズ

広島市西区庚午北1丁目17-23

TEL.082-273-3454

OPEN.9:00〜18:00

定休.土日祝

アクセス
広島電鉄・高須駅より車で約3分