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セーラー万年筆|文房具好き必見!世界でも珍しい万年筆製造の裏側を見られる工場見学

2021年に創業110周年を迎えたセーラー万年筆は、国内の万年筆メーカーとして最も古い歴史を持つ、万年筆の国内三大ブランドの一つです。2022年にリニューアルした新工場で今年からスタートした工場見学を文房具好きな広島CLiP新聞編集部員がレポートします!

工場見学始まりのキッカケは西日本豪雨災害

広島市内中心部から国道31号に入り、海沿いを車で走ること約20分。少し変わった形をした建物が見えてきます。それがセーラー万年筆株式会社の広島工場です。

左側がペン先をモチーフにしたペン先棟。右手奥に見える青い棟が設備棟。いざというとき地域の皆さんも避難できる設計にしているそう。

入り口に到着した我々を工場見学専門のガイドさんが出迎えてくださいました。今回はガイドさんに加えて、セーラー万年筆・ブランド企画部の山口さんに工場をご案内いただきます。

一見、工場とはわからないほど斬新なデザインの建物ですね!
山口:建物のデザインコンセプトは「ペンの船出」です。上空から見ると万年筆のペン先の形、横から見ると船をモチーフにしたデザインになっているんですよ。
工場見学を始めたきっかけは何だったのですか?
山口:きっかけの一つになったのは2018年の西日本豪雨災害です。当社の工場も浸水し、大きなダメージを受けましたが、そのような中で工場の敷地が救援に来た自衛隊の駐車場に使われるなど、地域に貢献することもできました。その経験から、新工場は地域の方にもこれまで以上に身近に感じていただきたい。そして多くの方にセーラーのものづくりを知っていただきたいという思いで、工場見学を始めました。

山口さんのお話を聞き、ますます期待が高まった編集部員。ということで、さっそく工場内を案内していただくことに。

【工場見学内容】
・会社紹介の動画視聴
・スタッフが案内しながら万年筆やインクの製造現場を見学
・ショールーム観覧
・万年筆の試し書き

(1)動画でセーラー万年筆の歴史を学ぶ

見学用のヘアキャップとマスクをつけ、2階のショールームへ。まずは大きなモニターで会社紹介の動画を視聴します。

映像によると、創業者の阪田久五郎は、広島県の軍港都市・呉で日本初の14金製ペン先の国産万年筆の製造に着手。それよりセーラー万年筆は「国産万年筆の生みの親」として知られるようになったそう。

(2)いざ!工場スペースへ潜入

動画視聴が終わったら、ショールームから工場スペースへ移動。工程ごとにエリアが分かれ、この日は10数名の職人さんたちが作業をしていました。

万年筆の製造工程は大きく分けると以下の12の工程があります。時間帯によっては作業していない工程もあり、その場合はガイドさんがタブレットで動画を表示させて説明をしてくれます。

①金の溶解 ②圧延 ③形状打ち抜き ④マーク打ち・ハート穴あけ ⑤背曲げ ⑥玉付け ⑦鋸割(のこわり) ⑧玉仕上げ ⑨羽布磨き ⑩ペン先調整 ⑪筆記検査 ⑫組み立て

今回は特別に上記のうち、⑥から⑪のの工程を撮影させていただきました。

⑥玉付け

ぺンポイントと呼ばれる直径1ミリ程度の球を電気溶接によりペン先の先端に取り付ける工程。ペンポイントは紙の表面に直接当たる部分なので書き味を大きく左右します。

⑦鋸割(のこわり)

ペン先にインクの通り道となる切り込みを入れた後、顕微鏡でこの切り込みが中心に入っているか確認します。一発勝負の職人技!

⑧玉仕上げ

ルーペで確認しながらでペン先の形を整えています。こちらも書き味を左右する重要な工程で、繊細な感覚と高い技術力が求められるそうです。

⑨羽布磨き

羽布(バフ)と呼ばれる円盤状の研磨輪を高速回転させペン先を磨く工程。金は非常に柔らかい金属のため力を入れすぎると厚みが変わったり刻印が薄くなったりするので微妙な力加減が重要なんだそう。

⑩ペン先調整

ペン先の上下左右のズレやペン芯の位置を調整する工程。指先や爪を使って調整。最終的な書き味を決めます。

⑪筆記検査

筆記検査用のインクで曲線を書き書き味や線の太さを確認し、ペン先の精度をチェックします。(通常は見学に含まれない工程を特別に見せていただきました)

(3)ショールームの紹介

全ての検査をクリアしたペン先は、軸やキャップ、ペン芯などと組み合わせられ万年筆が完成します。
見学を終えた私たちは、ショールームで山口さんに再びお話を伺いました。

どの工程も細かい手作業で行われているのですね。
山口:そうですね、どの工程も技術力を要する職人技です。覚えるのに半年ぐらい、効率よく作業できるようになるまでに2、3年かかりかかリます。
職人さんといっても若い方がとても多くて驚きました。
山口:世代交代だったり、最近の文房具ブームの追い風もあって、20代、30代の若い世代で「職人になりたい」という人が増えているんですよ。
さあ、見学の最後は、このショールームでいろんな万年筆を試し書きしていただけるので、ぜひお試しになってみてください。
ショールームには大正時代から現代までの万年筆が飾られています。中には販売されていない貴重な万年筆も。写真はG8北海道洞爺湖サミットとG7広島サミットで贈呈された万年筆。

(4)工場見学の最後はレアな万年筆の試し書きも! 

セーラー万年筆といえば、21金ペン先。ペン先は金の含有量が多い方が柔らかくしなるので、21金は最高の書き味と言われています。このペン先を製造しているのは、世界で唯一セーラー万年筆だけです。そこで21金万年筆の中でもペンを寝かせると太い線が書け、立てると細い線が書ける「長刀研ぎ」の万年筆を試してみることに。さすが、トメ、ハネ、ハライなどが多い漢字を最も美しく筆記するといわれるだけあって書きやすい!

(キャプ)21金・長刀研ぎのペン先
試し書きできる万年筆のラインナップは定期的に変わるそう。
工場見学した全員に、万年筆のプレゼントがあります。

万年筆の製造工程は想像以上に手作業が多いことに驚きました。どの作業も緻密で熟練の技と経験を要するものでしたが、情熱を持って取り組む若い職人さんも多く、とても親しみを感じました。

普段使いには難しいイメージがあったのですが、日常的に使っていれば頻繁なお手入れは必要なく、ペン先の洗浄など定期的にメンテナンスすれば何十年もに使えるそう。お土産もいただいたのでこの機会にぜひ使ってみようと思います。皆さんもぜひ工場見学に足を運んで、お気に入りの万年筆を見つけてみてはいかがでしょうか。

セーラー万年筆工場見学

【見学開催日】毎週水曜日(但し、月末日及び工場休業日を除く)
【見学時間】13:30~14:50
【受付人数】1回につき1~5名 ※完全予約制
【予約方法】電話のみ受付。0823-55-7784
(受付時間:月曜日~金曜日 9:00~12:00、13:00~17:00)
【所要時間】約80分
【料金】無料

セーラー万年筆(広島工場)

広島県呉市天応西条2-1-63

TEL.0823-55-7784(工場見学受付専用ダイヤル)

OPEN.月曜日~金曜日 9:00~12:00、13:00~17:00(電話予約受付時間)

定休.土曜・日曜

アクセス
広島呉道路天応西ICから車で約3分