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電動車椅子サッカーで躍動!障害の壁を越えるインクルーシブフットボール|A-pfeile広島PFC 谷本弘蔵さん

レスリング選手として全国大会に入賞するほど活躍していた高校時代に、練習中の負傷で肩から下にまひを負った谷本弘蔵さん。もう一度スポーツの世界で谷本さんを輝かせたのは「電動車椅子サッカー」でした。昨年秋、障害者スポーツ全国大会に広島県代表として出場した谷本さんに、電動車椅子サッカーをはじめとした、障害に関係なく誰もが交流できるインクルーシブフットボールの魅力についてお聞きしました。

多彩なシュートを繰り出す電動車椅子サッカー

電動車椅子サッカーとはどんなスポーツですか?
谷本:電動車椅子サッカーは、競技用の電動車椅子に乗り4人対4人で行います。試合は屋内で行い、ピッチは大体バスケットコートほどの広さです。ボールは少し大きめな直径32.5㎝のものを使用します。

車椅子も特徴的ですね!
谷本:競技用の電動車椅子には、前部分にフットガードという金属製の枠が付いています。一般的な電動車椅子よりもモーターが大きく低重心なのも特徴の一つです。スピードは、国内競技では時速6㎞、国際競技では時速10kmまで出すことができます。

フットガードの先端から白い線までを「足」とみなし、長さや形、角度などは規定により細かく定められています。

スピードや小回り重視の無骨な車体がレーシングカーにも似ていてかっこいいです!
谷本:電動車椅子サッカーのプレイヤーには重度の身体障害を持つ人が多いので、動かせる機能、例えば手、足、口、あごなどを使ってジョイスティック型のコントローラーを操作し、電動車椅子を動かしています。私は首から下にまひがあるので、あごを使ってコントローラーを操作することで、スピードや回転などを細かく調整しています。

電動車椅子は障害や体格に合わせてカスタムされているんですね。どのようにボールを蹴るのでしょうか。
谷本:主にフットガードの白いラインより先端の面や角にボールを当てます。フットガードの側面で蹴るときには、電動車椅子をその場で回転させることでボールに勢いをつけます。シュートの際に強い威力が必要な時は、電動車椅子をほぼ一回転させることでより強いシュートを打つことができますよ。
電動車椅子ならではの独特なプレースタイルは躍動感と迫力がありますね!

電動車椅子サッカーとの出合い

18歳の時、レスリングの練習試合で負傷し、首から下にまひを負った谷本さん。当時は一生寝たきりの人生すら覚悟し、リハビリを受けながらも、自分一人でできることの少なさに落ち込む日々を過ごしたそうです。そんな時出合ったのが、電動車椅子、そして電動車椅子サッカーでした。

谷本:初めて電動車椅子に乗った時は、自分の思うままに行動できることに本当に感動しました。ベッドの上で天井を見続けながらただ年月を過ごしていくと思っていた私にとって、電動車椅子はまるで魔法のようだったんです。その後、病院で出会った友人から電動車椅子サッカーを教えてもらったのが、このスポーツを始めたきっかけです。自分の意思で自由に動き回りプレーするこのスポーツは、身体障害を負った私に自立と自己表現の機会を与えてくれました。それ以来、もう20年近く電動車椅子サッカーを続けています。

約20年の間、電動車椅子サッカーを続けてきた谷本さんにとって、このスポーツの良さはどこにありますか。
谷本:障害の有無や性別にかかわらず、老若男女が同じピッチでプレーできるところだと思います。電動車椅子サッカーは、電動車椅子を操作できる人であれば年齢や性別は問わないので、比較的多くの人に開かれたスポーツだと思います。試合も、サッカーは男女でチームが分かれていますが、電動車椅子サッカーでは男女混合のチームでプレーすることができます。
より多くの人が同じ土俵に立てるのがいいですね。
谷本:また、選手の体調や体力に寄り添いながら試合を進められるのもいいところです。
試合中、チーム内の交代は自由に行うことができるので、体力的にずっとピッチに立つのが難しい人でも試合に参加することができます。

20年越しの全国大会へ

谷本さんは、2023年10月に鹿児島県で開催された特別全国障害者スポーツ大会「燃ゆる感動かごしま大会」に広島県代表として出場しました。結果は3位入賞!大会の感想をお聞きしました。

レスリング時代から20年、再び立った全国の舞台はいかがでしたか?
谷本:やっぱり全国大会は空気感が違いましたね。あのピッチに立てたことは名誉あることだと感じています。客席から応援してくれる人の笑顔を見て、これからも続けたいし、このスポーツをもっと広めるために頑張りたいと改めて思いました。

現在谷本さんは、電動車椅子サッカーのような障害者サッカーを広める活動の一環として、「インクルーシブフットボール」と呼ばれる、障害の有無に関係なく誰もが一緒に楽しむことを目的としたサッカーのイベントにも積極的に参加しています。このようなイベントは広島でも定期的に開催されています。

最後に、谷本さんの今後の目標を教えてください。
谷本:やはり日本代表になって活躍してみたいですね!(笑)それに、これからも電動車椅子サッカーを続け、電動車椅子サッカーやインクルーシブフットボールを広める手助けをすることで、電動車椅子サッカーに恩返ししていきたいと思います。

電動車椅子をあごで巧みに操作し、相手をかわす細かな動きから躍動感のあるプレーまでこなす様子は迫力満点!谷本さんが所属するA-pfeile広島PFCや「一般社団法人 広島県インクルーシブフットボール連盟」のイベントなど、広島でもインクルーシブフットボールに気軽に触れる機会があります。精力的に活動を続ける谷本さんの今後の活躍にもぜひご注目ください!

A-pfeile広島PFC

谷本 弘蔵さん

広島県出身。18歳の時にけがで首から下にまひを負う。その後電動車椅子サッカーに出合い、昨年秋には鹿児島県で開催された特別全国障害者スポーツ大会に広島県代表として出場し3位入賞。現在は株式会社広島情報シンフォニーに勤務しながら、電動車椅子サッカーチーム「A-pfeile広島PFC」に所属している。