戦国時代、一族を西日本最大勢力に拡大した政治戦略家・毛利元就は、1523年、本拠地の郡山城へ入城しました。元就が生涯を過ごした安芸高田市は2023年、「毛利元就郡山城入城500年記念事業」を展開。神楽の新演目も誕生しました。
毛利元就を楽しく深掘り!多彩な事業を展開中
毛利元就が郡山城に入城して500年。安芸高田市では、いつごろから記念事業をスタートしたのですか?
松田:まず3月19日(日)に、落語家で山城ファンの春風亭昇太さんと城郭ライターの萩原さちこさんのトークライブを予定しています。毛利元就や郡山城の魅力について、楽しみながら知ることのできるイベントです。
毛利家や郡山城について、いろいろと学べる機会になりそうですね。
松田:今年一年かけて公開講座やイベントなど記念事業を繰り広げます。地元の人はもちろん、市外や県外の人にも毛利元就の地元・安芸高田市の魅力を伝えていきたいですね。
当時、元就の入城は9月頃だったと聞いています。9月には何かイベントがありますか?
松田:昨年も開催した「毛利元就フェス」を、今年も9月16日と17日に考えています。詳細はこれからですが、郡山城と近隣の商業施設を舞台に神楽やコンサートなど企画中です。
松田:記念事業は12月まで実施します。さまざまなイベントを計画し、随時発表していきますので楽しみにしていてください。
安芸高田市の22団体1高校に台本配布。神楽「厳島合戦」とは
入城500年記念に合わせて、神楽の新演目が誕生したと聞きました。
下岡:500年という節目の年に地域全体を巻き込む何かができないかと考え、新演目を作ってみようという話になりました。台本は、安芸高田市の元職員で小説家の先生が書いてくださいました。
下岡:安芸高田市には22の神楽の団体があり、これまで各神楽団でオリジナルの演目を作ることはありました。だけど、全団体に台本を配った新しい演目はおそらく50年ぶりぐらいだと思います。
全団体が舞える演目の誕生は約50年ぶりなんですね。毛利元就の歴史の中で、なぜ「厳島合戦」を題材にしたのでしょうか?
下岡:歴史民俗博物館の職員や松田さんをはじめ、さまざまな人に相談して、厳島合戦が有名だし神楽にもしやすいということで決めました。
下岡:神楽のストーリーは鬼退治などのように、正義が悪を倒すことが大前提。でも「厳島合戦」は、史実の通り陶晴隆(すえ はるかた)が自刃します。神楽では珍しい最後だと思います。
下岡:たまたま安芸高田市が毛利家の里だから毛利が正義のように感じるけど、戦った相手にも相手なりの正義があったと思います。台本を書いた先生も、そういうところを何とか表現したかったと話していました。
下岡:これまで吉田高校神楽部のほかに、吉田神楽団、羽佐竹神楽団が「厳島合戦」を舞いました。他の団体にもいつか舞ってもらえたらいいですね。
「厳島合戦」をいつか宮島で
松田:2004年に安芸高田市が誕生してから、ここまで毛利元就を盛り上げるイベントはおそらく初めて。「毛利元就郡山城入城500年記念事業」をきっかけに全国の人に安芸高田市の魅力を伝えていきたいですね。
下岡:神楽「厳島合戦」を、その名の通り廿日市市の宮島で公演できたらいいですね。興味のなかった人に神楽を知ってもらう一つのきっかけになればうれしいです。
毛利元就郡山城入城500年記念事業を通して、安芸高田市の行政や各団体が互いに協力し地域の魅力づくりに取り組んでいます。「三本の矢は折れない」──。かつての戦国大名の教えは今もなお、地元の人の胸に刻まれているようです。2023年、毛利元就ゆかりの地に足を運び、魅力や歴史に触れてみてくださいね。