2021年に創業110周年を迎えたセーラー万年筆は、国内の万年筆メーカーとして最も古い歴史を持つ、万年筆の国内三大ブランドの一つです。2022年にリニューアルした新工場で今年からスタートした工場見学を文房具好きな広島CLiP新聞編集部員がレポートします!
工場見学始まりのキッカケは西日本豪雨災害
広島市内中心部から国道31号に入り、海沿いを車で走ること約20分。少し変わった形をした建物が見えてきます。それがセーラー万年筆株式会社の広島工場です。
入り口に到着した我々を工場見学専門のガイドさんが出迎えてくださいました。今回はガイドさんに加えて、セーラー万年筆・ブランド企画部の山口さんに工場をご案内いただきます。
山口さんのお話を聞き、ますます期待が高まった編集部員。ということで、さっそく工場内を案内していただくことに。
【工場見学内容】
・会社紹介の動画視聴
・スタッフが案内しながら万年筆やインクの製造現場を見学
・ショールーム観覧
・万年筆の試し書き
(1)動画でセーラー万年筆の歴史を学ぶ
見学用のヘアキャップとマスクをつけ、2階のショールームへ。まずは大きなモニターで会社紹介の動画を視聴します。
映像によると、創業者の阪田久五郎は、広島県の軍港都市・呉で日本初の14金製ペン先の国産万年筆の製造に着手。それよりセーラー万年筆は「国産万年筆の生みの親」として知られるようになったそう。
(2)いざ!工場スペースへ潜入
動画視聴が終わったら、ショールームから工場スペースへ移動。工程ごとにエリアが分かれ、この日は10数名の職人さんたちが作業をしていました。
万年筆の製造工程は大きく分けると以下の12の工程があります。時間帯によっては作業していない工程もあり、その場合はガイドさんがタブレットで動画を表示させて説明をしてくれます。
①金の溶解 ②圧延 ③形状打ち抜き ④マーク打ち・ハート穴あけ ⑤背曲げ ⑥玉付け ⑦鋸割(のこわり) ⑧玉仕上げ ⑨羽布磨き ⑩ペン先調整 ⑪筆記検査 ⑫組み立て
今回は特別に上記のうち、⑥から⑪のの工程を撮影させていただきました。
⑥玉付け
⑦鋸割(のこわり)
⑧玉仕上げ
⑨羽布磨き
⑩ペン先調整
⑪筆記検査
(3)ショールームの紹介
全ての検査をクリアしたペン先は、軸やキャップ、ペン芯などと組み合わせられ万年筆が完成します。
見学を終えた私たちは、ショールームで山口さんに再びお話を伺いました。
さあ、見学の最後は、このショールームでいろんな万年筆を試し書きしていただけるので、ぜひお試しになってみてください。
(4)工場見学の最後はレアな万年筆の試し書きも!
セーラー万年筆といえば、21金ペン先。ペン先は金の含有量が多い方が柔らかくしなるので、21金は最高の書き味と言われています。このペン先を製造しているのは、世界で唯一セーラー万年筆だけです。そこで21金万年筆の中でもペンを寝かせると太い線が書け、立てると細い線が書ける「長刀研ぎ」の万年筆を試してみることに。さすが、トメ、ハネ、ハライなどが多い漢字を最も美しく筆記するといわれるだけあって書きやすい!
万年筆の製造工程は想像以上に手作業が多いことに驚きました。どの作業も緻密で熟練の技と経験を要するものでしたが、情熱を持って取り組む若い職人さんも多く、とても親しみを感じました。
普段使いには難しいイメージがあったのですが、日常的に使っていれば頻繁なお手入れは必要なく、ペン先の洗浄など定期的にメンテナンスすれば何十年もに使えるそう。お土産もいただいたのでこの機会にぜひ使ってみようと思います。皆さんもぜひ工場見学に足を運んで、お気に入りの万年筆を見つけてみてはいかがでしょうか。