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HIROSHIMA TOYOPET RACING古谷英明さん|常に上を目指して。広島のモータースポーツ界に革命を!

モータースポーツ人口が減りつつある広島で、2016年に産声を上げたレーシングチーム「HIROSHIMA TOYOPET RACING」。チーム結成のきっかけは? レースカーってどうなってるの? チーム代表の仕事とは? チーム代表の古谷英明さんにモータースポーツの魅力について尋ねました。知れば知るほど、その奥深い世界にハマっていきます…!

取材をさせてもらった廿日市市にある『GR Garage HATSUKAICHI』は、HIROSHIMA TOYOPET RACINGの本拠地。

チーム代表の意外(!?)な役割

HIROSHIMA TOYOPET RACINGは2016年にチームが立ち上がったとお聞きしています。スタートのきっかけはどんなところからだったのでしょうか?
古谷:HIROSHIMA TOYOPET RACINGは、その名の通り広島トヨペットのレーシングチームです。広島は今、モータースポーツの競技人口が本当に少ないんです。岡山には過去にF1も開催されたことのあるサーキットがありますが、広島にはないのでレースを観る機会も知ってもらう機会も少なくて。
実のところ、私自身もモータースポーツとはこれまでなじみが薄かったりします。
古谷:実際そういう方が多いんですよ。知ってても、なんだか怖そうなお兄ちゃんたちがやっているんじゃないかと思われたり(笑)。
レース会場でのチームの面々。みんな真剣な表情をしていますが、怖くはありません。
イメージですよね(笑)。
古谷:でも自分たちの住んでいる街の自動車ディーラーであればどんな人たちなのかある程度はイメージしてもらえますよね。その人たちが挑戦しているスポーツなら、身近に感じてもらえるきっかけになるんじゃないかと思って。
人となりを知っているだけで、だいぶん壁は低くなりますね。
古谷:あとは自動車ディーラーとしての話になりますが、これからクルマからモビリティへと扱う商品が変化していく時代の中でも、サービスやメカニックの技術を未来へつないでいかないといけない。その技術をよりしっかりと磨いて人材育成をしていけるのがモータースポーツの現場でもあるので、そうした観点もチーム発足のきっかけになっています。
GR Garage HATSUKAICHI内に飾られている、チームのこれまでの活動記録。
広島の自動車ディーラーによるレーシングチームだと、広島マツダのHM RACERSもありますよね。
古谷:HM RACERSさんはもちろん勝負のうえではライバルですが、同じ広島のチームということで一緒にモータースポーツを盛り上げようと頑張っている同志です。なので、これまで一緒に参戦しているレースも多いんですよ。
チーム代表の古谷さんから見て、自分のチームの強みはどんな部分になりますか?
古谷:これまでのレースを見ていると、うちのチームはすごく真面目だなと思います。エンジニアたちが基本に忠実に、安全第一で丁寧な作業をしています。トヨタ自動車が定期的にサービス技術を競う大会を開催しているんですが、そこで日本一になった経験のあるメカニックがメンバーにいるんですよ。
日本一ですか! それはすごい!
古谷:だから特に大きなレースは精鋭を集めているので真面目な印象があるのかなと思います。レースによっては若手のメカニックを入れて参戦しているものもありますよ。
またもや、レース会場でのチームの面々。真剣にモニターを見ているだけで、決して怖くはありません(2回目)。
ちなみに、古谷さん自身は運転されないんですか?
古谷:僕自身はクルマもモータースポーツも大好きでレースに出るライセンスも持っているんですが、大人になって始めたからか自分で運転してビュンビュンとばして走らせるのが少し怖いんですよ(笑)。
そうなんですね(笑)。それでドライバーではなくチーム代表兼監督として参戦されていると…。
古谷:はい。ではあるのですが、現場ではどちらかというと怒られる係です。
えっ、怒られる!?
古谷:レース中に、例えばチームに違反があったりとか何かあったときに、謝りに行くんです(笑)。あとは、晩御飯のお店を決める係(笑)。それがチーム代表としての大きな仕事です!
みんなのモチベーションを上げるために(笑)。それもチームには欠かせない役割ですよね(笑)!
駐車場に並んでいた2台のレースカー。

あのヴィッツが、ゴリゴリのレーシングマシンに

今、外の駐車場に見えているのが実際にレースで使われるクルマですか?
古谷:これは、スーパー耐久シリーズというアマチュアの中で最高峰と言われるレースで走るクルマです。その中でも一番小さいクラスのクルマで、実はこれヴィッツなんですよ。街の中でもよく走っていると思うんですけど。
ヴィッツって日常使いのクルマというイメージだったんですが、レース仕様になるとこんなに雰囲気変わるんですね~。イカつくなったというか(笑)。
古谷:そうそう、面白いでしょ(笑)。親近感のあるクルマも、メカニックたちがレース用に改造するとこうなるんですよ。よかったら実際に見ていってください。
さっそくレースカーに試乗させてもらう編集部・藤谷。「シートが普通のクルマと違ってがっしり守られてる感じがする…! 助手席や後部座席が外されて、運転席しかない状態なのも不思議な感じです」。
「音が大きすぎるので、ここではエンジンをかけられないんですけどね」と古谷さん。運転している雰囲気を楽しませてもらいました。
佇まいがもう、いつも見ていたあのヴィッツじゃない…。オーラが違う!
店舗の中にも、何か体験できる機械がありますね。
古谷:ドライブシミュレータですね、これも体験できますよ。
ぜひさせてください!
ドライバーが実際に練習する際にも使用するというドライブシミュレータ。
続いては、編集部・中尾がチャレンジ。
「少しハンドルを切っただけで大きく向きが変わる…!」。真っすぐは何とか走れても、第一コーナーで上手く曲がれずクラッシュ続き。
古谷:これは、ハンドルの重さやぶつかったときの衝撃がけっこうリアルに再現されているんですよ。僕も一度乗ってしまうと楽しくて時間を忘れてしまいますね。

たとえ無謀と言われても…!

2020年シーズンは、チームの調子はいかがですか?
古谷:チーム発足5年目となる2020年は、初めてスーパー耐久シリーズに参戦しました。しかもその初参戦となる9月に行われたレースが、富士スピードウェイでの24時間耐久レースだったんです。
いきなり24時間の耐久戦ですか…!
古谷:周りからは無謀だと言われたんですよ。実際、2月末にレースへ出場予定のチームが集まって事前に走るテストの場があったんですけど、そのときうちのクルマはビリだったんです。他車より3~4秒遅くて、これはレースの世界だと致命的な遅さです。
3~4秒で致命的…。
古谷:これはまずいと思いながら広島に帰ってきて、そこから調整と準備を重ねました。その甲斐あって2戦目のレースでは、トップと同じくらいのタイムで走れるところまで仕上げたんですよ!
ビリからトップっていう挽回具合がすごいですね。
古谷:そうですね、うちのチームが伸びしろが一番すごかったというか。チームのみんなの団結力と努力あってのことですし、やりがいと今後のモチベーションにもなっています。
そうなると、今度はまた他のチームがHIROSHIMA TOYOPET RACINGを追いかけてきますね。
古谷:それがレーシングチームとしての醍醐味でもありますね。レースでも仕事でも同じですが、常に上を目指していくことを心がけています。2020年はヴィッツでしたけど、2021年はより本格的なクラスに挑戦します。これからもステップアップしていきますよ!

広島モータースポーツ界の発展を願って

HIROSHIMA TOYOPET RACINGとHM RACERSが一緒にレースに出ているという話もありましたが、広島に「+(プラス)を届ける」というところではモータースポーツの普及という部分がまず大きいかと思います。
古谷:そうですね、1つのチームでできることは限られますが、2つのチームならできることは増えますよね。広島の自動車ディーラーが面白いことやってるなって、まずは地元の皆さんに知ってもらえるようにしていこうと思っています。
私もそうですが、自分の生活の中でなじみが少ないと知る機会もないので、まずは知ってもらうことが大切ですね。
古谷:昔カナダで暮らしていたことがありますが、カナダには家の近くにカートコースがあって週末は子どもたちがたくさん走りに行くんですよ。ヘルメットだけ自分のものを持っていけばカートはレンタルで乗れるし、年間チャンピオンを決めて表彰式をやったりもしていました。
近くにコースがあると気軽に行けるので、身近に感じますね。
古谷:息子もカートで遊んでいたんですが、その経験がきっかけなのか10歳の誕生日に「将来F1ドライバーになりたいから本格的に挑戦したい」と言ったんです。そのときに思ったのが、モータースポーツが身近な文化になっているということ。それと比べると日本は、クルマ自体は日常に近いけどモータースポーツとなると敷居もハードルも高く思われがちです。
確かに…。
古谷:「クルマが好き!」とか「夢がレーシングドライバー」だという子どもたちがもっと増えるように、気軽に練習したりレースを観られるように。情報発信や環境整備などを含めて広島のモータースポーツ界、ひいては自動車業界の活性化につなげていくことが、このチームの大きな役割の一つだと思っています。
ドライバーと子どもが同乗してサーキットで走る楽しさを体感できるイベント「ドライブ王国」も定期的に開催している。

編集部、サーキットへ行く

取材を終えて約2週間後、「やっぱり生でレースを体感したい!」と思い岡山国際サーキットで行われたスーパー耐久シリーズへ!
来ました、岡山国際サーキット! 写真右からチーム代表・古谷さん、編集部副編集長・森、藤安。
レースに向けて、ピットで着々と準備を進めるHIROSHIMA+vitz号。
森:サーキットに来たのは初めてです。ピットも見れてテンション上がります!
古谷:スタート30分前くらいになると各ピットからエンジンをふかす音とかが鳴り始めて、臨場感がより出てきますよ。
レースクイーンの2人を発見! すかさず記念撮影!!
まずは予選からスタート! 2人のドライバーの合計タイムにより、決勝は12番手でスタートすることに。
隣りのチームの動きが分かってしまうくらい、ピット同士ってすごく近いんですね。
古谷:そうなんですよ、隣りはHM RACERSさんです。今回は広島からキッチンカーが来ているので、2チームのスタッフが自由に食べられるようにメニューを準備したりして、レース会場での交流も意外とあるんですよ。
なんて話していたら、隣りのピットからHM RACERSチーム代表・松田さんが! 決勝が始まるまで、つかの間のリラックスタイム。
レース中は、スタンドからだけじゃなくてコースに沿って各所で観戦できるみたいです。ちょっと行ってみましょう!
「間近で見ると、カーブの速度が本当にエグイ…! 迫力がありすぎますね」。
レース中、厳しくモニターをチェックする古谷さん。
ドライバーやメカニックをはじめ、多くの人がチーム一丸となってレースに参戦。
レースを終え、結果は6位入賞! チーム内に笑顔が戻ります。

爆音やレースの駆け引きなど迫力あるシーンを間近で体験し、モータースポーツのワクワク感を初めて体験した編集部。そして実は…、古谷さんはHIROSHIMA TOYOPET RACINGのチーム代表でもあり、この広島CLiP新聞の編集長でもあるのです! 古谷編集長率いる編集部もHIROSHIMA TOYOPET RACINGのようにチーム一丸となって、広島でさまざまな活動に情熱を注いでいる人や魅力を熱くお伝えしていきたいと思います!

HIROSHIMA TOYOPET RACING チーム代表

古谷 英明さん

2016年発足のレーシングチーム「HIROSHIMA TOYOPET RACING」のチーム代表。レーシング活動を通して「夢がドライバーだという子どもたちが増えるように」と、広島のモータースポーツの普及に努める。

GR Garage HATSUKAICHI

廿日市市串戸1-8-18

TEL.0829-30-8603

OPEN.10:00~18:00

定休.月曜日

アクセス
広島CLiP新聞編集部(CLiP HIROSHIMA)から車で約35分