広島市西区、広島電鉄・観音町電停から徒歩すぐの場所にある『.comm(ドットコミュ)』。
ジビエ肉を使った生ソーセージや、そのソーセージを使ったホットドッグを販売する専門店です。
ソーセージをつくるのは、ソーセージクリエイターの中山浩彰さん。狩猟経験があり、ジビエを知り尽くす中山さんが手掛けるソーセージは、おいしさはもちろん、人との出会いで生まれているという特徴的なフレーバーとその背景にある出会いのエピソードも魅力の一つ。
今回は、そんなソーセージづくりへのこだわりや思いを中山さんに教えてもらいます!
ソーセージだからこそ生み出せる価値
中山:格闘技を本格的にやっていた頃に縁があって狩猟を始めたのですが、僕がすごくのめり込んで週5回くらい狩猟に行っていました。そういった中で、田畑を守るために有害鳥獣駆除として猪鹿が狩猟され、それらがあまり活用されていないことを知りました。それを処理して販売できるようにしようと思ったのが最初です。
週5回! かなり本格的に狩猟に行っていたんですね。
中山:のめり込むと突き詰めるタイプです(笑)。生肉を飲食店に卸すところから始めて、その後一般の方向けに販売もしました。ただ当時はまだジビエの活用法がそんなに知られていなかったので、「どうやって食べたらいいのか分からない」という声を多くいただきました。そこで食べやすい形がないか考えて、肉味噌やカレーなどいろいろと試した結果、一番しっくりきたのがソーセージでした。
「ソーセージクリエイター」として、ソーセージづくりのどんな部分に魅力を感じますか?
中山:単純ですが、一番はソーセージをつくる作業が楽しいです。あとは、ソーセージなら肉の部位を問わずにつくることができるのも楽しいですね。飲食店へ卸すのはロースやモモなどが多くて、それ以外の部位は卸す頻度が少ないです。もともとジビエ自体が鳥獣被害対策の側面があり、その中でもさらに使われにくい部位を使用する形になります。ソーセージならつくり方次第でどんな部位でもおいしく食べられるようになるので、価値を生み出せることが一番良いなと思っています。
中山:個人的な体感ですけど、食べると元気が出ます。自然の中で自然のものを食べて生きている野生なので、栄養価も高いしエネルギーが詰まっている感じがするんですよ。格闘技をしている頃から「食べたもので身体はつくられる」という意識を常に持っているので、ジビエにはそんな実感がすごくあります。
人との出会いで誕生する店独自のフレーバー
中山:「この食材があるから新しいソーセージをつくろう」というよりも、「人と出会って、その人が持つアイデンティティを生かしてつくること」を大切にしています。
中山:ビルの最上階にサウナを造った方が名古屋にいらっしゃって、その方と約1年前に出会いました。それから「サウナ上がりに食べたいソーセージ」を一緒につくってきたんですよ。
「ソーセージを食べたいシーン」から考えて、つくっていくんですね。
中山:そうなんです。実際にそのサウナへも行って、熱い石に水をかけるロウリュの“ジュッ”となった瞬間をイメージしてフレーバーを決めました。ベリー系やペッパー系を効かせたソーセージを予定していて、2月中には販売できそうです。
中山:他にも京都の酒蔵の方との出会いから「酒粕七味」ソーセージが誕生したりと、一つひとつに人との出会いがあって思い入れが深いので、大切につくっています。
夏から秋には移転予定、加熱商品にも挑戦!
今年(2024年)の夏~秋ごろには三原市へ移転を予定されていますね。
中山:はい、三原市久井町への移転を予定しています。物件も見に行って、移転へ向けて少しずつ準備を進めているところです。
中山:今の観音町の施設でつくることができるのは生ソーセージだけですが、新しい三原の施設では加熱商品もつくれるようにしていきたいと考えています。干し肉やジャーキー、サラミ、カルパスをつくりたいんです。常温保存が可能になるので、食べてもらいやすくなるかなとも思っています。
中山:そうですね。干し肉ならトレーニング後にも食べられるので、「これは身体を鍛えるのが好きな僕がつくらないとダメだろう!」と使命感すら少し感じつつ(笑)、新しいソーセージづくりができるようになることも楽しみにしています。三原へ移転することになったのも人とのつながりがきっかけなので、感謝の気持ちとともにしっかり準備していきたいと思います。
店名『.comm』の由来は、「人と山や、人と人とのコミュニケーション」なんだとか。人とのさまざまな出会いをきっかけにソーセージづくりの可能性をさらに広げていく中山さんの、これからの挑戦もお楽しみに!