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プロレーシングドライバー 平川亮選手|「平常心で最後まで粘る」走りで、世界選手権を目指す

日本のトップクラスレーシングドライバーに名を連ねる、平川亮選手。13歳からレーシングカートを始め、現在ではさまざまなレースで活躍しています。広島出身の平川選手のプロレーサーになるまでの道のりやレースにかける思いを、栃木県にあるサーキット「ツインリンクもてぎ」にて聞いてきました。

スピードに魅せられた学生時代

13歳からお父様の影響でレーシングカートを始めたと伺いました。もともとモータースポーツには興味があったんですか?
平川:小学生の頃から乗り物は好きで、特に飛行機が好きでした。その頃父親は趣味でレースをしていて見に行ったことはあったんですけど、車には特別興味は持っていなかったですね。
どんなきっかけで興味を持つようになったんですか?
平川:中学生になって自転車部に入ったんです。ロードバイクはかなりスピードが出るので、下り坂をすごいスピードで下って遊んでいました。そんなことを繰り返しているとけがをするじゃないですか。少しのけがには慣れてきたんですけど、大きなけがを経験する事もありました。そんなときけがを心配した父親がレーシングカートに連れて行ってくれて、本格的にやりだした感じですね。
もともとスピードに魅せられていたところがあったんですね。
レーシングカートを始めた頃の平川選手。
今はプロのレーシングドライバーという職業に就かれたわけですけど、カートは趣味やレクリエーションとしてやっていたんですね。
平川:そうですね。カートは親子のコミュニケーションツールの一つだったと思います。
親子のコミュニケーションツールだったものから、プロの職業として意識し始めるようになったのはいつからですか?
平川:14歳のときに中学生くらいまでが出場するジュニアレーシングカートの全国大会があって、年間シリーズチャンピオンを獲得しました。そのときからなんとなく将来をイメージし始めました。
すごく優秀な成績が出たから、自分に向いていると感じたんですか?
平川:カートを始めたときは広島県内だけでやっていたのですが、全国大会で有名な選手たちと一緒にレースをすると自分の方が早くて、自信が持てたんだと思います。
練習走行の合間に取材に応じていただきました。
学生時代に学業とレースの両立、文武両道は大変だったのではないですか?
平川:確かに大変でした。全国遠征からは終電で広島へ帰ってくることが多くて、自宅に到着するのは日付けが変わってからでした。でも翌早朝には学校へというのは体力的にすごくつらかった覚えがありますね。勉強はなんとかやっていました。遠征では移動時間が多いので、そういったときに勉強して、なんとか授業についていけるように頑張りました。
時間の使い方を学んだんですね。特に努力したのはどんな部分ですか?
平川:学校を卒業したことですね。すごく忙しくて学校を辞めようと何度も思ったんです。高校生になってからはフォーミュラカーなどいろいろなカテゴリーのレースを経験することが増えて、学校を休むことが多くなりました。出席日数は危ういし、レースに集中したいと思っていたし、いっそのこと学校を辞めようかと考えて先生に相談しました。そうしたら「絶対に卒業だけはしろ」と𠮟咤激励してくれて。文武両道を両立する手助けをしてもらいました。
フォーミュラに挑戦して間もない頃の平川選手。

支えてくれる方々の喜びが自身の喜びに

プロレーサーだからこそ感じることのできる喜びとはどんなことですか?
平川:当然のことながらレースで一番にチェッカーフラッグを受けるときはうれしいですけど、それよりも多くの人と関わり合いを持てるところですね。自動車やタイヤのメーカーの方、監督やレースのサポートをする方、マシンのメンテナンスをする方など本当にすごい数の方が関わってくれている中で、実際に僕が走って、結果が出て、その人たちが喜んでくれることが一番うれしいですね。
マシンメンテナンスには繊細で緻密な作業が求められます。
レースの世界は知らない人から見たらドライバー一人で運転するから個人プレーのように見えるかもしれませんが、実際はそうではなくチームプレーですよね。
平川:スポンサーの方も多くいらっしゃいますし、ファンの方もいらっしゃいますし、そういった多くの方がいてくれて僕は成り立つ存在です。
ファンの方もチームの一員って感じですね。
平川:誰もいないところでレースをやっても気分が盛り上がらないですし、コロナ禍でレース場に観客がいない状況で優勝してもシーン…としていてすごく寂しかったですよ。ファンの方が応援してくれたりレース観戦に来てくれるからこそ、レーサーをやっていて良かったと感じます。
マシンのセッティングについて、チーム監督と打ち合わせをする平川選手。

常に意識する「平常心」と「粘り」

平川選手がレースのときに一番気を遣うことは何ですか?
平川:一番はタイヤの状況ですね。今どのくらいグリップするかとか、どうやってゴールまで持たせようかとか考えています。前の車を追っているときと、一番前を走っていて後ろの車をコントロールしているときではタイヤの使い方が異なりますし。
レースの状況によって、どういった走りをするかを考えているんですね。平川選手のホームページを拝見すると、「平常心で最後まで粘る」という信念を持っているとありました。その信念に行きついたきっかけはあるんですか?
平川:レース中はアドレナリンがすごく出て行き過ぎるというか頑張り過ぎるというか、ブレーキをかけるのを遅らせ過ぎたり、コーナーを無理に曲がろうとしたりしがちです。
平常心を保ちながらも闘争心を感じる面持ちです。
興奮してもっと前に出ようという感情になるということですか?
平川:人間の本能なのかもしれないですけど、欲をかきやすいです。でも落ち着いて平常心でいたときの方が結果は良いことが多いですね。だからこそ常に平常心でレースに臨みます。「最後まで粘る」は、レースは最後まで何が起こるか分からないので、余裕があるときでも辛い状況でも最後まで一生懸命走るということです。
余裕があるときでも最後で気を抜いてしまうと逆転されてしまうということですね。
平川:マシンという道具を使っているのでいつトラブルが起こるか分からないですし、かなりのスピードが出ていますからちょっとでも気を抜くと大きな事故につながりますね。
なるほど、粘るというのはただがむしゃらに走るだけではなくて、最後まで気を抜かないことなんですね。
平川選手がプロレーシングドライバーだから言える、一般のドライバーへの運転アドバイスをお願いします。
平川:もし体験したことがなかったら一度サーキットを走って欲しいですね。レース用の車でなくても、普段使用しているマイカーでけっこうです。公道ではできないような急ブレーキや急ハンドルをしたときに、車がどんな動きをするのかを体験してほしいですね。車にコントロールされるのではなくて、自分自身で車をコントロールできるようになると面白いですよ。
コントロールして運転を楽しむ、車との対話を楽しむ感じですね。
平川:車がただの移動手段ではなくて、運転を楽しめると車に乗るのが楽しくなるから安全運転につながると思います。
次に目指すのはどんなことですか?
平川:今目指しているのは、FIA世界耐久選手権(FIA World Endurance Championship:略称はWEC)のドライバーです。有名な「ル・マン24時間耐久レース」もその一つです。世界選手権なので世界中から注目を浴びますしドライバーのレベルもすごく高いので、是非チャレンジしてチャンスをものにしたいと思っています。
チャレンジとは自分でドライバーに名乗りをあげるのですか?
平川:世界選手権でドライバーをするには自動車メーカーの支援がないと無理なんです。僕は基本的にトヨタなので、トヨタに認めてもらってマシンに乗るチャンスを獲得したいと思っています。
選手の腕や成績はもちろんのことながら、メーカーとの関係性やレース活動の方針によってチャレンジできるかどうかがあるんですね。そういう意味でもレース活動はチームスポーツですね。
平川:チームスポーツだからこそ人間関係が大事ですよね。自分が所属しているメーカーやスポンサー、チームメイトに認めてもらえるように引き続き頑張ります。
世界地図が描かれたデザインの平川選手のヘルメット。

広島CLiP新聞編集部 HIROSHIMA TOYOPET RACINGの一員になる!!

広島CLiP新聞編集部は取材時に「体験」をさせてもらうことが多いですが、今回はなんと本物のレースにチームの一員として参加してきました。以前の取材で岡山国際サーキットへ訪問してピット内に入ったことはありましたが、ピットクルーをするのは初体験です。

HIROSHIMA TOYOPET RACINGがスーパー耐久シリーズ2021から使用するマシンとカテゴリを「GR Supra GT4」/ST-Zクラスに移行して、最初のレースが栃木県にある「ツインリンクもてぎ」で行われました。

「ツインリンクもてぎ」はサーキットだけではなく、総合レジャー施設を思わせる充実の内容で、徒歩では回りきれない規模です。
#111 Access HIROSHIMA+ GR Supra GT4

今回、広島CLiP新聞副編集長に与えられたミッションは「マシンへの給油係」。給油係4人が1チームとなって、レース中のマシンに迅速に燃料を給油します。

給油時の動きや、装備品の正しい装着方法の説明を受けます。
ヘルメット苦しい…。
平川選手も本番の準備をしています。
サーキットでのマシンはすごい迫力です!!
スムーズに給油をするために、4人で息を合わせます。
表彰台の平川選手(写真右)とHIROSHIMA TOYOPET RACINGのドライバーたち。

今回は激しく降る雨の中でのレースでしたが、予選8位から怒涛の追い上げで見事クラス3位で表彰台に上がりました!!初ピットクルーをなんとかこなすことができ、チームが表彰台に上がる手伝いができたかも!?これからのHIROSHIMA TOYOPET RACINGの活躍にも注目です。

HIROSHIMA TOYOPET RACINGチーム集合写真。

さまざまなレースで活躍されている平川亮選手。結果を出す走りの裏には強い信念がありました。驚くべきことに取材から約3ヵ月後の2021年6月に、目標の「WEC」でのトヨタのマシンテストドライバーに抜てきされました。次のステージへと着実に向かっているのは言うまでもありません。広島県から世界へ向けて羽ばたく平川選手のさらなる活躍が楽しみです。

プロレーシングドライバー

平川亮選手

2013年から国内のフォーミュラカーのトップカテゴリ「スーパーフォーミュラ」に参戦。2017年にはSUPER GT500クラス ドライバー&チーム年間チャンピオンを23歳で獲得し、史上最年少コンビ記録を更新するなど、最前線で活躍を続ける。HIROSHIMA TOYOPET RACINGのドライバーも務める、広島県出身の国内を代表するプロレーシングドライバー。