
広島東洋カープでのプロ生活を経て、現在はOB選手とファン、地域をつなげる活動を行う横山弘樹さん。「RED FES(レッドフェス)」の開催や濃厚バスクチーズケーキ・YOKOCHEE(ヨコチー)のキッチンカー販売など、その活動は多岐にわたります。また自身の引退後のキャリア選択の経験から、これから同じ道をたどる後輩たちを支えたいとプロ野球選手のセカンドキャリア支援にも取り組み中です。横山さんに、セカンドキャリア選択の現状や自身の現在の活動について尋ねました。
現役選手のセカンドキャリアへの意識
現役時代はセカンドキャリアについてどのように考えていましたか?
横山:僕自身は、中学生の頃から好きなことを仕事にしたいという考え方を持っていました。だからプロ野球選手はもちろん、好きなことを事業にして経営者になりたいとも思っていて、現役時代もその考え方自体は持っていました。
現役の頃の横山さん。セカンドキャリアを考えている選手は多いのでしょうか?
横山:具体的に考えている選手は少ないと思います。日常の全てを野球に注ぐという考え方は大事だし、引退や戦力外という言葉を意識するタイミングであればあるほど、野球に力を入れないといけません。「次の仕事をどうしよう」と具体的に考える時間はそんなにないと思います。
プロ選手である以上、結果を出すことは大前提ですもんね。
横山:そうですね。僕もいざ引退して野球以外のことを勉強していくと、経営の考え方は野球にも通じることが多いと感じました。だから100%野球に力を注ぐ現役選手がいずれセカンドキャリアを迎えたときに不安にならないよう、僕がサポートできる存在になりたいと思うようになりました。
横山さんが現役の頃に使用していたグローブ。今の自分の経験が、いずれ後輩のためになるかもしれない
横山さん自身はどのようなセカンドキャリアを選択しましたか?
横山:できるだけ野球に関わりたかったので、読売ジャイアンツで球団スタッフとして打撃投手をしました。2軍・3軍の若い選手を担当していましたが、自分が関わる選手の中からも戦力外通告を受ける選手がいて、何か僕ができることはないかとだんだん考えるようになりました。それなら早いうちに自分も行動を起こして、苦労も早いうちに経験したほうが良いと思い、退団して経営の道を進むことを決めました。
横山:経営者の先輩たちから「飲食分野の経営が一番難しい」と聞き、その一番難しいと言われている分野で1年間と期限を決めてしっかり学んでいこうと思い、最初にキッチンカーの運営を始めました。野球場にキッチンカーを出店して、遊びに来ている子どもたちにパフェを食べてもらいたいと思ったんです。メニューを増やす段階で、僕自身が子どもの頃母親につくってもらってうれしかったチーズケーキを出したいと考えて、試行錯誤して開発したのが今手掛けているチーズケーキです。
マツダ スタジアムでの試合終了後限定で、カープロードにキッチンカーを出店。冷凍の持ち帰り用チーズケーキを横山さん自ら店頭に立ち販売しています。横山:そうなんです。そのチーズケーキやキッチンカーをきっかけに、野球ファンの方とのコミュニケーションも生まれるようになりました。1年限定で始めたことだったけどおかげさまで大きな反響をいただき、せっかくならそれを自分の強みの一つにしていきたいと考えて今に至ります。自分が経験したことはこれからセカンドキャリアを迎える後輩が経験することにもつながると思うので、自分の今の選択がいずれ後輩のためになるかもしれないと常に考えながら行動することを大切にしています。
なめらかな食感と濃厚な味わいのバスクチーズケーキ「YOKOCHEE」はフレスタのオンラインショップでも販売中。RED FESを今後の活動の軸に
横山:「RED FES(レッドフェス)」というイベントを2023年から開催しています。引退した選手はもちろん自身のセカンドキャリアについて考えてそれぞれ行動を起こすのですが、そうした選手が集まることのできる場所やコミュニティがあるとより良いなと思い形にしました。
2024年に開催したRED FESの様子。横山:OB選手を招いてトークショーやエキシビジョンマッチをしたり、ファンの方との撮影会などコミュニケーションがとれるイベントです。このイベントはたくさんのスポンサーやファンの方、OB選手の協力があって開催できています。後輩をサポートしたいと思って始めたことなのに、僕自身が多くの方に助けていただいていて、その状況に自分の未熟さを痛感しているところです。心強いと思う気持ちと、もっと自分も学びと経験を重ねて力をつけていかなければと思う気持ちがあります。
現在さまざまな活動にともに取り組む機会が多い、カープOBの戸田隆矢さんと今村猛さんと一緒に。――――――――――
▽併せてチェック!
戸田さんのセカンドキャリアの一つはレモン農家。記事にて紹介しています。
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横山:これまでにRED FESを2回開催して、次のシーズンオフに開催する3回目に向けての準備を始めているところです。このRED FESを機に、OB選手による子ども向け野球教室やスクール開催のきっかけになればと思っています。OBは経験を生かすことができ、これからプロ野球選手を目指す子どもたちにとってもセカンドキャリアの不安を持つことなく目指せる環境をつくっていきたいですね。
次世代の子どもたちの夢を後押しすることができますね。
横山:選手とファンと地元企業を始めとした広島の皆さんとが一体となって交流していける場を、長期的な目線でつくっていきたいと考えています。僕をプロ野球の世界へ導いてくれた広島東洋カープへの感謝と、現役時代も今も応援してくれているファンの皆さんへの感謝と、今の活動を応援してくれている方への感謝を込めて、広島の地で恩返しができるよう一歩ずつ取り組んでいきたいです。


現在は横山さんが野球を教える機会はないそうですが、編集部スタッフ(元・野球部マネージャー)がマイグローブを持参してピッチングについて少し教えてもらいました!横山さんの広島での新たな挑戦は、まだまだ始まったばかり。「支えられる存在から、支える存在へ」。その思いを軸に人と人、人と地域をつなぐ活動に横山さんはこれからも取り組みます。